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GLOBAL SHOUT!  作者: 丸尾累児
Chapter1「ウチの超ハッピーゲームライフじゃん!」
47/53

第7節「スピカ/その3」

※前回の続きなので、文章としては若干短いです。


 不意に先日のことが脳裏をよぎる。

 それは、浜岡のインタビューを受けたときのことである。



《――プレイヤーは、この世界から出て行けっ!!》



 突拍子もない言葉だった。

 もし、彼らがプログラムの域を超えた人格を有していれば、当然そのような主張をするかもしれない。なにぜ、彼らはプレイヤーをサポートするために生み出された存在だからである。

 そして、そうした存在が反発して自我を持ったとき、いったいどうなるのか。



(プレイヤーとNPC……。NPCがここまで俺たちっぽくなっちゃうと、確かにプレイヤーという存在は不要になるかもなぁ~)



 友紘はそのことを考え、スピカに発しようとした言葉を改めて慎まなければと思った。



「どうかしたの……?」



 突然、スピカに話しかけられる。

 わずかにボーッとしていたせいだろう。友紘は唐突な声掛けに驚かされた。しかし、すぐに心を落ち着けると、以前言われた言葉の意味をスピカに問うてみることにした。



「あのさ。『プレイヤーはこの世界から出てけ』って言ってたATNPCがいたんだけど――なにか知ってる?」


「……えっ? ボクと同じATNPCがそんなこと言ってたの?」


「ああ、少し前にな。これもNPCがシステムで作られた思考や感情から生まれた言動なのか?」



 その問いかけに、スピカはしばらく黙り込んで動かなかった。しかし、寸刻して考えがまとまったのか、真剣な目で答えを返してきた。



「――それは、ボクたちのNPCの中に生まれていけない感情だと思う」


「どういう意味だよ?」


「ボクたちは、プレイヤーに逆らっちゃいけない決まりになってる。だから、プレイヤーをこのエル・ヴィオラから追い出そうなんてことは、システム的にもできないように作られているんだ」


「――ってことは、プレイヤーを追い出そうなんてのは?」


「するはずがないよ……いや、むしろしちゃいけないんだ」


「だったら、どうして俺が出会ったATNPCはあんな発言をしたんだよ?」



 と、説明の矛盾を問い質す。

 だが、スピカは「わからない」と一言口にするだけだった。代わりに発せられたモノは、友紘にとって理解の範疇を超えるモノだった。



「君が出会ったATNPCがどうしてそんなことを言ったかはわからない。だけど、ボクたちNPCはプレイヤーと共にあるために創造主たるクリエイターたちからが生み出した存在なんだ」


「つまり、創造主の意志に反する行動はしてないって言いたいんだな?」


「うん、そう。ボクたちは意志に反することはしない。でも、もしかしたらひょっとすると……」


「ひょっとすると?」



 と詰問した途端、スピカは「なんでもない」と言い淀んでしまった。

 友紘は満足な答えが得られなかったことに不満を漏らしたが、



「これ以上は、ボクの権限では離せることじゃないから」



 と丸め込まれてしまった。


 当然、それで納得できるはずがない。友紘は、さらに問いかけようと頭の中で思い浮かんだ質問を口に出そうと言葉を発する。



「ちょっとっ!? ウチを無視しないで!」



 ところが、それを遮るようにリリンが割り込んできた。

 そのせいで、聞きたかったことは聞けずじまい。友紘は、バツが悪そうに眉間にしわを寄せてリリンを睨み付けた。



「……んだよ。人が大事なこと聞いてんのに割り込んで来んなよ」


「ウルサいなぁ~。っていうか、アンタがいなくなればいいじゃん」


「だから、俺が話をしてるっつってんだろうが!!」


「なによぉ? SSSM!!」


「え、えすえすえすえむ……?」


「超超超ムカつくって意味!」


「わっかんねぇっつーの。んなミサイル見てえな用語で言うなっ」


「ウッサい、ウッサい! バーカッ、バーカッ」


「バカはテメェだろ」



 再びいがみ合いになる。

 だが、それも束の間。すぐにスピカの介入があり、「まあまあ」という言葉と共になだめられた。しかし、それで友紘の気が収まるわけがなく、リリンを見ないようにと明後日の方を向くことにした。



