第6節「リベンジと仲違い/その2」(15/04/02/文章を一部追加修正)
帰宅後、友紘はすぐにエタファンにログインした。
もちろん、目的は颯夏に対するイライラを解消するためである。
「ああもう、ちくしょうっ!!」
適当にストレスを発散しようと、先日手に入れた例の金色のボールを手にフィールドへと出る。そこで自分よりレベルの低いモンスターに対して、繰り返しボールを当て続けた。
入手したボールは面白いようにモンスターに当たり、跳ね返って友紘の元に戻ってきた。
それがスカッとしたのか、友紘はいろんな場所にボールを当てまくった。
最初はモンスターに向かってたくさん投げ続けるという行為だけだったが、そのうちフィールドオブジェクトに当たるとピンボールのように跳ね返ることがわかった。さらに熟練度を上げると、魔法の障壁のようなモノが狙ったモンスターの周囲に生まれ、ピンボール形式で何度も攻撃を繰り返すようになった。
友紘はそうした攻撃を面白がり、無我夢中でボールを投げ続けた。
「おっ、なんか面白そうなことやってんな」
とっさの声を聞いて、ふと我に返る。
振り返ってみてみると、泰史が少し離れたところでこちらを眺めていた。友紘は親友の唐突な登場を邪険に思い、鋭い目つきで追い返そうとした。
ところが泰史は帰ろうとしなかった。
むしろ、ヘラヘラと笑って友紘を見ている。そんな様子に追い返すことを諦め、友紘は向き直って別のモンスターにボールを投げつけることにした。
「おいおい、無視すんなよ」
「邪魔だから、あっち行け。俺はこのボールを当てなきゃ気が済まないんだ」
「気が済まないってのはアレか――オリエとの喧嘩の件だろ?」
そう言われ、ピタリと手を止める。
核心を突かれたことが気に入らなかったのだろう。投げようとしたボールを手に収めると、再度後ろを振り返って泰史をギロリと睨み付けた。
「どうでもいいだろ、あんなヤツ」
「なにを意地張っちまってんだよ。確かにお堅いオリエも悪いが、オマエもオマエで少し性急すぎたんじゃないか」
「俺のどこが性急すぎるって言うんだよ!」
「そういうところだっての。自分じゃわかっちゃいないみたいだけどさ、クルトは昔っから自分が正しいと思ったことを他人に押しつける傾向があるよな?」
「だって、間違ってないじゃん。オリエの件だって、ホントはゲームをやりたいのに家のせいにしてるんだよ? そんなの、どう考えたっておかしすぎるじゃないか」
「オマエなぁ~もう少し人の気持ちを考えろよ」
「考えろって……。俺は十分に人の気持ちを考えてるってば」
「それが押しつけだっつーの! まったくバカの1つ覚えすぎて、こっちがイヤになってくるぜ」
「じゃあどうすればいいっていうんだよ」
おもわず愚痴をこぼす。
それぐらい泰史はしつこく食らいついてきた。友紘はヤツ当たるようにボールを壊れて放置された古い城壁に投げつけた。
そして、ボールが手に戻ってくると、仕方なくという感じに泰史の話に耳を傾けることにした。
「俺さ、思うんだよ」
「……なにが?」
「いっつも作り笑顔で笑ってたオリエがこのゲームに来て、最初に見せた笑顔って本物なんじゃないかってよ」
「は? 作り笑顔って?」
「オマエ気付いてなかったのか!」
「だから、なんなんだよ」
「じゃあ言うけどさ、教室で女子と会話してるときのオリエの表情は本気の笑顔じゃねえよ。アレは相手に愛想良くするためのよくできたまがい物の笑顔だよ」
「えっ、アレがっ!?」
「だって、俺たちがいっつも見てるのって適当に相づち打ってるオリエじゃん。そりゃあ本気で笑ってる場面はあったのかも知んねえけどよ、基本的にオリエの笑いって作り笑顔だったと俺は思うぜ」
「……知らなかった……」
「いままで接点なかったんだし、仕方ないと言えば仕方ないんじゃないか?」
「じゃあゲームにログインするようになってからのオリエは本気で笑ってたってことなのか?」
「俺が見てた限りではそうだと思うな」
「……わかんねえよ」
「そりゃオマエの視野が狭いせいだろ」
「んなこと言ったって、そうするのが一番だと思ったんだもん……」
「確かにそれも他人のためになんのかもしれねえけどよ、正直ウザったいときだってあるんだぜ?」
「どうすればいいと思う?」
「んなもの知るかよ」
そう言われ、友紘は溜息をついた。
(まさかあの笑顔が作り物だったなんて……)
いったい颯夏のなにを見ていたのだろう――友紘はその一点にとらわれた。
ふとある疑問が頭をよぎる。
「ねえ、泰史はいつから気付いていたの?」
「そうだなぁ~、たぶん1学期の終わり頃だ」
「よく気付いたね」
「たまたま本気で笑ったところを見たことがあったんだよ。それと比べて、普段笑ってるアイツの顔って、なんかやり過ごしてる感があったんだよな」
「……そうだったんだ」
「ぶっちゃけ俺も正確なことはわかんねえよ? でも、それが確信に変わったのはこっちに来てからだな」
「オリエがエタファン始めてからってこと?」
「そう。まさにゲームを楽しんじゃってるって顔だったぜ」
「……ゲームを……楽しむ……か……」
「んまあ、そんなワケでさ。オマエもいつまでも意地張ってないで、ちゃんと仲直ろよ」
「わかってるよ。でも、いまは気持ちの整理が付かないだけ」
