第3節「明かされた真実とその思い/その1」(15/02/19/不要な文章を削除)
気の抜けた音を立てて、バスの扉が開く。
友紘はバスを降りると、すぐさま周囲にある建物の様子を確かめた。
周囲には、巨大な石塀や鉄柵に囲われた家々が立ち並んでいる――いや、家と現すよりも『屋敷』と言った方が正解なのだろう。
友紘はそれらの屋敷を見て、感嘆の声を上げて驚いた。
バスが次の停留所に向かって走り去っていく。
友紘は一瞥して見送ると、屋敷が建ち並ぶ通りを歩き始めた。
「彼女の家は、この町のいわゆる白金高輪みたいなところにある。周囲も金持ちの家が建ち並んでいるから、訪れる際は表札をよく確かめて行くことだ」
と、祐鶴の言葉が脳裏によぎる。
「確かに白金高輪だな、こりゃあ」
祐鶴の言うとおり、この通りに立ち並ぶ家々は別格だった。
どの屋敷も荘厳な作りをしており、中にはレゴブロックで作られたと見間違うようなカラフルな屋敷もある。
それらは、どれも一様に「高級」という言葉が付きそうな邸宅ばかりで、頭の中に浮かんだ友紘の自宅が貧相に見えてしょうがなかった。
友紘はあらかたの屋敷を一目すると、ポケットから手書きの地図を取り出した。それはここに来る前、祐鶴に書き記してもらったモノである。
「え~っと、この先をまっすぐ行って……」
ボソボソと独り言を言いながら、屋敷の建ち並ぶ道を歩く。
すると、200~300メートルほど歩いたところに道を塞ぐように白塗りの巨大な石塀に蔦が絡まった忠誠の屋敷を思わせる1軒の屋敷があった。
まるで友紘が通り過ぎた家々が国王の側で縦列に並んで控える家臣のよう。
その国王たる屋敷の正門には「山吹」という表札がかかっていた。敷地の広さも他とは比べものにならないぐらいのモノで、かなりの大きさを誇っていると言っていい。
それだけに友紘は声に出して、颯夏の自宅の大きさに驚いていた。
「スゲぇなぁ~ここが山吹さんちか」
表札の下にインターフォンを見つけると、すぐさまボタンを押して鳴らしてみせた。
途端に甲高い呼び出し音が鳴り響く。
それから、わずかしてポツッというノイズ音と共に「はい?」という女性らしき声がインターフォンの向こう側から聞こえてきた。
すぐにインターフォンに向かって話しかける。
「あのぉ~槻谷と言いますけど、山吹颯夏さんはいらっしゃいますか?」
「お嬢様ですか? 失礼ですが、どのようなご関係でしょうか?」
「学校の友達です」
「申し訳ありませんが、そのようなお名前をお嬢様から伺ったことがございません――どうかお引き取りを」
「いやいや、ホントですって!」
どうやら、疑われているらしい。
そのことに気付いた友紘は必死になって、家政婦らしき女性に話しかける。しかし、女性は「お引き取りください」を繰り返すばかりだった。
仕方なしにとばかりに口を開く。
「本人に確認してみてくださいよ。俺が学校の友達だって!」
「ですから、どうかお引き取りください」
「だ~か~ら~! ホントなんですって!」
と言った瞬間、インターフォンがブツッという音を立てた――どうやら、切られたらしい。
友紘は声を上げて、しかめっ面で家政婦の非情な対応を嘆いた。しかし、ここで諦めて変えるわけにも行かず、再チャレンジとばかりにインターフォンを押す。
すると、さきほどの家政婦の声が再び聞こえてきた。
「なんなんですかっ!? あまりしつこいようなら、警護の者を呼びますよ?」
「ホントのホントに学校の友達なんですって!」
「いい加減にしないと、こちらもホントに呼びますからね?」
「どうやったら信じてもらえるんだよぉ……」
とても難儀なことになった――友紘はその思いから頭を悩ませた。
ふとある人物の姿が頭をよぎる。
それはオフ会の際、丁寧な挨拶していた老齢の男性である。確か「執事」と言っていたことから、颯夏に近しい存在なのだろう。
友紘はその男性のことを家政婦の女性に問い合せてみた。
「……渡辺ですか? 少々お待ちください」
すると、あれほど頑なだった女性がインターフォンの向こう側でしおらしく消える。友紘は「在宅であありますように」という祈りを込めて、両手を胸の前で君で激しく揺らし続けた。
それから、1、2分ほどしてからのこと――
