「ハマナ・カバナの突撃同行取材!/第1回」
「どーもぉ~! 一撃冒険団の団長、ハマナ・カバナことジャーニー浜岡です」
「おなじく一撃冒険団の副団長、プラウドことルーイン小林です」
「いやぁ~、サービス開始からもう2ヶ月も経っちゃったんだね」
「その間、団長の無茶ぶりにヒィヒィ言いながら、付き合わされましたけどね」
「え? そんな無茶なこと言ってないよぉ~」
「アンタね……。いっぱい無茶な企画を押し通したじゃないですか(笑)」
「言いがかりはやめくれっ! お約束だよ、お❤や❤く❤そ❤く」
「そのハートを乱舞させるのやめてください」
「つれないなぁ~プラウドは」
「……で、今回はどんな企画なんです?」
「あっ、スルーした(笑)」
「アンタになにかを期待するのが無駄だと思ったから、先を進めようと思ったんじゃないですか。もう、次行きますよ?」
「はいはい、どうぞ~どうぞ~!」
「あー、ゴホンッ! え~団長が言わないので、私が発表させていただきます。今回の企画は、一般プレイヤーさんのTCにお邪魔して、そのゲームライフを密着取材しようという企画です」
「おぉ~っ、今回の企画はなんか面白そう!」
「アンタの企画だけどね(笑)」
「だって、みんな面白そうだって言ったじゃん。だから、ボクは編集長に念押しで『ゲーム通貨たくさん用意してくださいね』って言っておいたのさ」
「もしかして、余った通貨を別のことに使おうなんて、よこしまなこと考えてませんよね?」
「…………」
「あっ、黙り込んだ(笑)」
「くっ、どうしてボクの計画がバレたんだっ!? プレイヤーさんへのお礼金やら消費アイテム用の経費だけでなく、装備を新調するための経費まで計算したというのに!」
「アンタ、そんなクダらないこと考えてたんかいっ!?」
「しかも、その装備に必要なウルトラレアアイテムの購入費に充てようだなんて、ボクはひとことも言ってないからね?」
「メッチャ喋ってるじゃないですか(笑)」
「あっ……」
こんなバカな団長は放っておいて――。
次のページでは、TC「長靴キャッツ」さんの同行取材をお伝えしちゃうぞ!
――CASE.1「長靴キャッツのみなさん」
「どうも。今日は、よろしくお願いします!」
と、温かく出迎えてくれたのは、長靴キャッツのオーナー『ヴァネッサ』さん。金髪縦ロールの似合うアルヴ族の女性だ。
メインジョブは、ナイト。
生産系スキルは全般を上げつつ、メインとして調理師をやっているとのこと。
いいですよねぇ~? 調理スキルがあると、レアな料理を自前で調達できたり、人気料理を作って販売するなんてこともできちゃうし。
「こちらこそ、よろしくお願いします――早速ですが、ボクにお茶菓子を……」
「団長は、いったいナニしに来たんですか(笑)」
「もちろん、くつろぎに来たに決まってるだろ?」
「そうじゃないでしょっ!? 私たちの目的は、同行取材ですよ?」
「うん、まあそうとも言うね」
ダメだ。
この団長を当てにしてたら、目的達成ができない。
「いつもは、どんな風にして過ごしてるんですか?」
「風任せと言えばいいんでしょうか? 私たち『長靴キャッツ』は、3人だけの弱小コミュニティです。それだけに全員揃わないなんてこともよくあります」
「3人だけ……? もっとメンバー募集したりしないんですか?」
「元々、私がまったりやりたいなぁ~と思って立ち上げたTCなので(笑) アウラさんとリリンさんは、成り行きでTCに誘ってみたんです」
「なるほど。それで3人だけなんですね」
ちなみにこのTCは、団長がレベル上げのときにご一緒して見つけたらしい。3人だけという超マイノリティがアットホームなさを感じさせます。
(もう1つ付け加えると、お三方ともリアルでも女性とのこと)
さて、そんなヴァネッサさんからメンバーの2人を紹介されました。1人は、女性ライカネルのリリンさん、もうひとかたはニューマンのアウラさん!
