表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/184

第一話 欲望の世界へ! その2

「わ、けっこう広いんだな」



 俺はAZ社の事務所がある雑居ビルの三階にたどり着く。



 ざっと百人の人間を収容できるくらい広い空間だ。



 ――で、俺を含めた老若男女、最低でも三十人以上が、そんな雑居ビルの三階にあるAZ社の事務所の前に集まっている。む、中高生もけっこういるじゃん! 俺って最年長参加者かも?



「ん、どこかで見たことがある女がいる?」



 さて、俺の瞳にひとりの女の姿が映り込む。歳は二十代半ばかな? 背格好は小柄で痩せ型、容貌は美人というか可愛い系? 



「うお、巨乳! おっと、口に出してしまった!」



 あ、でも、胸のボリュームだけは一級品だぞ! GカップかHカップくらいありそうだ……って、俺はどこを見ているんだ!



「おい、あれってグラビアイドルの美樹原優奈じゃね?」



 ん、俺の近くにいる大学生っぽい三人組の男のひとりが、例の女を指差しながら、グラビアアイドルの美樹原優奈だって言う。



「なあ、お兄さんたち。あの女って某人気アイドルグループのボーカルKと同棲しているって噂が出回って以来、雲隠れ状態になってるグラビアアイドルの美樹原優奈だよな?」



「ああ、間違いないよ! アイドルヲタの俺が言うんだから間違いない!」



 なんだかんだと気になったので、俺は大学生三人組に対し、訊いてみるのだった。しかし、ビンゴだったとは――。



「あのゴシップ騒動の後、芸能界から姿を消したんだよなぁ、彼女は――」



 あの女――美樹原優奈の件についてだけど、数年前にちょっとしたスキャンダルがあったことを思い出す。



「マスコミって怖いですね。あのゴシップのせいで彼女はグラビア界から干されてしまうきっかけになってしまったし……」



「うん、あの巨乳が表舞台から消えたのは非常に残念だ!」



「それには同意できるぜ」



 そんなスキャンダルの真相はどうあれ、後日、別人だったことが判明したけど、件のグラビアアイドルの美樹原優奈は、芸能界から忽然と姿を消し、今じゃ完全に雲隠れした状態にある。



「しかし、あの美樹原優奈を間近で見られるなんて感激だぜ! あのスタイルも健在って感じだしな♪」



「なあ、でも、印象変わってねぇ?」



「ああ、ゴスロリな服を好んでいたはずなのにな。あの白い服だと、ちょっと幻滅する」



 ――と大学生三人組は、雲隠れする前の美樹原優奈についての雑談を始める。



「おい、キミらのことをにらんでいるよ」



 気のせいかな? 美樹原優奈は大学生三人組に対し、にらむような視線を向けているんだけど――。



「ねえ、さっきからずっと私のことを見ているけど、もしかして気づいたわけ? 私が美樹原優奈だってことに――」



「「「もちろん!」」」



「あ、俺も一応!」



「そっかぁ、まだ私のことを覚えていてくれている人がいたんだ。かれこれ雲隠れしてから五年くらい経つはずなのに……嬉しいなぁ♪」



 恨み言でも? と思ったけど、そんなグラビアアイドルの美樹原優奈が、大学生三人組、そして俺に和やかな物腰で話しかけてくる。



「例のスキャンダル以降、公に姿を見せず声優として活動しているんだけど、それも知っているよね?」



 声優として活動!? それは俺も知らなかったなぁ。



「マジで!?」



「知らなかったよ!」



「てか、なんて名前なんです?」



 大学生三人組も俺と同じ反応だ。



「ええと、卯月雪奈って名前で活動しているんだけど、この名前は知っている?」



「あ、その名前なら――」



 俺はイイ年こいてアニメやゲームが大好きなオタクでもある。そんなわけで卯月雪奈が、どんな声優が知らないわけがない。



「うおー! マジで卯月雪奈なのかよ!」



「お、俺、大ファンなんです!」



「か、感涙ものだァァ~~!」



 さて、卯月雪奈は萌え系アニメの主役を数多くこなす女性声優だ。ついでに、少年役からお色気キャラ、はたまた狂気的なヤンデレなキャラまで幅広く演じるアイドル声優のひとりでもある。



「そういえば、こうしてお顔を拝見できるなんて夢のようです! 姿を公にしないことで有名ですからね!」



 ――が、その姿を絶対に公にしない人として有名なんだよなぁ。ある意味、神秘的なんだよ、そこらへんが……って、そんな卯月雪奈が目の前に!? か、感動したかも!



「そんな私のことはどうでもいいわ。そこのアナタ……パートナーになってよ」



「パ、パートナー?」



「ええ、そうよ。もうじき始まるAZ社の新作ゲームのテストプレイするためにはチームを組む必要があるって聞いたのよ。ソロプレイじゃ厳しいって話だし……」



「そ、そうなのか!? し、知らなかった!」



 ん、そういや、ここに集まっている連中はみんなチームって感じだ。



「俺達はすでに三人パーティーだぜぇ!」



 そういえば、あの大学生三人組は、すでに三人一組のチームを結成しているみたいだ。



 「あ、そうだ。私のことは優奈でいいわ。ちなみに、美樹原優奈は本名だよ」



「は、はぁ、それじゃ俺も名乗っておく。和泉京太郎だ」



「それじゃ京太郎って呼ばせてもらうわ」



 よし、優奈のチームを組んでおこう。ソロじゃ厳しいって話だしなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