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GLOBAL SHOUT!  作者: 丸尾累児
Chapter4「お嬢様、冒険はまだまだこれからでございます」/「お嬢様のMMO戦記」(前編終章)
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第8節「これが俺のファンタジーだ!/その3」(15/04/17/演出上の都合で文章追加)


 その瞬間、友紘は祐鶴たちと話したことを思い返していた。



「簡単だよ。プレイヤー100人呼んで、全員でフルボッコにしてやればいい」


「ホント、アンタってつくづくバカねっ!? そんなにプレイヤーが集められるワケないじゃない?」


「そうですよ、クルトさん。第一、わずかな時間で、どうやってアイツに気付かれずに集めろって言うんですか?」


「……2人とも。そこをどうにかして倒そうってのが今回の作戦なんだよ」


「無茶苦茶じゃないですか」


「なに考えてんのか、アタシにはさっぱりわかんない。それにどっかで情報が漏れてたら、いったいどーすんのさ?」


「そうならないためにも、できるだけユアたんに怨みのありそうな連中を集めて欲しいんだ」


「……つまり、『ユアたんのPK被害者の会』みたいな感じですか?」


「端的に言えばそう。でも、掲示板やエールで叫んで集めるようなことはしないで。それと、このことはしっかり秘密にするよう伝えておいて欲しいんだ」


「それは、どこからか漏れる可能性があるってことですか?」


「うん、まあそう。他にもユアたんに内通しているヤツがいるかもしれないから、集めるときはできるだけ慎重にして欲しいっていう意味でね」



 この作戦には、機密性がいる――

 そう感じた友紘は、2人にある程度信頼の置ける人物を探すことを依頼した。だが、問題は人数を集めただけでは意味がないというところにある。

 それを察してか、途端に祐鶴が話しかけてきた。



「しかし、クルト君。ハンデと言っても、ヤツがどこまで約束を守るかわからないんだぞ?」


「だからこそ、100人集めて倒そうってんじゃん」


「私にはそれでも不安なような気もするのだが……」


「まあ確かにアイツがとんでもないチートツールでも用意してるってんなら、俺たち負けるだろうね」


「具体的な作戦はどうする? なにもなく突っ込むだけでは、無駄死にというモノではないか」


「もちろん、作戦はあるよ」


「……聞かせてくれ」


「まずユアたんを中心に囲むようにタンク、DPS、ヒーラーの混成部隊を多数用意して攻撃。それと、もしその部隊が死んでしまった場合、東西南北の4方向後方に蘇生専門のヒーラーとそれを守るタンク部隊も配置して補助するんだ」


「だが、ヤツが一瞬で移動ツールを使って移動すれば、その蘇生部隊も範囲攻撃などでやられかねんと思うが?」


「そうだね。だから、蘇生する部隊には時計回り、もしくは反時計回りに移動して貰うんだ。さしずめ動く野戦病院ってところかな?」


「なるほど……。100人もいれば、あまりの混戦で後方の部隊の位置までは把握できないというワケか」


「さらに瞬間移動ツールで移動したとしても、コイツは私闘だからPvPのような縛りはない――つまり、馬や移動速度アップのスキルも使えるから、ユアたんを囲む円も移動させることができる」


「あとは、後方支援部隊を点在させた上で、一定距離を保って全滅しないようにしなければならんな」


「まあ、そこは支援部隊の各リーダーの判断にもよるけどね。できるだけヤツに位置を特定されないように散開することが大切かな?」


「枠外からの攻撃に対しては、どうするつもりだ? 未だバグが修正されず、地形やマップのプレイヤーの攻撃が及ばないような位置からの攻撃も可能なように思えるが」


「それについては、俺も考えた……で、一番それがされにくいマップはどこかと思って調べたんだ」


「……ほう。そんなマップが存在するとはな」


「まあね。ぶっちゃけ、ある情報筋に依頼して調べて貰ったんだけど、ダルダーン砂丘が一番いいっぽい」


「確かにあそこなら、なにもない場所で最適化もしれん」


「――でしょ? 砂が丘陵のようになってる部分はあるにしろ、遮蔽物がないからそういった部分は他のオブジェクトが混入しにくくしてあるんだって」


「相手の言質を取ったというワケか。ヤツも、私たちを相当甘く見ていると見えるな」


「あの態度見れば、俺たちのことを舐め腐ってるのは確実でしょ。だから、俺たちに場所と日時を決めていいなんてことを言ってきたんじゃん」


「これでツールの仕込みは、動作系か補助系のどちらかのツールしか用意できないな」


「その通り」



 友紘がそう言うと、目の前で夕凪が腕を組んで唸った。

 単純だが、人数で手数を稼ぐ方法――その方法は、通常なら使うことも、考えることもない手段だが、プレイヤーの天敵を倒すという意味合いにおいては、ある意味正攻法な手段と言えよう。


