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第二話 少年が能力を把握するまで

 物語を進める前に、状況を整理しよう。


 ユウ・サダガタは世界の危機に召喚された勇者である。

 そしてロリコンである。

 ロリコンではあるが巨乳なお姉さんも大好きなハイブリットである。

 ただしBBAだけはどんなに美しくてもマジ勘弁。


 シエル・エン・プレテンはユウを召喚した聖女である。

 そして、金髪ロリの美少女であり、チョロインだ。

 チョロインであるシエルはチョロインであるがためにユウの言葉を超好意的に解釈し、チョロインの如くユウに惚れた。ちょろい。


 この世の存在とは思えないほどに美しいルルシアはこの世界の神である。

 長身で巨乳でボンッキュッボンのエロいボディに薄い布だけ纏ったエロい女神さまだ。

 彼女は自らの美貌に自信を持っている。

 そして、話と話の間でユウをボッコボコにした張本人である。


 ルルシアは神であるがゆえにそれはもうべらぼうな時を生きている。

 それ即ち、BBAである。

 少なくともユウの中ではそうだった。


 結果、ユウはわざわざ勇者として呼び出されたのに、その召喚に女神も協力していたにもかかわらず、女神の手によってボッコボコにされて正座している。

 シエルはそんな姿を見てもユウにベタ惚れで優しく介抱している。

 正座するユウの後ろからぎゅっと抱きしめて頭をなでなでしている。


 ユウは後頭部に感じるソフトな胸の感触に全神経を研ぎ澄ませ、精神の9割をそちらに集中させていた。

 残りの1割は女神ルルシア(BBA)から勇者の力についてあれこれと聞いている。

 ボコられてもBBA扱いを止めないユウは反骨精神に満ちた根性のある男だった。


 ユウは再びボッコボコにされ、ボロ雑巾のようにその場に転がっていた。

 シエルが優しく膝枕しながらユウの頭をナデナデして介抱しながら微笑んでいる。

 女神ルルシアは怒り狂ってユウをボッコボコにした後もうやってられないと神界へ帰っていった。


 ルルシアにボコられて半死半生。

 それが今現在の、物語の中心であるはずのユウの状況である。






 さて、後に残されたユウはとりあえず自らの力を確認することにした。

 ユウは先ほどの説明の中で自身の力を確認する方法についても説明されていたのをちゃんと覚えていたのである。

 その方法というのもテンプレファンタジー小説を読み漁っていたユウにはある意味慣れ親しんだものだった。


「ステータス!」


 ステータスなんてまさにテンプレだなとユウは上機嫌になりながらそう言えば何もない空間に光が集まり、カードが現れた。

 そのカードには以下のように書かれていた。




 名前:ユウ・サダガタ

 種族:人間

 性別:男

 年齢:18

 職業:勇者

 固有スキル:【テンプレート】

 称号:【異世界人】【召喚されし者】【勇者】【ロリコン】【神に嫌われし者】【聖女に愛されし者】




 なんだ、スキルと称号だけしかないパターンかとユウは少し残念に思うと共に、数字が無いほうが色々と楽だしいっか、となにが楽なのか本人も分からないままに感じていた。

 それから、改めてステータスを見て、まあ、スキルと称号だけってのもテンプレだしねーなんて思いつつも、固有スキルが【テンプレート】、つまりはテンプレであることに首を傾げていた。


 一方横からユウのステータスを覗いたシエルは称号の辺りを見て顔を赤面する。

 それは【ロリコン】という称号を見て恥ずかしく感じたからか、それとも【神に嫌われし者】などという称号をみて怒りを感じたからか。


 答えはどちらでもなく【聖女に愛されし者】という称号を見て赤面していた。

 図らずも自分の想いが筒抜けになっていることに恥ずかしくなって赤面していたのである。


「す、ステータス……」


 そしておもむろに自らのステータスカードも呼び出した。

 その内容は以下の通りだ。




 名前:シエル・エン・プレテン

 種族:人間

 性別:女

 年齢:18

 職業:聖女

 固有スキル:【癒しの口付け】

 称号:【チョロイン】【永遠のロリ】【勇者を呼びし者】【勇者に愛されし者】




 【癒しの口付け】とはその名の通り口付けした相手の怪我や病気、欠損すらも含めて全てを癒し、しかも何の代償も無く可能と言う割とチート級な聖女だけに与えられたスキルだが、その癒しの条件に「愛する者に対しての口付けに限る」というものがあるために今まで陽の目を見ていないスキルだ。


