表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

地竜乗りの対空戦

作者: ふーる30代

名前がないのはドイツ系イギリス系フランス系などでしばられたくなかったからです。

《地竜乗りは飛竜乗りに勝てない。》


当たり前のように語られるそれは竜騎士の常識である。

そもそも地竜騎士は竜騎士の中でも取り分け地味な存在で、花形たる飛竜騎士とは戦略的にも見栄えの意味でも大きな差がある。


又、この場合における地竜は肉食恐竜の様な存在で、飛竜のように火炎弾をはくこともない。かろうじて毒の牙がある程度である。

ただし、地形を選ばぬ走破性能は馬の比ではなく、ジャンプ力は高い。


深い森や山岳地帯では馬は進めない所もあるが、地竜はそんなことはなく、ある程度は潜水能力すらある。


そして大きさは馬より一回り大きいものの飛竜より飼育しやすく、飛竜と違い育てて増やし、なつかせやすい。地竜は牧場があるのだ。


ただし、肉食動物の飼育は餌の問題がつきまとう。

ゴブリンのような増え易い魔物のでる魔境近隣での放牧場で育てることが多い。


都会に近い所では維持が難しいため、必然的に田舎、辺境になる。



とある辺境の地竜騎士が王都への派遣任務に着任した。


大量飼育は難しいが、数頭は中央の戦力として常駐しているのだ。


そこには同じように常駐戦力として飛竜騎士も存在する。



とある飛竜騎士は言った。

「馬と飛竜があれば地竜などいらない」

「地竜に国の金を使う位ならもっと飛竜に金を使うべきだ」

「地竜騎士は実際には役に立たない」


地竜が戦場で役に立たないということはない。飛竜は人の手で増やすことは難しく、数は少ない。

地竜は馬に次ぐ数が揃えられる。

高さと強靭な鱗があるため普通の歩兵では攻撃が届かない。

魔法使いを後ろに乗せれば近代戦争で言う戦車の役割になる。

いわは戦車と戦闘機では役割が違うが戦争で役に立たないなんてことはない。 それを戦闘機の方が強いから戦車なんていらない。なんて言うのはただの無知であり、挑発である。


だが、この田舎騎士はただのイヤミをそのまま受け取ってしまった。


「地竜騎士を馬鹿にするなど許せない。決闘だ」


普通は流される挑発に乗ってきたことに面食らった飛竜騎士も、売り言葉に買い言葉で、

「貴殿を倒し、飛竜騎士の有能と地竜騎士の無能を証明してやろう。」

決闘を受けてしまった。


普通仲裁が入りそうなものだが、地竜騎士の上官はノリノリで飛竜騎士の上官に話をつけ、そのまま上の騎士団長、宰相、国王まで決闘許可が通ってしまった。



地竜騎士は実は勢いだけではなかった。

直接の上司である辺境領主に地竜騎士の地位向上を言明されていたのである。

彼らは地竜騎士は飛竜騎士に匹敵する存在であると証明することを予め計画していた。


地竜はジャンプをメインに対空戦闘を徹底調教し、騎士は体を鍛え上げながら様々な魔法術式を覚えて魔法騎士となり、領主は対空対地に使える武具を開発させて騎士に与えた。


決闘当日。御前試合となりおおごとになったため、多くの市民が見物に詰め掛けた。


飛竜と地竜。2匹の大きな魔物と騎士が戦うため都から少し離れた荒れ地が決闘場になった。


庶民は賭けに興じ、その時をまちわびる。


地竜騎士はすでにその場で待ち構えていた。そこに大きな羽ばたきの音が聞こえてくる。


人々は空を見上げるが、地竜騎士は懐から何かをとりだした。巨大黒蜻蛉の黒羽で作ったサングラスだ。 対空戦闘である以上、上を見上げ続けないといけない。太陽対策である。


飛竜騎士の到着し、騎士団長が決闘を取り仕切る。「貴重な王国の戦力を用いた決闘である以上、お互いの竜の命、また相手の命を奪ってはいかん。お互いの誇りを賭けて、正々堂々戦うように。では…始めっ!」


まずは飛竜が高く飛び上がろうとする。地竜は相手が高度をとる前に距離を詰めようと駆け出す。だかあらかじめ定められた開始位置的にそのまま攻撃は出来ないだろう。


飛竜は難なく高度をとり、まずは飛び道具で様子見とばかりに火炎弾を放つ。地竜自身は数発の火炎弾には耐えるが、騎士は人間。必然的に大きく回避するはずだか、予想に反し槍を構え突っ込んでいく。槍にはなにか旗が垂れ差がっているが、国旗ではない。魔方陣である。それを火炎弾に降ると火炎が突風で散らされた。


数発、火炎弾を散らされて埒があかないと思った飛竜騎士は急降下からの槍と竜爪の同時攻撃に移る。彼の得意技のようだ。


一度高く飛び上がり、反転して急降下。着地位置に正確に長槍をかまえると相手は武器を持ちかえた。

地竜騎士は魔方陣の旗槍から別の武器、投槍を取り出す。馬より力強い地竜の背中には多くの装備が積める為、効果の異なる武器が積んであった。この投槍はベターなロープ付きの投槍だが、大きな返しがあり、相手に引っ掛けることが目的である。飛竜をロープで繋いでも、地上から引っ張れるのは地竜くらいしかない。


上空から降下しながら槍の細かい形まではわからない飛竜騎士は、投槍が翼に当たらない事だけ気を付けて突撃する。投げられた槍を回避した瞬間、槍のロープを確認した。槍を回避したことでロープに引っ掛かることだけに気をはっていると、地竜騎士が槍のロープを回収している。それを隙だと思い攻撃するが、相棒の飛竜が鳴き暴れる。ロープを引き戻された槍が翼に引っ掛かっているのだ。これがやつの狙いだったのだ。


だか、地竜の力は強いがロープは普通だろうと相棒に距離をとらせロープを引きちぎろうとした飛竜騎士に向かってくるものがある。それは、


ピンと張ったロープの上を綱渡りで走ってくる地竜騎士だと気がついた時、一瞬、呆然としてしまった。

彼の鎧は辺境の魔物素材で作った革鎧だか、今回の王都派遣に際して、銀紙張りにしてあった。実用性と騎士の見栄えの攻めぎあいで生まれた妥協案であるが、これが金属鎧の騎士が全力で綱渡りをするという異様となり飛竜騎士を呆然とさせたのだ。


やがて飛竜の背中にたどり着いた地竜騎士は腰の剣を抜き首に突き付けた。


「負けを認める」




かくして飛竜騎士と地竜騎士の決闘は地竜騎士の勝利となった。だが全ての地竜騎士が彼と同じ武器、同じ技を得られる訳ではない。辺境領主は今回の装備の制式採用のために尽力しなければならないし、派遣された地竜騎士は任期終了後、次世代の育成に力をそそぐだろう。


この決闘の後、王国竜騎士団は大きく変わって行くのである。

地竜本番でジャンプしてねぇ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