 友紘は、夕凪たちに話したことを思い出し、改めてユアたんへと駆け寄るプレイヤーの一群を見回した。すると、直後にロイを乗せた馬が駆け寄ってくるのが見えた。


 ロイは全軍の指揮を担当していたのか、まるで将軍のような立派な甲冑を身につけて、友紘の前に現れた。



「クルトさん、大丈夫ですか?」


「まあなんとか……。ロイさんも、負担ばかり掛けてゴメンナサイ」


「いえ、ミカリンさんにもどうにかご協力いただいて、どうにかなっちゃいました。あと複数の大手コミュニティも手を上げてくれて、割とすんなりと集まりましたよ」


「そうですか――ところでミカリンのヤツは?」


「ああ、そうでした……。『個人的に怨みがあるから、好き勝手暴れさせて貰う』って言づてを預かりましたんで」


「相変わらずの暴君っぷりだなぁ~。まあ、だからって好きになるわけはないんだけど」



 チラリと50メートル先のユアたんの方を見る。


 すでに多くのプレイヤーが大挙している。もちろん、その中にはミカリンの姿もあり、押し寄せるプレイヤーの中、ユアたんを攻撃し続けていた。ただ、当のユアたんに対する攻撃は多くがヒットせず、当たったとしてもカスダメージしかでないのが現状。




 それでも、塵も積もれば山となる――友紘は、思わぬ作戦に苦虫を噛みつぶしたような顔をするユアたんが痛快でたまらなかった。




 しかし、それだけでは勝てないも理解している。



「さて、俺たちも攻撃に参加するとしますか」



 友紘はそう言うと、手にボールを持って参戦する意欲を見せた。

 不意に馬を下りたロイが声を掛けてくる。



「魔導士チームはどうします? 言われたとおりクロスアビリティ『誘発』が使える面々を連れてきましたけど」


「どんどんDoTによるスリップダメージを入れてもらって」


「ああ、それで『誘発』が必要なんですね」


「知ってると思うけど、『誘発』の効果は次回以降に唱える魔法のレジスト率の低下――つまりは、他のプレイヤーが魔法を入れやすくなる」


「この効果って、確かリキャストタイムが長いうえに1%までのランダムの数値分しか低下しないんですよね?」


「でも、最大25%まで下げられるって利点もあるから、ある意味じゃ100人のプレイヤーの中に大勢の魔術士を編成すれば、一定時間だけ必殺技的にダメージや弱体化魔法を使えるんだ」