突然、左手からガタガタという大きな物音が聞こえてくる。その物音に気付いて顔を振り向けると、金持ちの家にはお約束の鉄できた自動式の門が口を開こうとしていた。
その隙間からスッと老齢の男性が現れる。
糊付けされていっさいシワのないスーツに赤い蝶ネクタイ。左胸のポケットの部分には、大粒のサファイアのブローチが輝いており、銀縁の眼鏡と白く染まりきった髪も相まって身なりの良さを表現していた。
「槻谷様っ!」
と言って、駆け寄ってくる男性はオフ会で挨拶された渡辺という男性だった。
友紘は「待ってました」と言わんばかりに老齢の男性が来てくれたことを喜んだ。
「良かったぁ~。これで入れなかったら、どうしようかと思ってたところなんです」
「申し訳ありません。わたくしが伝えていなかったばかりにご不快な思いをさせてしまいました」
「結果オーライですよ。それより、山吹さんは中にいるんですよね?」
「ええ。お嬢様でしたら、お部屋の方にいらっしゃいます――どうぞこちらに」
「ありがとうございます」
そう言って、老齢の男性の後に付いて邸内へと入る。
山吹邸は、思っていた以上に広かった。
中世ヨーロッパの貴族の屋敷を思わせる庭園、色とりどりの花。
それらを維持するために雇ったと思われる植木屋が手入れを施している。他にも長細い遊水路が所々を流れており、無音であればせせらぎすら聞こえてしまうだろうという水の清らかさを保っていた。
それらのモノが学校のグラウンド2個分の前庭に納められている。
正門から邸宅へと行く50メートルほどの通路は、その真ん中を通すように作られていた。友紘はその足を止め、左右に広がる光景を「信じられない」といった気持ちで眺め続けた。
しかし、とっさに呼び掛けられたことで現実に引き戻される。
友紘はあたふたと老齢の男性の元へと駆け寄っていった。男性はすでに邸宅の扉の前に立っており、両開きの扉の片方を空けて待っていた。
「スイマセン、あまりの庭が広さにビックリしちゃって……」
「……いえいえ。一般の方はなかなかこういった場所に立ち寄られないので、槻谷様のお気持ちはわかります。ですが、これが当山吹邸のお庭でございます」
「ですよねぇ~? しっかし、ホントにあるんだなぁ~こんな家」
「わたくしも初めてここへ来たときはビックリしたモノです」
「え? 渡辺さんって、生まれたときからずっと執事さんだったんじゃないんですか?」
「ハハハハッ、槻谷様が思われるような人間ではございませんよ」
「それじゃあ、前はなにかやってらっしゃったんですか?」
「ええ、大学を出てしばらくは大手玩具メーカーの社員でございました。しかし、槻谷様がお生まれになる前に起きた不景気のあおりを受けて、早期希望退職という名の整理解雇入りになりまして」
「……ああ、ゴメンナサイ。なんか悪いこと聞いちゃったみたいです」
「いえいえ、お気になさらず。さあ、中にお入りくださいませ」
「スイマセン、お邪魔します」
と、男性に促されるまま中へと入る。
すると、屋敷の中は前庭に負けず劣らない颯爽とした作りになっていた。
南国の一流ホテルを思わせる暖かな日差しを取り込んだ吹き抜けになった回廊。その回廊に駆けられた階段はゆったりとしたらせんを描いて、3階までの架け橋を作っている。その階段を目で追っていくと、特殊なガラスが貼られているのか、白い階段や壁面を照らす光が水の中を思わせる色を醸し出していた。
「うぉ~スゲぇ~!」
友紘はそんな光景に今まで以上に声を大にして驚いた。
颯夏の部屋までの道のりを歩きながら、2人の会話は続けられる。
「旦那様がお若い頃に奥様とご旅行なさったフィジーの風景が忘れられず、元々あったお屋敷を改築なさったモノだそうでございます」
「なにもかも俺ら庶民とは大違いですよ。きっと光紗姫を連れてきたら、喜んで速攻廊下を駆け回っただろうなぁ~」
「ご兄妹ですか?」
「ええ、3つ年の離れた妹です。泣き虫の上に遠慮知らずでわがままで、いっつも俺に頼ってくるんですよ」
「とても仲がよろしいのでございますね」
「仲がいいって言うアレじゃないですよ。でも、悪いとも言えませんけどね」
「それはよろしゅうございました」
「ところで渡辺さんに1つ聞きたいことがあるんですが……」
友紘が言葉に初老の男性がピタリと足を止める。
なぜそのようなことを聞いたか……?
