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チート無し転生薬売りのまったり異世界紀行  作者: 悠然やすみ
第六話「冒険者パーティ」
22/35

「エシー、そっちのゴブリンは頼むぞ!」


「は、はいっ!」


 エシーから目を離し、俺はゴブリンとのタイマン勝負に望む。


 先手を仕掛けてきたのは、敵の方だった。


 空気を斬り裂く轟音と共に、棍棒が振り下ろされる。


 しかし、繰り出された武器に身体を捉えられる前に、俺は素早く横に跳躍した。


 目標を見失った棍棒は床を強く打ちつけ、鈍い反響音を周囲にまき散らす。


 その隙を俺は見逃さない。手に握りしめたナイフで敵の胸を即座に斬りつける。


 途端、肉を裂く嫌な感触と共に、鮮血が宙を舞った。


 ゴブリンは自らの武器を手元に引き寄せ、体勢を整えると同時に攻撃を加えようとする。


 だが、俺は敵の背後に素早く回った。またもや、敵の武器は空を斬り、そこに新たな隙が生じる。


 今度はナイフを両手で構え、後ろから相手の胸を突いた。


 心臓を貫かれたゴブリンは、力無く血溜まりの中へ崩れていく。


 振り返ると、エシーはまだ戦い続けていた。俺は彼女の援護に回り、先ほどと同じようにゴブリンを後ろから斬りつける。


 流石に、強化魔術を受けての二対一なら楽勝で、程なく、砦の床にはニ体のゴブリンの死体が投げ出されることとなった。


「ふぅ、何とか片づいたな」


 自分の倒した亡骸を見やりながら、俺は額に浮かぶ汗を拭う。エシーはというと不思議そうな表情で、


「さっき、変な感じがしました。やけに体が軽くなって、この短剣も軽く硬くなったような感じが」


「それがエンチャント・マジックの効力なんですよ」


 砦の探索を進めている最中、俺達はゴブリンを初めとする様々な魔物と遭遇した。しかし、リミスのエンチャント・マジックのお陰で難なく切り抜けることが出来た。法術の腕前は言わずもがな、彼女の魔術の腕も相当なものがあり、俺とエシーは普段の自分達では考えられないほど高度な戦闘を行うことが出来た。


 そうして敵を倒しながら宝箱や階段を求めてさまよっているうち。エンカウントした一体のゴブリンを倒したところで、俺は甲高い電子音を耳にした。


「あれ、何だか変な音が」


「レベルアップしたんじゃないですかっ?」


「いえ、その音とは少し違うんだ」


 エシーの言葉に小さく首を振ると、


「なら、新規スキル習得の知らせかもしれませんね」


 今度はリミスが口を開いた。


「新規スキル?」


「ええ、ステータスを見てみて下さい」


 彼女に促され、俺は久しぶりにステータス画面を呼び出した。




名前:メラン・ノーセラック

称号:駆け出し薬売り

レベル:7

HP:78(最大92)(+5)

MP:12(最大12)

攻撃:13(+3)

防御:9(+1)

魔力:6

抵抗:16

技術:33(+4)

速度:23(+1)

頭部装備:旅用の安い帽子

右手装備:ナイフ

左手装備:無し

胴体装備:旅用の安い服

脚部装備:旅用の丈夫な靴

装飾品1:無し

装飾品2:無し

装備スキル(最大装備数4):薬調合LV3・値切りLV1・逃げ足LV1

所持スキル:薬調合LV3・値切りLV1・逃げ足LV1・双閃LV1(NEW!)

所持金:2340ゴールド

所持アイテム(最大所持数5):薬売りのバッグ




 技術の伸びが凄いが、初めてHPや攻撃などの直接戦闘に関するステータスが上昇していた。恐らく、エシーと出会ってから戦闘をよく行っていた所為だろう。所持アイテムは一つだけだが、中にはちゃんと薬類を突っ込んである。


 そして、所持スキルの欄に一つの『NEW!』がある事に俺は気づいた。


「『双閃』……?」


「双閃ですか、それは短剣の攻撃系スキルですね」


 なるほど、と言わんばかりにリミスは頷いて、


「私が昔、一緒にパーティを組んだ相手にも、愛用している方が結構いましたよ。かなり扱いやすい技みたいです」


「どんなスキルなんだ?」


「その名の通り、二回連続攻撃を行うスキルです。使ってみれば分かりますよ。そういえば、スキルのセットの仕方は知っていますか?」


 いいえ、と首を振る俺に対し、彼女は説明を始めた。スキルのセットには、ステータス画面を表示した状態でスキルの変更を心に強く『念じる』必要があるのだそうだ。逆にいえば、特別な道具等を必要とすることなく、ただそれだけの作業で装備するスキルは変更出来るという事である。


 スキルセットの説明を受けた俺は、相手の言葉通りに実演してみる事にした。ステータス画面を開き、その状態で『双閃をセット』と心に強く念じる。スキル装備数には一つ空きがあったので、彼女の話が本当ならこれで十分な筈だ。実際、数十秒ほど体中に妙な感覚が走った後、ステータス画面の表示が変更された。




名前:メラン・ノーセラック

称号:駆け出し薬売り

レベル:7

HP:78(最大92)

MP:12(最大12)

攻撃:13

防御:9

魔力:6

抵抗:16

技術:33

速度:23

頭部装備:旅用の安い帽子

右手装備:ナイフ

左手装備:無し

胴体装備:旅用の安い服

脚部装備:旅用の丈夫な靴

装飾品1:無し

装飾品2:無し

装備スキル(最大装備数4):薬調合LV3・値切りLV1・逃げ足LV1・双閃LV1

所持スキル:薬調合LV3・値切りLV1・逃げ足LV1・双閃LV1

所持金:2340ゴールド

所持アイテム(最大所持数5):薬売りのバッグ




「……だいぶ、スキルの変更には時間が掛かるんだな」


「ええ、ですから戦闘中に都合良くスキルを組み替えて……というのは原則不可能なんです」


「そうなのか……原則というのは?」


「なんでも、スキルの中にはスキルセット時の隙を減らすものもあるそうですから」


 なるほど、そういったスキルを予めセットしておけば、スキル変更の際のタイムロスを短く出来るようになるというわけだ。


 スキルを変更した矢先、早速ゴブリン一体と遭遇した。リミスにエンチャント・マジックを掛けてもらい、先ほど習得した『双閃』を試してみる。スキルを装備した影響か、スキルの発動方法はすんなりと頭に入っていた。


 相手の棍棒を軽やかに避け、敵の懐に肉薄する。


 刹那、振り上げたナイフが二度、素早く敵の胸元を斬りつけた。


 噴き出すような血飛沫を上げ、ゴブリンは仰向けに倒れる。瀕死の相手に、しっかりとトドメを刺した。


「うん、本当に使いやすいな」


 一人で頷きながら、ナイフを掌でクルリと一回転させる。そんな俺に対し、


「メランさん、凄いです! 何だか一流冒険者みたいです!」


 エシーは目を輝かせ、賛辞の言葉を投げかけてきたのだった。

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