 しかも、PvPのうえに相手は1人である。

 例え、最初の1人が魔法をレジストされてしまったとしても、他のプレイヤーが数珠つなぎにカバーしてレジスト率を下げることができる。

 友紘が100人のプレイヤーが集めたのは、こうした利点を考えての上のことだった。



「まったく君も恐ろしいことを考えるよ」



 ふと別の方向から声を掛けられる。

 振り返ってみると、夕凪が弓を撃ち放ちながら話しかけてきていた。



「チートに勝てないなら、人数でボコればいいなんて発想。一見、バカとしか思えようがない作戦だが、理にはかなってはいる――まったく君らしい発想だ」


「それって、馬鹿にしてんの? それとも褒めてんの?」


「私は後者のつもりだがな……ともかく勝つぞ、クルト君」


「うん、わかってるよ」



 そう言うと、友紘は混戦するユアたんの元へと駆け出した。

 ところが、途端にユアたんが目の前から消えたことで、その足を止めざるえなかった。すぐさま周囲を見回すと、ユアたんは後方部隊の方に攻撃を仕掛けていた。



「西側X:82、Y:121にユアたん来てますっ!」



 不意に誰かがそう叫んだ。

 その瞬間、友紘を含めた大勢のプレイヤーが移動し始めた――が、途端にキャストタイムなしの「あの魔法」が発動した。

 すぐにあたりを見ると、多数の死傷者が出ていた。



「くそっ、あの野郎!」



 混戦している状況でユアたんを見失えば、戦況もわからなくなる。

 このことは、友紘の考えたリスクでもあった。だから、瞬間移動ツールを駆使して、次々にあの魔法を使われてしまうと被害は甚大なモノになった。


 次第に周囲に立っているプレイヤーの数が減っていく。


 その危機感から、友紘はユアたんに向かって駆け出した。同時に雄叫び声を上げなら、手にしたボールを勢いよく投げつける。



「おっと、ようやく主役がお出ましか」



 けれども、ボールはユアたんにかわされてしまった。

 友紘は嘲笑うようを見て、再度戻ってきたボールを投げつけた。

 だが、ボールはそれもすぐに外れてしまう。それでも、ボールは自動で生み出される反射壁を伝うと、何度かユアたんに攻撃を仕掛ける。

 やがて、友紘がボールを掴んだ頃には、ユアたんに何ヒットか当てていた。


 無論、そのダメージはわずかなダメージにしかならない。



「……知ってるよ、スローワーのキャッチ&リリースってアビリティ。ダメージがヒットするたびに攻撃力と命中率がアップするんでしょ? あと、『スマッシュ』って特性でヒットした部位によって、攻撃力が倍になるんだよね」



 とHPが8割ほどしか減っていないユアたんが言う。

 その顔には、まだ全然平気だと言わんばかりの余裕さが見えた。周囲に倒れているプレイヤーの多さも相まって、ユアたんは「勝つことが当然」と誇張しているようにもみえる。



「……プププッ。いまさらだけどさ、こんなに集めたところで、チートツール使ってるボクに勝てるはずがないじゃない?」



 そう嘲笑うユアたんに、友紘は言葉をかえさなかった。

 ただ黙って、ボールを投げつける――そんなつもりでいたが、途端に聞こえた「クルトさん」という颯夏の声に振りかぶろうとする挙動を制止させた。



 とっさに颯夏が視界に入ってくる。

 しかも、すでにユアたんに攻撃を仕掛けようとしていた。直後には、光紗姫が颯夏を跳び箱代わりにして現れ、入れ替わりで攻撃を繰り出していた。


 だが、2人の攻撃は無意味に等しい。


 なぜなら、瞬時にユアたんが受け止め、攻撃を斬り返したからである。もちろん、それに対する備えはあったらしく、光紗姫が避けて、颯夏が盾で受け止めるという連携を見せていた。

 友紘も、それに合わせるようにボールを放り投げる。


 ボールは、生成された反射壁にぶち当たって、数回ユアたんを狙い澄ました。だが、当人は完璧に見切っているのか、友紘の攻撃も、光紗姫や颯夏の攻撃もかわし続けている。



「クルト、俺も加勢する!」



 そんなところへ泰史がやってきた。

 泰史は一度死んでしまったのか、かなり後方からやってきていた。しかし、忍者らしい素早さであっという間に戦列に加わると、光紗姫と颯夏の2人と同じように攻撃をし始めた。



「もっとっ、もっとだ! アイツにツールを使うヒマを与えないぐらいに攻撃し続けるんだ!」



 夕凪の叫び声が背中越しに聞こえてくる。

 友紘はそれを聞いただけで、まだみんなが諦めていないことが理解できた。なかなか当たらないボールにしびれを切らしながらも、友紘は幾度もボールを投げつけた。



「血の盟約により繋がれし同胞よ! 我が秘術の恩恵、しかと受け取るがいい!」



 さらに別の方角から燦と思われる声が響いた。

 上空を見ると、真っ赤に輝く粉末が降り注いでいる。友紘がそれをもろに被った途端、目の前にSTR、DEX、AGI、VITなどのステータスが増強されたことを意味する数字が並び立てられていた。



「アハハハッ、無駄無駄。そんなんじゃ全然当たらないってば」



 けれども、そんなことでは戦況は変わらない。

 友紘は、相も変わらず余裕を見せるユアたんに腹を立てた。




 刹那、ユアたんがプロミネンスウェーブが撃ち放つ。

 おかげで友紘たちは総崩れとなり、光紗姫や颯夏、数人のプレイヤーと効果範囲のギリギリのところにいた燦までもが巻き添えになって死亡していた。

 一撃を食らった友紘も、膝を突きながらその様子を見ていた。

 どうにか武術家の高いHP値のおかげで生き延びたものの、次に一撃を食らえばなすすべはない。アイテム欄にあった回復アイテムでわずかな回復はした。




 だが、この死屍累々とした状況には変わりはなかった。




 そんな虚を突いてか、ユアたんが「もう一撃行くよ?」と笑いながら語りかけてくる――ところが、なぜか魔法が撃ち放たれることはなかった。



「……は?」



 目の前で詠唱しようとした本人も困惑した様子。

 すかさず友紘はその原因を探ろうと、ユアたんのHPパラメータを凝視した。すると、DoTのアイコンの中に「沈黙」を意味するアイコンが並んでいることに気付く。



(沈黙? こんな状況でいったい誰が……?)