それは友紘の中にある疑問が浮かんでいたからだ。しかし、それは確信には至っておらず、どうしてもこの場で初老の男性に問い合せなければならないことだった。
「なんでございましょう?」
「えっと、さっき玩具メーカーっておっしゃってましたけど……」
「ああ、なるほど。わたくしが作っていたのは、ブームにもならない子供向けのオモチャでして」
「具体的にどんなオモチャだったんですか?」
「……そうですね。VR技術を応用したTCGゲームといえば、槻谷様でもおわかりになられると思います」
「もしかして、『決闘王アサルトモンスターズ』?」
「いえ、『大スクープ!永田町特ダネバトル』という政治ネタを挟んだTCGでして……」
「あ~なんとなくわかりました」
売れない――その一言だけが友紘の頭をよぎった。
けれども、友紘が聞きたかったのはそのことではない。もっとある問題の根幹に関わる重要な話である。
「また話が変わりますけど、渡辺さんってVRMMOの経験とかあったりします?」
「いえ、プレイしたことはございません……それがなにか?」
「あ、いや単純に聞いてみただけですよ。玩具メーカーの人だっていうから、きっとそういうゲームも作ってたんだろうなぁ~っていう憶測です」
「そういうことでございましたか。残念ながら、ゲーム部門はわたくしのいた部署とは違う部署でしたので、先ほどのオモチャのようにコンペで一緒になることはあっても、実際にいちからゲームを作るなど――」
そう老齢の男性が言いかけた直後だった。
背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。どうやら、老齢の男性を探しているらしく、徐々にこちらに向かって歩いてくるのがわかった。
友紘が振り返って、しばらく後ろを見ていると180センチ近いスラリとした背丈の女性が歩いてきた。
「どなたかお客様がいらっしゃったの……?」
女性はそばまでやってくるなり、老齢の男性に向かってそう問いかけていた――が、すぐそばに友紘がいることに気付いたようで、突然目を細めてニラみつけ始めた。
当然、友紘にはそれが誰だかわかった。
「この前はどうも……。山吹さんのお姉さん」
颯夏の姉の千春だった。
千春が不機嫌になったのにも、自分が起因している。その自覚があってか、友紘も「イヤな相手に会った」という雰囲気を醸し出し始めた。
「あら、いらっしゃい。アナタみたいな人間でも、我が家に用事があるんですね」
と、含みのある言い方をされる。
けれども、友紘は気にすることなく、身体を正対させて千春と向き合った。
「今日は山ぶ……じゃなくて、颯夏を連れ戻しに来ました」
「ずいぶんキッパリというのね。あの子は、アナタの思い人かなにかかしら?」
「もちろん、違います――でも、大切な仲間ですから」
「……仲間……ね……」
「なにか問題でも?」
奥歯に詰まったような言い方に友紘の苛立ちが募る。
思い返せば、オフ会では一方的に喧嘩を吹っ掛けてきた人物である。自分の一方的な価値観を妹に押しつけ、さらには自分という存在を排除しようとする魂胆が気に入らない。
友紘はその気持ちから、どうしても千春を好きになれなかった。
「その仲間っていうのは、見ず知らずの誰ともわからない人間と繋がってできる不明瞭な仲間のことでしょ?」
「確かにそうかもしれませんよ。でも、俺にとってはゲームを一緒にプレイする大切な仲間なんです」
「なんだか安っぽいわね」
「そう思われても構いません。もちろん、颯夏もその1人なんです」
「……だから、取り戻しに来たと? 大した理由ではないわね」
「俺にとっては、大切な理由です」
ギロリとニラみ付ける千春の瞳に自らの目を合わせる。
友紘と千春の気持ちの温度差は、かなりあると言っていい。それだけ思っていることが違う以上、歩み寄るのは至難の業のように思えた。
だが、ここで千春を説得しなければ颯夏は戻ってこない――。
友紘はそのことを理解してか、とっさに正座した状態で頭を床に打ち付けた。
