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GLOBAL SHOUT!  作者: 丸尾累児
Chapter2「ウチが好かれた相手はNPCって・・・なんだこりゃ」
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第6節「リリンとスピカ/その2」

 ひょんな事から、リリン達を共だってクエストに行くことになった友紘。

 しかし、その先頭にいるのは……。

 どういうわけか、NPCオリエである。



「クエスト~クエスト~♪ ランララン~♪ すっごい敵を倒しっちゃえ~♪」

「どうしてこうなった……?」



 友紘がそうつぶやくのも無理からぬこと。

 苦悩に痛む頭を左手で押さえる。

 そんな心境を知る由もなく、NPCオリエは進む。そもそも彼女が現れたのは、スピカが友紘たちにクエストに行こうと誘い出した直後のこと。

 登場するや否や、NPCオリエはその愛らしい笑顔を振りまいて



「なにしてるの?」



と、問いかけてきた。



「クエストに行くんだよ、クエスト」

「どんなクエスト?」

「圧縮空気の出る銃を使って、風船を割った数を競うヤツ」



 そもそもこのクエストは、スピカに無理矢理受注させられたモノである。

 隣で溜息を漏らすリリンも同様のことを思っているらしく、あまり乗る気ではないらしい。その対面では、スピカが意気揚々とした表情を浮かべている。



「リリンさん、リリンさん」

「……なによ?」

「ボク、絶対クルトさんに勝ってみせますから応援してくださいね!」

「……はいはい……」

「よぉ~し、ガンバるぞ」



 もはや、ひっちゃかめっちゃか。

 友紘は深い溜息をつきながらも道を歩いた。

 そうして辿り着いた目的地――大草原地帯「ユリースステップ」。

 このエリアは、東西南北を山に囲まれながらも、足首からやや上まで覆われるような丈の長い草がどこまでも果てしなく生い茂っている。遠方には南北を横断するように川が広がっていて、山から湧き出た水があたり一帯を潤しているようだった。

 一見、草しかない生えていない広大な草原があるかのように思えた。

 けれども、その中央に巨大な建物が自己主張するように作られている。唯一無二の人工物として、人を惹きつけるには十分なモニュメントだ。

 入り口の看板には、『レジャードアベニュー』という名前が掲げられている。

 この施設の名前だろうか?

 明らかにテーマパークであることを示唆ししている。周囲には、従業員らしきNPCが点在していて、友紘たちがやってくると歓迎の言葉を述べ始めた。

 そんな中で、目的のクエストを受注するATNPCを探し始める。



「こっちです」



 先導するスピカが声を上げた。

 後を追っていくと、放牧場らしき場所にカウボーイ姿の女性が佇んでいた――もちろん、プレイヤーではない。システムが配置したNPCである。

 友紘はそのNPCの前まで行くと話しかけた。



「こんにちは」

「いらっしゃい。ビックヒットをやりにきたのかしら?」

「ええ、そうですよ」

「OK。それなら、この銃を貸してあげるから、バンバンモブを狩ってちょうだい」

「ありがとう」



 NPCが取り出した銃を受け取り、スピカに手渡す。

 すると、横で見ていたNPCオリエが声を掛けてきた。



「ねえ、どんなゲームなの?」

「うーん、簡単に言うならフィールドに配置された羊を守りながら、羊を狙う特定のモブを倒して、その数をプレイヤー同士で競い合うゲームかな。もちろん、相手の妨害をしてもOK」

「じゃあ、プレイヤー同士で撃ち合うなんてこともできるの?」

「そこに走られると、単にPVPになっちゃうから出来ない仕様になってる。代わりに相手を妨害するためのアイテムが用意されてるんだよ。あと、障害となる羊を撃つと獲得した点数が減らされる」