 膝を突いたまま、そのことを茫然と考え込んでいると、



「やったっ……なんとか入った」



 という声が微かに耳に入った。

 すぐに振り返ると、数メートル後方のところでプリーストらしき女の子が顔をほころばせて、小さくガッツポーズしていた。


 ユアたんが魔法を唱えられなかった原因は彼女らしい。



「この糞アマがぁーッ!!」



 そのことに気付いたユアたんが怒ったのは言うまでもない。

 友紘が見返ったときには、瞬間移動ツールで女の子の背後に回り込んでいた。手にしていた剣が振り上げられ、いまにも切り刻まれそうでになっている。


 当然、友紘も女の子を助けようとひた走った。


 ボールを投げて、一時的に動きを止めるクロススキルもあるが、確実に当たらなければ意味がない。そうした認識が脳裏をよぎり、投げることをためらわせた。

 その間にも、刃は女の子の身体に振り下ろようとしている。



(ダメだ、もう間に合わねえ!)



 友紘は間に合わないことを悟り、女の子のことを諦めようと思った――が、直後にカンッという乾いた鋼の音が鳴り響いたことで、そうした気持ちから一瞬にして目覚めさせられた。

 前方を直視すると、いつのまにか泰史が振り下ろされようとしていた刃をしっかりと小太刀で受け止めていたからである。



「俺にも見せ場ぐらい作らせろ!」



 と泰史が叫ぶ。


 そんな叫び声を頼もしく思い、友紘は「ナイスだ」と声を掛けた。

 とっさに横から出番をかっさらうようにボールを投げつける。すると、予想外にもボールはユアたんの方にヒットした。

 さらに壁に反射して、戻ってきた一撃がまたヒット、再度戻ってきた一撃がヒット……と、先ほどと打って変わって命中し始めている。



 そのことを知り、友紘は沈黙の魔法が掛かっているうちに反抗するよう周囲に促した。



「今のうちに攻撃できる人は攻撃を! ヒーラーは支援部隊を優先して蘇生して!」



 その掛け声に多くのプレイヤーが能動的に動き始める。

 できるだけツールを使わせないよう猛攻を駆ける者、そうした人間をアシストしようと回復魔法を掛ける者。

 外周で支援部隊を蘇生させ、体勢を立て直そうとする者――そうした姿が友紘の位置からも、総じて見ることができた。



「クルト君、我々も攻撃を支援するぞ!」



 突然、祐鶴が呼び掛けてくる。

 友紘はその声に応じて、獲物を手にした数十人のプレイヤーを引き連れて駆け出した。


 ユアたんの近くでボールを投げつけると同時に直接攻撃を仕掛ける。


 チラリと時計を見れば、すでに開始から1時間を経過していた。ユアたんのHPメーターも、ようやく5割を切ったあたりを指し示しており、まだ望みがあるように思われた。

 だから、友紘は希望がある限りは戦い続けたかった。



 残りのHPは4割――

 さっきまでの余裕ぶった威勢の良さはなく、むしろ焦りを前面に現した表情をしている。しかし、友紘は慢心することなく、仲間たちとツールを使う暇もなく攻撃し続けた。



「行け、行けっ! どんどん削れ!」



 鼓舞する友紘の声にも、自然と熱がこもる。

 途中、ミカリンが「五月蠅い!」と抗議してきたが、そんなことはお構いなし。友紘は攻撃を加えながらも、ユアたんのHPが削られていく推移を見守り続けた。


 残りHP3割。

 ここまで来ると、誰1人として手を休める者はいなかった。むしろ、自ら積極的に特攻を駆けて行くようなプレイヤーの姿も見られたぐらいである。スペシャルスキルも出し惜しみなく使用し、なにがなんでもユアたんを倒そうという気迫すら見える。