「お願いしますっ、颯夏にゲームをやらせてやってください!」
土下座である。
それには、さすがの千春も驚いたらしい。
頭越しにすぐに返答がかえってくることはなかった。しかし、わずかして「呆れた」と言わんばかりの溜息が聞こえてくる。
友紘はその溜息に反応し、顔を上げて千春の様子をうかがう。
だが、そこにあったのは以前ブスッとした態度で友紘を見る千春の姿だった。無駄だとわかった友紘は、途端に立ち上がって千春の顔を見た。
「アナタね……。人様の家まで来て、急に土下座だなんてどうかしてるわ」
「頭が沸騰してるだなんて思われたっていい……。とにかく、俺は颯夏の気持ちをきちんと確かめて、もう一度ゲームをやらせるためにここに来たんです」
「なんとも図々しい話ね。前にも言ったけど、我が家はゲームなんて子供の遊びから卒業しなきゃ大人としてはやっていけないの。だから、世の中には時代を問わずニートだの、フリーターだのが氾濫してしまうのよ!」
「それは誤解ですよ! フツーのサラリーマンだって、超有名芸能人だってMMOをやりたいっていう人は当たり前のようにプレイしているんだ――それのなにがいけないって言うんですかっ!?」
「全部よ。ゲームなんて、所詮は子供の遊び。仮想世界にいる友達なんて、リアルの友達に比べたらこれっぽっちの価値もないじゃない」
「どうして、見えない相手が価値がないなんて言えるんですか? そりゃあ確かにおふざけ程度の付き合い方しかしない人もたくさんいます」
「ほら、やっぱりそうなんじゃない」
「――ですが、ちゃんと向き合ってオフ会にまで来てくれる仲間だっているんです」
「そのオフ会に来てくれるっていう仲間がこの前のメンバーだったと……?」
「俺らの場合はそうです。もちろん、もっと違う出会いをしていれば、違う人ともオフ会で話すこともあったかもしれません」
「そんなモノ、大学の合コンで好きでもない相手と出会って付きまとわれるのと一緒だわ」
「……付きまとわれたことあるんですか?」
「あのね、どうしてアナタに揚げ足を取られなきゃいけないのよ――聞いてるのは、こっちなのよ?」
「スイマセン、ちょっと興味本位で聞いてみただけです」
いきなりの切り返しに千春もビックリしたらしい。
だが、それは友紘の一語一句逃さずに聞いて、千春のペースを乱す作戦だった。結果、その効果はすぐに現れ、千春は恥ずかしそうに咳き込み始めた。
「と、とにかく……。颯夏にゲームなんて低俗なモノやらせませんから」
「じゃあご両親に話をさせてください」
「構わないけど、そういう方針を打ち立てたのは両親よ? アナタには無理だと思うし、なにより本人たちは忙しすぎて、足の1本も捕まりはしないわ」
「そっかぁ……。なら、やっぱりお姉さんに頼むしかなさそうですね」
「話を聞いてなかったの? 私は絶対やらせないって言ってるのよ」
「ええ、聞いてます。でも、説得もしてみせます」
「だったら、早速説得とやらをしてみてちょうだい。できなかったら、颯夏のことはキッパリ諦めて」
「わかりました。お姉さんを説得できればいいんですね」
そう言って、一案あるかのような思わせぶりを見せる友紘。
だが、決して妙案があるワケではなかった。
しかも、相手は「たかがゲーム」と思っている千春である。きちんと颯夏にゲームをやらせたい理由を説明しなければ、納得してもらえないだろう。
それだけに千春と遭遇してしまったことは運が悪かったとしか言いようがなかった。
(どうする? 千春さんをセットする材料なんて持ってないぞ)
頭の中で焦燥の言葉を口にする。
もちろん、そんなことを言ったところで状況が変わるわけではない。友紘は一か八か、ある行動での説得を試みることにした。
「お姉さん、好きですっ! 俺と付き合ってください!!」
と頭を下げて、大きな声で告白をする。
友紘の取ったまさかの行動――
それは、意外にも千春に告白というモノだった。これには、千春も渡辺も予想だにしていなかったらしく、目を大きく見開いてたまげた様子を見せていた。
いったい誰がこんな告白を予想できただろう?