「どもどもっ、リリンでぇーす!」
「初めまして、アウラです」
声の調子から察するに、お二方ともかなり若そう。オジさん的には、超うれしい出来事です。
一通り挨拶を済ませたところで、今回のやるべきことを確認。
「えっと、今回は高難易度ダンジョン『バベルタワー』の攻略だって聞いたんですが……大丈夫? 3人で攻略できる代物じゃないよ?」
「もちろん、3人じゃ攻略しませんよ(笑)」
「じゃあ、どうするの?」
「ATNPCと一緒に攻略するんです」
説明しよう!
ATNPCとは、Abillity to Tink Noplayer Character=思考するノンプレイヤーキャラの略語。いわば、自律行動するNPCのことだ。
今回、フェニックスが実装した自律型NPCは冒険・職人・町民の3種類が用意されており、それぞれが独立した至高を持って行動するよう設計されている。そうすることで、開発が新たなシナリオや装備を用意するというようなコストが掛からなくなるなどのメリットが生まれる。
またATNPCには、各自が独立したユニットとして存在するため、その過程で得られた経験を新たに生まれるATNPCに生かすといったシステムも組み込まれている。
そうやって、人間と同じような個性を持ったATNPCが自律思考型サーバによって生み出されるのだ。
「ということは、傭兵ギルドへ行くってこと?」
「そうですね。まず傭兵ギルドへ行って、今回の冒険に適したATNPCを雇う予定です」
なるほど。
これなら、3人だけの小さなコミュニティでも成立するというわけだね!
というわけで、まずはATNPCをスカウトしなくちゃならない。ATNPCは、通常の町中でもスカウトすることができるが、より強いATNPCとなれば傭兵ギルドへ行く必要がある。
そんなワケで、ヴァネッサさんたちと傭兵ギルドに行ってみた。
「うっひゃー! 一杯いるじゃん」
「そりゃあ傭兵ギルドですからね」
「あっ、あっちのNPC超可愛い!」
「……って、ナンパしに来たんじゃないですよぉ~団長!」
やっぱり、目的を忘れて脱線する団長。
ダメだ、コイツ。
早くなんとかしないと……。
などと思う私ですが、無論ヴァネッサさんと共にレベルの高いATNPCに声を掛けてみましたよ。
相手は、イケメンの魔術士さんです。
試しに私が声掛けさせて貰いました。
「こんにちは。少しお話よろしいですか?」
「はい、どうぞ」
「バベルタワーの攻略メンバーを探してるんですけど、一緒に参加してくれないでしょうか?」
「構成メンバーはどんな感じでしょう?」
「ナイト、プリースト、竜騎兵、レンジャー、武術家の5人ですね。ちょうどお兄さんが魔術士として入ってくれるとバランスがいいんです」
おお、きちんと受け答えしてくれるぞ!
しかも、人間のような身振り手振りもしてるし、これはもうなんだかただのNPCだとは思え……って、あれ? そういえば、団長はどこに?
「お姉さぁ~ん! ボクと一緒に遊ばな~い?」
コラァー!! ナンパしてる場合じゃないぞっ!
おもわず団長の頭にゲンコツをかまして連れてきちゃいました。その間も、お兄さんは私たちのことを見て笑ってた様子。
うーん、やっぱりここまで来るとプレイヤーと大差ないな。
「すいません、お話の途中に……」
「いえいえ、それで報酬はいかほどでしょうか?」
「1万5千ギルでどうでしょうか?」
「オーケーです。やらせて貰いましょう!」
「ありがとうございます!」
やったね、交渉成立!
……ってことで、次回の一撃冒険団は『バベルタワー攻略その2』をお送りしちゃうぞ!