「うぉりゃー! 自爆攻撃もナンボのもんじゃい!」



 と言って、クロウが自爆攻撃を敢行した。

 友紘は、「忍具の大量消費と引き替えに自爆するなんてバカだな」と思ったが、それでも防御力無視のダメージは予想以上にユアたんのHPを削っていた。


 残り2割――

 徐々に削られるHPを見ながら、友紘はそうしたことに喜びすら感じるようになっていた。いまでも死人は出ているものの、DoTの管理がきちんと為されているおかげで総崩れしなくて済んでいる。



「くそっ……なんで、なんで、こんなことになってる!」



 しばらくして、ユアたんからそんな一言が漏れた。

 その頃には、残りHPも1割に達しており、全員が畳み掛けるように攻撃を仕掛けている。もちろん、友紘も手にしたボールでユアたんを攻撃し続けていた。



「ヒマさえ与えなければ、オマエに勝機はない!」


「なぜだ……なぜツールを使って、最高レベルと最高装備にした俺が勝てないっ!?」


「――んなのきまってんだろ」


「なに……っ?」


「オマエには決してわかんねえことだ。 チートに勝てるのは、楽しいを共有して連携する仲間(フレンド)だけだ!」


「仲間だと……。そんなモノでいったいなにが変わるっ、なにがわかると言うんだ!?」


「うるせぇっ! テメエが認めたくなくても、ソイツはそこにある――必ずそこにあるんだ!」


「黙れっ、黙れっ、黙れぇ~!」



 怒るユアたんをよそに友紘が走る。


 すぐさま迎え撃とうと、ユアたんが大勢のプレイヤーをなぎ倒しながら向かってきた。しかし、不意に友紘の背後からなにかが飛んできたことによって、その足を止めてしまう。


 何事かと思った友紘だったが、ユアたんから悔しそうな声が漏れたことでその正体を理解した。



「くっ、バインドショットか!」



 立ち止まって振り返ると、祐鶴がしてやったりというような顔つきで見ていた。

 いまの一撃は、祐鶴が放ったモノらしい。ユアたんは、完全に祐鶴の放った矢の一撃に拘束され、身動きが取れくなっていた。



「行けっ、クルト君! 過去の亡霊にトドメを刺すんだ!」



 祐鶴の声援を受けて、友紘は再びユアたんに向かって走った。


 手には、全員の思いを込めた1個のボールを携えている。

 悔しさや悲しさ、争ったり、起こったりしたときの思い出が楽しさとなって過去へと消えていく。けれども、それらは友紘にとってかけがいのないモノだ。

 それだけに小さなボールは、ユアたんという過去の亡霊を否定するための一球入魂の弾丸だった。



 友紘が飛び上がる――同時に気持ちを表した渾身の叫びを口にする。







《――仲間と楽しいを共有して、この世界に物語を綴る。これが俺の幻想共有域(ファンタジー)だぁ~っ!!》








 その言葉には、全員の思いがこもっていた。

 ユアたんにやられて悔しい思いをした者、過去の亡霊にとらわれた者、ユアたんというキャラクターを清算したいという者。そうした人間たちが集い、意思を束ねて打倒としようと挑んだ。

 だからこそ、ボールを握る手にも自然と力がこもった。



 友紘が身体をうねるように反り返らせる。身体はバネのような反発力を得ると、勢いよく上体を起こしてただ1球のボールを撃ち放った。



「クロススキル発動――『弾丸烈風衝(キャノンボールブラスト)』ッ!!」



 ボールが豪速のスピードでユアたんに向かって走って行く。


 すでに友紘は地面に落下して尻餅をついていたが、自らが放ったボールの行く末をじっと見守り続けた。だが、気になったことはボールの一撃がユアたんに通用するかどうかである。

 それでも、ボールは押しつぶされたコッペパンのように変形し、怪しげな動きをしながらユアたんめがけて飛んでいく。





 やがて、ボールがユアたんの袂へと達する――顔面を直撃し、めり込む形で後方へと身体を吹き飛ばす。







 その直後、わずかに残っていたゲージがそがれた。

 同時にユアたんの肉体は倒れ込み、死亡したことを意味する魂魄の状態になった。

 その瞬間を間近で見ていた友紘だったが、数秒ほど状況を飲み込めなかった。しかし、足元から頭へ駆け上るが如く、脳内に『勝利』の2文字が浮かび上がると、堰を切ったように喜びを表すようにはしゃぎ出した。



「よっしゃぁぁ~っ!」



 周囲からも似たような喜びの声が上がる――友紘たちがユアたんに勝ったのだ。

 100人の有志たちの声が重なり、たちまち1つの大きな歓声となった。






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