「へぇ~なんだか面白そう」



 友紘は、興味を示すNPCオリエを横目に納屋の脇に置いてあった遊技用の銃を手にした。

 対するスピカも同じように銃を手に取る。



「いいですか、クルトさん。制限時間20分の間に1000点を先取した方が勝ちです」

「OK。完膚なきまでに叩きのめしてやるぜ」

「負けませんよ」



 NPCがカウントダウンを始め、「スタートッ!!」という掛け声と共にゲームは開始された。

 まず現れたのは、6匹の小さな狼型のモブ。友紘がそれらを狙って弾丸を撃ち放つと、60点の表記と共に狼は倒された。



「1匹10点か……。こりゃあ、小物を狙っていくか大物を狙っていくか、よく考えて判断しねえとアイツに負けちまうかもしれねえな」



 少ない点数にポツリと呟く。

 チラリと左側を見れば、小さな点のようなサイズのスピカが同じようにモブを倒していることが遠目に見えた。袂に表示されているウィンドウには320点と書かれている。

 短時間で驚くべき点数差――友紘は焦燥感を抱いた。

 負けじとすぐさま現れたモブの集団に向かって突っ走る。今度はボス格の大柄の狼を連れ立っており、阻害するように小柄の狼がこちらに向かってきている。

 考えている余裕はない――友紘は、トリガーを引いて銃弾を撃ち放った。

 まず1匹。

 確実にヒットさせ、点をゲットしていく。

 他の襲ってくるモブは動き回って避けるしかないだろう。そして、同時に要所要所で攻撃する。友紘は考えながら、スピカの点数に追いつこうと必死にあがいた。

 そして、どうにか手にした点数は、395点――が、当のスピカも追いつかせる気はないらしい。



「あれ~? クルトさん、まだそんな点数なんですかぁ?」



 途端にこちらを見て煽ってきた。

 嘲笑して指差すウィンドウの表示には、565点と書かれている。このまま順当に行けば、1000点などあっという間だ。

 それだけにスピカの挑発は、実に腹立たしいモノだった。



「うがーッ!! アイツ、あとで絶対に土下座させてやる!」



 自分を奮い立たせ、距離を詰める狼と交戦する。

 1匹の狼が飛び上がって袂まで襲いかかってきたが、友紘はその下をくぐり抜けるようにして身をかわした。同時に宙に飛んで露わになった腹部めがけて銃弾を撃ち放つ。

 当然、撃たれた狼は着地と同時に激しく横転して消滅した。

 しかし、奪取したのはわずか10点。

 すぐさま別の個体を狙い澄まし、トリガーを引く。

 さらに背後の狼の存在に気付き、ライフルを鈍器の如く振り回す。すると、牙を剥いて襲いかかってきた狼は鈍い音と共に空き缶のように地面を転がっていった。

 とっさに金切り声のような悲鳴が上がる。

 もちろん、それで死んだわけではない。

 弾丸を放って、トドメを刺さなければ意味がないのだ。友紘は地面を転がった一匹を仕留めると、さらに襲い来る群れを殲滅していった。



「よし。これで520点」



 友紘がようやく半分の点数を獲得した頃。

 勝負は膠着状態に陥っていた。

 なぜなら、ポイントが入手しづらくなっていたからである。

 前半は勢いでなんとか倒してこれた。だが、後半になると狼以外にも、イノシシや山ほどの背丈はある雄羊、巨大な鷲などの獣が押し寄せて羊を守るのも一苦労だったからだ。

 おそらく終盤になるにつれ、ゲームの難易度が上がるのだろう。

 モンスターの防御力や俊敏性が上がり、ポイントはますます獲得しづらくなった。

 こうなっては、大物を狙っていくしかない――。

 友紘は100メートル先から一団とを率いて襲ってきているリーダー格の狼を狙うことにした。

 だが、問題はこの狼の特徴はその巨大な体躯だ。

 普通の狼の大きさが大型犬ほどであるにも関わらず、リーダー格の狼の身体は2~3倍。ゾウやヘラジカなどの巨大生物ほどの姿をしていたのである。

 これでは一撃で仕留めるなど容易ではない。

 まずは取り巻きの狼たちを仕留めつつ、リーダー格の狼の殲滅に取りかかるしかなかった。



「いただき!」



 ところが、殲滅の最中――。

 唐突にスピカが割って入ってきた。なにをするかと思えば、友紘が狙い澄ましていた大柄の狼を攻撃し始めたのである。

 さすがの友紘も怒鳴って抗議したが、スピカは取り合わなかった。



「やい、テメエ向こうでおとなしく狩ってたんじゃねえのかよ」

「やだなぁ~誰も『邪魔しない』なんて言ってないじゃないですか」

「コ、コイツ……!」



 さすがの友紘も焦ったのだろう。

 急いでリーダー格の狼の元へと駆け寄っていく。しかし、当然のことながら殲滅していた小柄な狼の群れが襲いかかってきていた。

 かといって、スピカに横取りされては叶わない――。

 友紘はどうにか群れを全滅させ、横取りを狙うスピカの妨害を阻止したかった。

 すぐさま近くの1匹に向かって一撃を喰らわす。

 それから、左右から飛びかかってきた2匹を避け、10メートル先で威嚇のため吼えていた1匹に向かって走る。すると、威嚇してた狼が応じるように襲いかかってきたため、友紘は足で狼の頭の側面を蹴った。

