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エピローグ 女神ルルシアが独白するだけ

最後は一人称視点。

「あああああああああああ……やってしまったあ……!」


 神界に帰った私はしばらくして冷静になってから自分の行動を見直して、頭を抱えていた。


「スキルについて……教える前に神界に戻ってきてしまった……」


 あのクソガキに与えたあのスキルは、その使い方を知っていればかなり強力なスキルだ。

 だが、知らなければ精々自由に動かせる十枚の板でしかない。


「うう……でもあのクソガキが悪いのよ! BBA呼ばわりしてくんだもの!」


 って文句を言っても誰も聞く者はいないのだから意味ないのだけど……。


「でも……やっぱり教えなかったのはマズかったなあ……」


 あのスキルは、そのスキル名と発動した状態を見て正しい使い方を察するのは非常に厳しいのだ。

 テンプレートなんて言われてもおそらく混乱するだけだし、十枚の板が現れてもそれをどうすればいいかなど分かるはずもない。


 だからどうにかして伝えなければならないのだけど……。


「もう一度世界に降りるのはダメなのよねえ」


 そう言って私はため息を吐く。


 元々私の世界は私が降りることを想定して作っていないのだ。

 神が降りても大丈夫なのは数百年に一度だけ。

 いや、今回は少し長居していたから次に降りれるのは千年後くらいかもしれない。



 だからまた降りて伝えるのは無理。

 となると取れる手段はやっぱり夢に出て伝えるぐらいかな。


 ただ、夢って忘れやすいものだから……覚えてくれるかしらねえ……。

 まあ、なんにしても今は見守るぐらいしかできないんだから、見てみますか。

 そう思い、私は世界を覗くための鏡を用意した。




***




「……この子たち大丈夫かしら。今は盛るようなタイミングじゃないと思うのだけど……」


 おかしいなあ。

 世界を救うのにふさわしい人を呼んだはずなのだけど。


 それに少女の称号なによこれ。

 私じゃない別の何かの作為を感じるわ。


 ……まあ、いいわ。

 おお、操作できることにすぐ気づいたわね。この少年案外察しはいいみたい。


 ……って違う!

 そのスキルは板を操作するだけの物じゃないから!




 ……結局一週間もあの少年は操作の訓練だけしていた。


 ああ、そのスキルってそんなに早く動かせたのね。

 私もびっくりだわ。

 でも違うのよ。

 そのスキルはそういう使い方じゃないのよ……。


 それから結局スキルの使い方は伝えられないまま少年たちは東へと旅立っていく。

 もちろん、旅の道中、なんども夢で教えようとしたのだけど……。




 ……畜生! やっぱりだ! このクソガキ夢の内容なんて少しも覚えないタイプだわ!




***




 結局少年はスキルの使い方を知らずに魔族と戦う最前線の砦に来てしまった。

 スキルの使い方を知らないのにこのままじゃ……。



 ……はあ、やっぱり関係ない少年を巻き込むんじゃなかったなあ。

 目の前に迫る魔族に震えている少年を見てそう思ってしまう。

 今更言ってもしょうがないことは分かってるけど思ってしまう。

 見てるだけしかできないなんて……。




 ……少年が板を操作して戦っている。

 ああ、違う。

 その板は物理防御結界を展開する板であって攻撃用じゃないの。

 ああ、そっち板は魔法防御用の……というかどれも板で直接攻撃するものじゃないんだから!


 やはり正しい使い方なんて全くしていない。

 けどまさか、板の操作だけで圧勝してしまうなんて驚いたわ。

 でも……少年は酷いショックを受けてしまった……。

 私のせいね……私が呼んだから……。


 ん?

 少女が何を……?




 ……はあ。

 私はこの少女に感謝しなければいけないわね。


 少女のおかげで少年は心を壊さずに済んだ……。

 本当によかった……。


 そして、この少年。

 やはり世界を救うのにふさわしい少年のようね。


 あんな弱った姿見られて恥ずかしいでしょうに。

 今も多くの魔族を殺して苦しいでしょうに。

 無理やりでもそんな笑みを浮かべて……。


 とてもカッコいいわ。




***




 結局、少年はスキルの正しい使い方を知らないまま魔王を倒してしまった。

 最後は少し危なかったけど、偶然虚無のプレートでとどめを刺してくれて助かったわ……。


 全く、常識外れもいいところ。

 私の用意した強力なスキルを想定外の使い方をして本当に世界を救ってしまった。


 そして、元の世界に還るのは嫌だと。

 じゃあ、仕方ないわね。

 あっちの神には私が頭を下げましょう。



***



 それにしても……結構頑張って作ったスキルだったのになあ……。


 テンプレート。

 十枚の特殊な能力を持つ板を操るスキル。

 それぞれ板に1から10の数字が書いてあるんだからもうちょっと考えて欲しかったけど少年はただ、操作をしやすくする為の識別番号としか認識してくれなかった。


 ワンプレートは敵の物理的な攻撃を防ぐ結界を生じさせる。

 ツープレートはその魔法版。

 この二つは防御用で、少年や従者の身を守るためにわざわざ用意したのに結局使われなかった。


 スリーからナインは火、水、風、地、光、闇、雷の各種属性魔法を撃つことができるもので、これらのプレートは、自由に操作できるという板自体の機能と合わせれば自由な場所からの魔法攻撃っていう強力なものだったのに。


 結局役になったのは最後のテンプレート、魔法ではなく魔力そのものを消してしまう虚無のプレートだけなんてね。

 全く私の苦労を返してほしいわ。


「ふふっ……それは彼らが死んだときに直接言ってみましょうか。どんな顔をするかしら? その時までお幸せにね」


 聞こえるわけもないのに私は子供たちに囲まれて笑顔を浮かべている勇者と聖女の幸せを祈る。

 神である私が祈るのも全くおかしい話だが……。


 っ!?


 いま、こっちをみて笑ったような?


 なーんて。

 そんなこと有り得ませんけど。


 さて、私も世界の管理を頑張らないといけません。

 頑張っていれば彼らとの再会もすぐでしょう。

 何せ私はBBAですから、時の流れなんて速いものです。


 私は最後にもう一度二人の姿を確認する。




 再会するその時を楽しみしていますが、なるべく長生きしてくださいね?


 テンプレ勇者さん。

というわけで

「勇者召喚されたチートな少年がテンプレで世界を救うまで」はこれで完結となります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


よかったら現在、連載中の作品が一つありますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです。




異界迷宮~機械仕掛けのオーバーロード~

http://ncode.syosetu.com/n7736cm/


現在連載中のファンタジー小説。

よくある迷宮もので、機械の腕とかを駆使して戦います。

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