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キノコの娘大賞を狙っていた三作品。

勘違いはキノコを変える。

掲載日:2014/11/30

「キノコの()大賞?」


男は慣れた手つきで眼鏡を取って青年に問い正した。


「はい。此方(こちら)その生態が記載された図鑑です。博士。よっこらせっと。」


青年はとても大きな箱を研究室の机に置く。箱には大きく髑髏マークが貼られている。


「つまり助手、このキノコの娘を創り出せば50万円もらえるのじゃな?」


博士と呼ばれた男は青年改め助手に渡された怪しげな図鑑を目を細くして見る。


「たぶん…そうだと思います。」


助手は根拠なしに、根拠ありげに言った。


「ふむ。しかしこの図鑑を見るからに、この娘たちはどう見ても人間のようじゃが。」


博士はペラペラと丁寧に図鑑のページをめくる。


「そんな事はありません。よく見てくださいよ。こんな変わった目の色や髪の色をしていますよ。ヒトではありません。キノコの娘です。たぶん。」


助手は中から毒々しい正しく毒キノコらしき毒キノコを取り出し、それを掲げて眺めながら答える。


「そうじゃたのか。よし。やってみるかの。」


博士は、当たり前のようにそう言った。



4分後


「博士。まずはどの娘さんを創り出しましょうか。」


助手は博士がめくるページを目で追いながら尋ねる。

ページをめくっていた博士の手元が止まり二本指で一枚の写真をトントン叩く。


写真には美しい白いドレスに肩のみを覆う短い黒のマント、その上に白いマフラーを巻いたショートの女性が写っていた。特筆すべき点は…


「このヨダレを派手に垂らしておる娘にしよう。とても可愛らしいからの。」


という点である。誰がどう見ても写真の、きのこの娘はイッてしまっている。


「マジックマッシュルームのブーマーさんですか?博士。そのキノコを持っていたら我々は警察に捕まってしまいます。麻薬の一種です。他の娘さんにしましょう。」


助手がそう言いながらページをめくる。


「なんじゃと?!この国の法は腐っとるのぉ〜。」


博士が国を相手取り文句を言う。


「いえ。博士。正当な法だと思います。」


助手は冷静に受け流した。


「う〜む…では、改めて考えるとしよう。」


博士は改めて考えることにした。



10分後…


「博士。決まりましたか?」


助手が、先ほど淹れたお茶を飲みながら聞く。


「うむ。ではダメージジーンズが印象的なライムグリーン色のこの娘にしよう。」


博士が示す指の先には

黄緑と白を基調とした太眉が可愛らしいキノコの娘の写真があった。

キノコの娘は黄緑の短めの髪をして赤く光る目、太い眉を持っており上半身には白い襟つきのマントにタマゴ型のネクタイピンで緑と黄色しましまネクタイを長袖シャツの襟を結んでいた。妖艶…そんな言葉が似合う。



「ファルさんですか。良いと思いますよ。因みに公式設定によるとその色はオリーブ色です。それとオリーブ色なのはジーンズだけではなく髪の毛とネクタイもです。おへそも出しててセクシーです。」