「とにかく。喧嘩なんてしないで、お互い仲良く冒険しようよ」



 とっさにスピカに諭される。

 友紘はそんなスピカを「ずいぶんとお人好しなNPC」だと思った。しかし、その一言で気が晴れるわけがなく、早くこの場を収めて彫金ギルドへ行きたかった。

 悪態をつくようにスピカに言ってみせる。



「……仲良くねぇ~? コイツと冒険なんか、俺は絶対イヤだけどな」


「ウチもイヤ。こんなヤツ、足手まといになるだけじゃん」


「お願いだから2人ともボクの顔を立てると思って、この場は仲直りしてくれないか?」


「ヤダね」


「ウチもおなじく」


「……わかった。じゃあ、3人でクエストに行こう!」


「「はぁぁあああ~っ!?」」



 思わぬ提案が飛び出る。

 おかげで、友紘はリリンと声を揃えて驚かされることとなった。しかし、スピカはそんな2人の様相を意に介さないつもりらしい。

 気付けば、友紘はスピカの腕に抱きかかえられる形で、リリンと隣り合って接していた。

 当のスピカは、ワケもわからず笑っている。



「ほら、2人とも。パーティメンバーなんだから『よろしくお願いします』の一言ぐらい言ったら?」


「ちょ……っと待てよ。なんでコイツとクエストに行かなきゃならねえんだよ」


「そうよ。ウチだって、これからリアルで友達と出かけんの――付き合いきれないわ」


「だったら、断ればいいじゃないか」


「はぁ~っ!? だから、何を言って……」


「ほらほら、早く早く!!」


「おい、コラ待て」



 無理矢理、背中を押される友紘。

 もちろん、強く反発して絡まった腕から逃れようとした。だが、細い見た目に似合わず強い力を持つスピカになすすべなく町のハズレまで追いやられてしまう。

 ようやくスピカの呪縛から逃れられたのは、その直後のことだった。

 激憤しながら、スピカにその本震を問いかける。



「オマエなんなんだよっ!」


「なんなんだよって……?」


「だから、初めて会ったNPCがそこまでする必要がねえだろっつーの! しかも、なんでそんなに俺たちみたいなプレイヤーと仲良くしたがるんだ?」


「うーん、そう言われてもなぁ……」


「まさか……。そういう風にプログラムされてるからとかじゃねえよな?」


「それもあるよ?」


「あんのかよっ! 余計なお節介だっつーの!」


「でも、ボクが2人を一目見て気に入ったってのが一番の理由かな」


「……は?」



 ワケがわからなかった。

 ただのBOTであるはずのNPCがここまで感情豊かに気持ちをぶつけてくる。そのことにも違和感を覚えたが、開発したフェニックス社がそのようにプログラムしたのだと解釈すれば理解はできる。

 事実、スピカは恥ずかしそうに右の人差し指で頬を掻いていた。



「ん~なんて言えばいいのかなぁ……」



 そして、答えようと必死に考えあぐねている。

 友紘はそのことから、先ほどの「NPCが自我を持ったら」という事柄を思い返した。しかし、その事柄は結論に至ることなく強制終了させられる。



「君たち2人が気に入ったからかな?」



 直後、スピカの口から意表を突いたような言葉が飛び出す。

 友紘は、その言葉に茫然と頭が真っ白になった。しかも、若干はにかんで言葉を選ぶようにして答えている。ここまで来ると、NPCとは思えない仕草だった。

 だが、一番わからないのは「自分たちを気に入った」という言葉である。



「どういう意味なんだ、それ?」


「言葉の通りだよ。ボクは、喧嘩する2人を見てスゴくいいなって思ったんだ」


「意味わかんねえよ……。だいたい喧嘩してるのにスゴくいいって、いったいなんなんだよ?」


「う~ん、なんだろう? 人間としての所作って言ったらいいのかな」


「所作?」


「実はね、ボクは今日生まれたばかりなんだ」


「だからなんだよ……?」


「つまり、A.Iとして生まれたボクが最初に見て、興味を持ったのが最初のプレイヤーが君たちなんだ」


「それと所作といったい何の関係があるんだよ?」


「エヘヘッ、ゴメン。いまのは、言い訳だったかも」


「はぁ~!? 言い訳ってなんだよ!!」



 その言葉にスピカがコクリと頷く。

 ウソを語られ、憤慨する友紘をよそにスピカは笑っている。ただ、その笑いの中には、真面目な言葉と照れ隠しが含まれているようにも思える。


 そんなスピカが唐突にリリンの方に身体を向ける。


 友紘は何事かと思って問いかけようとしたが、途端にその背中から「邪魔をするな」という雰囲気が伝わってきたため、問いかけることができなかった。



「そして、一目見て大好きになった……リリン、ボクと『付き合ってください』っ!!」



 そう発せられた直後。

 友紘はおもわず目を見開いて、その場に倒れそうな勢いで打っ魂消た。

 あり得るはずもないNPCの愛の告白に……。






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