 そう、チョロインのくせに今の今までそのスキルは使われなかったのだ

 だがそんなことはどうでもいい。

 もちろん【チョロイン】などという称号も、シエルは華麗にスルーして自らがチョロインであることを自覚することも無い。


 チョロイン聖女シエルが何よりも注目したのは称号の最後の部分。

 つまり【勇者に愛されし者】という称号だ。

 これを見てシエルは自分もまた愛されているのだと認識して、嬉しさで有頂天になった。

 有頂天になったあまりに彼女は大胆な行動を取った。


 突然ユウにキスしたのである。

 ユウとしても、ロリにキスしてもらうなどもちろん嬉しいことではあるが、ステータスをみて悩んでいたところに突然キスされて驚きのあまり、シエルの唇の感触を脳内に1TBのデータとして記憶することしかできなかった。


 そしてシエルに唇を奪われたユウは見る見るうちに怪我が治り、腫れていた顔は元通りとなっていき、ついには完全な健康体へと回復した。

 そう、ステータスをみてユウが悩んでいる間も、チョロイン聖女のシエルが一人悶えて喜んで有頂天になっている間もずっと、ユウは半死半生の状態だったのだ。

 ずっとボロ雑巾のままだったのだ。


 治せる術を持ちユウにベタ惚れで条件も揃っていたのに放置していたあたりシエルも案外鬼畜であった。




「まあ、そんなことよりスキルがテンプレってなんだよ。そういうテンプレじゃなくて普通に強力なスキルがとかそういうのじゃないのか」


「私も聞いたことがありません。やはり勇者にだけ与えられる特別なスキルなんでしょうね」


 ユウが首を傾げて疑問を口に出すが、シエルもその答えは持ち合わせていないようだった。


「ちなみにスキルってどうやって使うの?」


「スキルを使うぞっと念じれば大体は発動します。中には常に効果があるものもありますね。最初は口に出すといいですよ。慣れれば念じるだけでもできるようになります」


「ああ、アクティブとパッシブか。んじゃとりあえず【テンプレート】!」


 ユウはシエルにスキルの使い方を教えてもらってとりあえず自らのスキルを使ってみることにした。

 恥ずかしがることなく、軽快にスキルを唱えると無事発動したようでユウの目の前に十枚の半透明な板が現れた。


 大きさは縦横15cmで厚さは0.01mm。

 全部重ねても0.1mmの厚さしかない十枚の半透明な板。

 全部横に並べれば1.5mにはなるがだからどうしたって話の十枚の半透明な板。


 それ以外に特に何かが起きるでもなく、十枚の板はユウの目の前に浮かび続けている。


「……十枚の板。つまりはテンプレート……ダジャレじゃねえかっ!!」


 ユウはそれを見てどういうことかを察して思いっきり突っ込みを入れた。

 シエルはそんなユウを見て「さすがの推察力です!」などと言ってますます惚れ込んでいる。

 チョロインは伊達じゃない。

 ちなみにユウの話し方も随分砕けた物になっているが、シエルにキスされた後、紆余曲折あって普通に話すようになった。


 紆余曲折とはなんなのかということについてだが、この部屋には男と女が二人きりで、内鍵があり、なぜかベッドも完備していて実はすでにキスしてから1時間は過ぎていて、二人の称号には【聖女の恋人】、【勇者の恋人】という称号がそれぞれ追加されているという情報を公開するのでそこから察してほしい。





 さて、突っ込みを入れる部分には突っ込みを入れたのでユウは目の前の板を見つめて少し考えていた。

 アホみたいなスキルではあるがこれが自分のスキルであることはもはや否定できないために、とにかく受け入れることにして、どうしたらこの十枚の板で魔王を倒せるのかを考える。


「ま、勝手に宙に浮いてるわけだし、とりあえずこういう時は自由に動かせるってのがお約束かな?」


 そう呟いてユウは動くように念じてみれば、十枚の板はまるで意思があるかのように動き宙を舞う。


「おお!」


「すごいです、ユウ様!」


 その様子にユウは歓声を上げ、シエルもパチパチと拍手を送る。

 なんて気の抜けた空間だろう。

 世界はきっと平和なんだろうなと感じさせるが、今現在もこの世界の人類は割と窮地に立たされている。

 実に呑気な話である。






 そしてユウは、スキル【テンプレート】とは十枚の板を召喚し、その板を操作することで攻撃するスキルであると断定し、ひたすら操作能力を向上させるための訓練を一週間に渡って行うことで、その操作能力は十分に敵を倒せるレベルまで達したのだった。


 いよいよ勇者は魔王を倒すための旅に出ることになり、勇者召喚されたチートな少年がテンプレで世界を救うまでの物語はいよいよ本格的に進んでいくのである。

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