 丸太のようにゴロゴロと転がる狼。

 その顛末を最後まで見ることなく、友紘は即座に振り向いた。その目先には、さきほどの2匹が追いかかってきている。

 結果は言うまでもなく、見事にクリティカルヒット。



「ちょっと危ないじゃないですか!」



 もちろん、スピカからの抗議はあった。

 だが、それを含めて友紘の狙い通り。



「うっせぇ。だいたいオマエが先に横取りなんかし始めるのが悪いんだろ?」



 友紘はいつのまにかモブではなく、スピカに対して照準を合わせいた。

 相対するスピカも友紘に向かって、弾丸を撃ち放つ。



「もぉ~うアッタマに来たッ!!」

「テメエがやり始めたんだろ? それを言うなら、こっちの台詞だ」

「うるさい! バーカッ、バーカッ!!」

「馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅ~」

「クルトさんなんかこうだ」

「あ、テメエやりやがったな」

「へへ~んだ!!」



 もうこうなっては子供の喧嘩だ――友紘がスピカを狙い、スピカが友紘を狙う。互いのHPを削り合い、バシバシ相手を攻撃が主目的と化していた。



「ちょっと! ちょっと! 2人とも目的が変わってる!」



 そんな様子を見かねてだろう。

 リリンが声を掛けてきた。

 しかし、友紘は相手にしなかった。当然だ。完全にムキになっている人間が他人に諫められ、いったいどうやってすぐに怒りを収められるだろうか。

 事実、友紘の耳にはリリンの制する声など微塵にも入っていなかった。

 銃を鈍器に見立て殴りつける。

 だが、即座にスピカによって砲身を盾にして防がれてしまう。逆に股間を狙った醜悪な蹴りに身もだえすることとなった。



「……ぐおっ……ぉぉ……ぉお……」

「へっへぇ~ん! ざまあないですね!」

「……スピカ……テメエ……なんてところを狙い撃ちしやがんだ……」



 苦悶の表情を浮かべながら、鬼の形相をみせる友紘。

 痛みにこらえつつも、渾身の力を込めてスピカを殴った。


 そこからは、もはや乱戦だ。

 撃ったり、殴ったりの繰り返し――友紘とスピカの勝負は、単なる子供の喧嘩になった。



「……去れ」



 そんなときだった。

 友紘が背後に気配を感じて振り返ると、いつのまにか受付にいたNPCが立っていた。



(……え? なんで受付のNPCがここに?)



 おかしなと思ったのは、このゲームフィールドにはプレイヤーとプレイヤーと一緒に行動できるATNPCしか入れないこと。

 ましてや、受付役を担っているNPCが移動することなど絶対にありえないのだ。

 友紘はその異様な状況に驚いた。



「プレイヤーは去れ! いますぐこの世界から去れぇーッ!!」



 目が尋常ではない――。

 縦横斜めに高速で動いたかと思えば、血走ったように真っ赤に染まっている。ある意味、サスペンスホラー映画を実体験しているかのようだ。

 だが、ここはゲームの世界。

 特定の命令規則に従っているはずのNPCが規則違反を犯して動くはずがない。

 にもかかわらず、イレギュラーな動きをしているのはバグなのか?



「な、な、なんだよ……コイツ?」

「知りませんよ。ボクたちATNPCならいざ知らず、普通のNPCがこんな行動するなんてありえません」

「じゃあ、なんだっていったい――」



 刹那、「キャー」というリリンの悲鳴が聞こえてくる。

 慌てて様子をうかがうと、いつのまにか埒の向こう側には大量のNPCたちが受付のNPCと同じように襲いかかってきていた。

 その様は、まるでゾンビのよう。

 ノソリノソリとうごめき、いまにもリリンとNPCオリエを喰らわんとしている。



「ちょ、ちょっと助けなさいよ!」

「んなこと言われたって、コイツら攻撃できるのか?」

「……あっ、そっか。普通のNPCは攻撃受け付けないんだっけ?」



 攻撃不可――。

 これはどんなMMOであっても、NPCに対する攻撃が特定条件下以外ではできないというのは常識だ。だから、それを知ってか友紘は考えあぐねた。



「プレイヤーは出てけぇ~」

「この世界からいなくなれ」

「ここは我々の世界だ」



 まるで彼らが支配しているかのような言い回し。

 徐々に囲まれつつある中、友紘は異様な光景に3人に向かってある提案をした。



「……逃げよう……」

「逃げるってどうやって? こんなにも囲まれてるんですよ?」



 チラリと周囲を見れば、NPCの数はさっきよりも増えている。

 いったいどこからやってきているのだろう?

 無限増殖のバグでもあるのか――NPCは次々と沸いて出てくるかのようにその数を増やしていった。



「お兄ちゃん、こっち!」



 そんな中、誰かが叫んだ。

 友紘が声のする方を向くと、いつのまにかオリエが埒の東側に立っていた。そこにはゾンビのようなNPCはおらず、逃げ出すには格好の位置だった。

 いまなら逃げられる――。

 友紘はそう思って、リリンとスピカを連れて一目散に逃げ出した。

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