助手が何故か口元を(ぬぐ)う。


「破れても物を大切に使おうとするその心意気に惚れた!」


「博士。たぶん、それはオシャレだと思いますよ。」


「なんと!破れたジーパンを履く事がオシャレなのか?!確かに物を大事にする心意気がにじみ出ておる。」


博士はふむふむと頷いた。


「そうですか。良かったですね。私としてはこの妖艶な瞳が素敵だと思いますよ。」


「よし早速、創り出そう。」


言うなり博士は、緑の培養液の入った丸いバランスボールサイズのガラス器の蓋を開ける。中からは何とも言えぬ毒々しい臭いが漂う。


助手はキノコBOXの中からオリーブ色に艶めくタマゴテングダケを取り出して博士に渡した。


博士はタマゴテングダケに注射器を刺して微量の黄色い薬品を注入した。


そして博士は子供を抱える様な丁寧さでガラス器の中にタマゴテングダケを入れた。


「では、博士。私はファルちゃん用の服を裁縫をして参ります。ファルさんを宜しくお願いします!」


「言われずともじゃ。」



一日が経過した。


「おぉ!完成じゃ!」


そこにはオリーブ色の髪をした小さな小さなキノコの胎児の姿があった。


「流石です!博士!手が二本、足も二本。指はしっかり五本ずつ。目は二つで鼻は一つ。口も一つですよ。」


キノコの胎児は、ぱちくりと目を開けて博士を見た。


「おぉ。こちらを見ておるぞ。」


「目が見えているんですね。」


助手が感心してそう言う。


「当然じゃ!誰が創り出したと思っておる。」


博士は自慢気に言った。


「ははは。失礼しました。」


助手の笑混じりの受け応えを無視して博士は培養液の中の胎児に向かってこう言った。


「良いか?ファルよ。今からお前さんは外に出る。出たら思いっきり息を吸い込むのじゃ。良いな?」


「言葉なんてわかるんですかね?」


助手が問うた。


「まぁ、わからんくても本能でそうするようになっておる。よし。ファル。出るぞ。」


博士はガラス器の上にある蓋を開け大きな網を入れた。その様子に助手は、


「シュールですよ。博士。」


と、ぼやいた。


「うるさい!ファルが怪我したらどうする?!」


博士は十二分に丁寧に網でファルを取り出すことに成功した。


「びぇぇぇえ〜〜ん!びぇぇえ〜〜ん!」


「おーおー。よしよし。」


博士はそう言って毒々しい臭いのドロドロした培養液を拭いてやる。


「博士。羊水ではなく培養液を呼吸器から取り出さなくて良いのですか?」


「面倒じゃと思ったからやらなくて済むようにしておる。」


「さいですか。」


「ほれ。布を寄こせ。」


「はい。どうぞ。」


助手はふわふわの桃色タオルを渡した。

桃色のタオルは、黄緑の髪に良く映えた。


「かわいいですね。」


「当たり前じゃ!わしが創り出したのじゃからな。」




ファルことアマニタ・ファロイデスは、人間の数倍の早さで成長し3日の月日が経過した。


3日後のある午後のこと…


「ハカセ、お茶できたよ。」


「お茶…じゃと…」


「そう。お茶。」


「ふむ。頂くとするか。」


博士は恐る恐る机の上に置かれたお茶(作:ふぁる)を飲んでみた。


「変な味がするの。」


「タマゴ入れてみた。」


「タマゴ?それはタマゴテングダケのことかの?」


「うん。」


「そうじゃったか。」


博士は慣れた手付きで白衣のポケットから小瓶を取り出しその中に入っていたピンクの粉を一気に飲んだ。そしてお茶で流した。お茶を飲み終わると博士は言った。


「良いか。ファル。受け入れられないかもしれんがお主とお主のキノコは猛毒なのじゃ。下手をすると死んでしまう程のな。だから安易に食べさせてはならん。」


「でもハカセは元気。」


「それは解毒薬を飲んでいるからじゃ。」


「それと一緒に食べればいい。」


「おぉ!その発想はなかったぞ。」


一件落着…?


「博士。ダメですよ。解毒薬と一緒に食べたとしても毒は毒なのですから。」


何もせずただ黙っていただけの助手が正当なツッコミを入れる。


「ジョシュ。うるさい。」


ファルが不条理な反撃に出た。


「そんな!生まれて3日で反抗期…人間年齢だと2〜3歳くらいですか?」


助手は博士に尋ねる。


「見て分からぬか。ファルの反抗期はこれで2回目。じゃからファルの人間年齢は12〜15歳じゃ。」


「ファル、人間年齢13歳くらい。」


「えぇ!?早くないですか?」


助手は驚愕(きょうがく)の事実を知ってしまった。


「ファル、早くない。」


「それだとあっという間に死んでしまいますよ。」


そう。早く育つ生物は早く老いる。そして死ぬ。そんなことは助手を始めて3年目の助手には丸わかりだった。


「何を馬鹿げたコトを言っておる。ファルは人間年齢20歳で成長が止まってそのまま80年くらいは若いまま生きるぞ。」


「何ですか!その後付け的な設定は!」


助手は安心するも何か気に食わなかったのでツッコんだ。


「ジョシュ。うるさい。帰れ。」


ファルの毒舌がとまらない。


「ファルちゃんが冷たい。ま、丁度仕事も済んだので私、帰ります。」


助手は茶色のコートを着て荷物をまとめた。


「気を付けて帰るのじゃぞ。」


「気を付けてね。」


「ではまた明日。」


助手は帰った。



ファルが生まれてから5日後の朝。


「ふわぁ〜。」


ファルが大きな欠伸をする。ファルのベッドは研究室の中にあった。


「おぉ。起きたか。ファル。もう立派な成体じゃな。」


コーヒーを飲んでいた博士がファルのベッドの方を向いた。


「そうですね。ハカセ。」


緑茶を飲んでいた様子の助手が空っぽの湯呑みを机に置く。


「それにしても…あぁ…たったの5日で成体になっちゃったんですかぁ?」


助手はあからさまに落ち込んだ。


「なんじゃ?助手。その残念そうな顔は。」


博士は一応問いてやる。


「ファルちゃんの幼体が懐かしい…」


「何をぬかしておる。早う成長せんと図鑑のファルと別物だなんて言われてしまうぞ。」


博士はゴミを見る目で助手を見た。


「確かにそうですが…」


助手は抜け殼のような姿になった。


「ハカセ。なんの話ですか?」


ファルは話についていけてなかったので博士に尋ねた。


「うむ。ついに話す時がきたの。」


博士がコーヒーカップを机に置くと話し出した。


「ファル。お前はこれからもわしの助手として働いてもらうつもりじゃが…そもそもお前を創ったキッカケはキノコの娘大賞という賞があったからじゃ。どうせならば、ファルの存在を世に知らしめたいからの。だからわしとお前は今から双葉社という会社に行くのじゃ。そしてファルは『ファルです!』と双葉社の連中に言う。そうすると50万円貰えるらしい。