しかも、千春との接点がわずかに一度きりの邂逅という中でのことである。それだけに友紘の行動は、なんら脈絡のない行動に思えた。
だが、そこに友紘のある思惑があった。
「……悪いけど、年下には興味ないの。他のもっとアナタにふさわしい相手を当たることね」
当然のごとく、告白は冷たくあしらわれて失敗に終わる。
しかし、友紘の顔は暗く沈むどころか、「待っていました」と言わんばかりの快活で気合いのこもった表情が浮かんでいる。
そして、友紘は水を得た魚のようにまくし立てた。
「わかりました! じゃあお姉さんは諦めて、颯夏に告白してきます!」
「……えっ、ちょっと!?」
「では、行ってきます」
そう言って、出し抜けに転進して颯夏の部屋の方に向かう。
背中越しに慌てふためく千春の声が聞こえてきたが、いまの友紘にはどうでも良かった。
颯夏の部屋へ急ごうと廊下を走り抜けようとする――が、肝心の部屋の場所を知らなかったため、わずかに走ったところで立ち止まざるえなかった。
すぐさま場所を教えてもらおうと、後ろにいた老齢の男性の方を振り返る。
「スイマセン、颯夏の部屋ってどこですか……?」
「……え? こ、こ、この通路を曲がって左奥の部屋ですが……」
「ありがとうございます!」
と言って、場所を聞いた友紘は引き留めようとする千春を無視して颯夏の部屋に向かった。
颯夏の部屋の場所はすぐにわかった。なぜなら、20メートル続いていた通路は突き当たりでL字型に曲がりくねっていたからである。
その先には、たった1室があるのみ――つまり、ここが颯夏の部屋であることは一目瞭然だった。
勢いに任せて扉を開け、「颯夏」と名前を叫びながら入室する。
「ひゃ、ひゃいっ!?」
入室するなり、中から颯夏の驚くような声が漏れてきた。
どうやら、突然扉を開けられたことにビックリしたらしい。友紘の方を見返ったその表情には、「何事か?」という動揺が現れていた。
「な、な、なんですの……?」
「颯夏っ、なんでエタファンやめちまうんだよ!」
「……つ、槻谷君? どうして、ここに槻谷君がいらっしゃいますの?」
「んなことはどうでもいいんだよ。いまここでオマエがゲームをやりたいのか、やりたくないのかをハッキリさせてくれ!」
「そ、そ、そんなことを急に言われましても……」
「早くしろ!」
半ば脅迫するように回答をせかす。
当然、颯夏は状況が飲み込めない中での選択である。動揺のあまり、まともな判断ができずに友紘の言うがままの答えをしてしまうだろう。
それが友紘の狙いだった。
「えっと、えっと……」
「ホントはやりたいんだろ?」
「……そ、それはそうですけど……でも……」
「やりたいなら、素直な気持ちを表せばいいじゃないか。どうして、ホントの気持ちを隠したがるんだよ」
さらにまくし立てる友紘。
颯夏の元へと近づいていき、正面から両肩を抱いて強く揺さぶりを掛ける。そうした行動を取れば、心理的にも強迫観念にとらわれ、半ば折れる形で「やりたい」というかもしれない。
友紘はその一言を引き出すため、必死になって颯夏の身体を揺さぶり続けた。
「やめなさいっ!!」
ところがそんな行動を阻止しようとする一声が聞こえてくる。
振り返って扉の方を見ると、千春が鬼の形相で友紘をニラみつけていた。
書いておいてなんですが、大スクープ!永田町特ダネバトルというカードゲームはなんかやってみたいかもw