つまり…」


「つまり?なんですかハカセ。」


まだ話の内容が掴めないファルは再び尋ねる。


「御使いに行くのじゃ!」


「オツカイ?!」


ファルは知らない単語に驚いた。


「えっ!そういう感じ?!」


助手は話の展開に驚いた。


「何を言っておるのじゃ?助手よ。」


「いえ。何でも。」


「オツカイ…」


「支度をするぞ!ファル!その桃色の浴衣をとっとと脱ぐのじゃ。着替えなさい。」


「このままじゃダメなのですか?」


「何故か指定された服があるからの。それを着るのじゃ。助手。早よ出すのじゃ。」


「はい。直ちに!ほらファルちゃん。これ着て。」




30分後…


「よし。行くかの。」


「博士。その格好は…」


「似合っとるじゃろ。」


(はかま)はちょっと…」


「ハカセ。似合ってますよ。」


「うむ。ファルは分かっとる。」


「ファルの服はコレで良いの?」


「良いんですよ。ファルさんはその格好が指定されていますから。それにとても似合ってます。」


ファルの格好は、指定された(?)図鑑の通り。これで準備は万端だ。


「そう。ジョシュ。ありがと。」


「これはこれでいいかも…」


「何を言っておるのじゃ。これが本来の姿じゃ。この拗らせ屋。」


「ははは。言われてしまいました。まぁそんな訳で研究室の番は拗らせ屋の私がやりますからお気を付けて行ってらっしゃいませ。」


「行こう。」


「よし。その意気じゃ。ファル。」



ガヤガヤ ザワザワ


何あれ…コスプレ?

マジやばいっしょ!

惚れた…

隣のヤツは誰だ?親か?似てねぇな。

親にしては若いだろぉ〜。

そうか?

マジかわゆす…結婚したい。

ちょっとヤバくない?

ナンパしようかな…

やめとけって隣に男いるだろ。

あのダメージ、エロすぎでしょ。



「ファル。気にするな。」


「…ハカセがそう言うならそうする。」



双葉社到着。


「はい。確かにこちら双葉社で御座いますが…」


「そうか。キノコの娘大賞を取りにきたのじゃが。」


「コスプレの部門はありませんので…」


「何を言っておる。ここにいるのは正真正銘のアマニタ・ファロイデス、通称ファルじゃ!」


「こ、こんにちは。ファルです。」


「いや…あの…なりきられているのは十二分にわかるのですが…申し訳ありませんが、お引き取りください。」


「わしが創ったのじゃ。タマゴテングダケからの!だから何故わからん?!」


「ですから…




「全くどうなっておるのじゃ。ニジソウなんたらとぬかしおって。」


「ファルはお役に立てませんでした。」


「いや。これは助手が何か間違えたに違いない。ファルは悪くない。前もモンスター大賞だかなんかでモンスターを作って送ったら違うと言われた。これも助手の勘違いだった。」


「そうだったんですか。それでそのモンスターは?」


「24日くらいで死んでしもうた。人を食わねば生きていけないらしくての…すまんが何も食わせてやれなかった。」


「ファルも24日で死んでしまうのでしょうか。」


「それは大丈夫じゃよ。お主は半分人間じゃから。」


「もう半分は?」


「キノコじゃ。」


「キノコですか。」


「そうじゃぞ。」


「だから私はタマゴテングダケを食べても死ななかったのですね。」


「そうじゃの。」


「私はこれからどうやって生きていけば良いのでしょう?」


「わしの元で働いてもよし、自由にするもよしじゃ。」


ファルは暫く(うつむ)いて


「…もうしばらくお世話になります。」


と言った。


「そうすると良い。まだこの社会にお前は早すぎる。」


「逆じゃないですか?」


「両方じゃな。」


「ふふふ。」


「はっはっは。」


新宿の人混みの中、キノコの()一人と天才の男一人が笑っていた。

※この作品は「キノコ擬人化プロジェクト」の「oso的キノコ擬人化図鑑」のキノコの娘の二次創作です。

キノコの()を考えたのは私では御座いません。しかしこの作品で、初めてキノコの娘を創り出したのは博士です。


他にも2作、大賞を狙う作品を投稿していますので是非読んでみてください。


よろしかったら感想、評価、レビューの方をお願いします。


それでは、みなさん良い一読を。

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