「だったら、俺は干渉しねえ。早く気持ちを整理して謝っとけよ」
「なんか悪ぃな。俺が意地張っちまったせいで迷惑掛けちゃって」
「まったくその通りだ。これじゃあ夕凪さんと話し合ったのが無駄だったのか、良かったのか、よくわからなくなっちまったぜ」
「夕凪さんも心配してたの?」
「当たり前だろ? クラスじゃゲームの話するなって、オーラ出しまくってるけどよ。夕凪さんは夕凪さんで、オマエらのことを心配してるっつーの」
「そっか。なら、余計に迷惑掛けちゃったな」
「ああ、迷惑掛けまくりだ」
「わかったよ。後でちゃんと謝っとく」
不意にどこからともなく「おーい」という声が聞こえてくる。
友紘が反応を示すと、東の方角から馬らしきモノにまたがった一団がやってくるのが見えた。最初に一団の姿は、片手でつかめるほどの大きさしかなかったが、200メートルまで近づいてくるとクッキリとした射影を映し出した。
それが風雷房のメンバーであることがハッキリとわかったのは、100メートルほど接近してきてからのこと。一団はすぐに友紘の前にやってきて、その場で馬を下馬し始めた。
友紘は集団の中に祐鶴の姿を見つけると、そそくさと近寄っていって頭を下げた。
「夕凪さん、ゴメン。俺、そんなにみんなに迷惑掛けてるなんて思ってなかった」
必死に誠意を見せようと平身低頭する。
そんな姿を見せられてか、途端に「おいおい、やめてくれ」という声が上がる。友紘が顔を上げると、祐鶴が困惑した表情であたふたと両手をばたつかせていた。
「クルト君。この場合、私に謝るのではなくオリエ君に謝罪するのが先だろ」
「わかってるよ。でも、俺は全然周りが見えてなかった――だから、こんな結果を生んだのかもしれないし」
「そう思って反省できただけでも十分じゃないか。私にだって、そういう欠点の1つや2つはある。誰しもが持っていることだし、誰しもが反省すべきところだ」
「だけど……」
「とにかく、私に謝罪するよりも早いとこオリエ君と仲直りすべきだ。君の感謝なり、謝罪なりはそれから受付させてもらうよ」
「ありがとう。でも、いまの謝罪しろって話は、さっきクロウからも言われたよ」
「……当然だ。もはや私がとやかく言っても解決する問題でもないし、むしろクルト君自身の問題だ。どうするかは、君自身がちゃんと答えを出して謝罪すべきことだ」
「心配してくれてありがとね」
「礼には及ばんさ。私はオリエ君がもう一度ゲームができるようになって欲しいと願っているだけしな」
「期待に応えられるかわからないけど、できるだけ努力してみるよ」
と言うと、友紘の顔からは自然と笑みが溢れた。
さっきまでのふてくされた顔に比べたら、周囲を和ませるなど幾分もマシだったのだろう。それに応じるように祐鶴が笑う。
それから、重たい雰囲気を避けるように祐鶴から別の話題を振られた。
「ところで新装備のボールを使ってみた感想はどうだい? 見たところ、サブジョブでも使えてるようだが……」
「え? 俺、メインジョブじゃなくて、バカボンドをサブジョブしてた?」
どうやら、自分でも気付かぬうちにサブジョブに指定していたらしい。すぐにステータス画面を開いて確認すると「GRP/BAK」という表示がなされていた。
意味するところは、「武術家/バカボンド」である。
つまり、友紘は無意識のうちにバカボンドをサブジョブに設定していたのだ。しかし、よくよく考えてみると球体型投擲はバカボンドしか装備できないはず。
友紘はその奇妙さに首をかしげた。
「おっかしいな~? メインジョブじゃないのに装備できてるじゃん」
バグか……?
一瞬そう思ったが、現段階ではなんとも言えない。しかも、友紘はムシャクシャするのを紛らわせるために考えなしに装備していたため、そこまで見ていなかった。
だから、祐鶴の指摘に唸り声を上げるしかなかったのである。
「ちょっとアーマーチェストを開いて、内容を確認してみてくれないか」
と祐鶴から確認を促すような発言がなされる。
友紘はその要求に従い、アーマーチェストを開いてそこにあった「フライクーゲル」という名前の武器の詳細を現すアイテムテキストを読んだ。
「……装備ジョブ『バカボンド』って書いてあるよ」
「他にはなにか書いてないのか?」
「あとは命中+2、ヒットするたびに攻撃力がアップなんて効果が書いてあるだけだけど……」
「となると、やはりバグかもしれんな」
「え? じゃあテキストが額面通りじゃないってことっ!?」
「可能性はある――しかし、断言はできん。なにせボールというSSレア武器を手に入れたのは、現状クルト君ぐらいなモノらしいからな」
「ウソっ!? これってそんなに貴重な武器だったの?」
「にわかには信じがたいが、そういうことらしい」
「ということは、可能性としてはやっぱり……って、あれ?」
突然、友紘の口が止まる。
それはステータス画面に記載されたある項目を見てのことだった。友紘の一言が気になったのか、すぐに祐鶴から「どうした?」という声が上がる。
友紘は祐鶴の問いに理由を語ってみせた。
「なんかよく見たら、ジョブの脇に括弧書きで『SRW』って書いてあるんだけど……」
「……SRW? どういう意味だ?」
「それは俺が聞きたいよ」
SRW……いったいどういう意味だろう?
両腕を組んで思案して見るも、すぐには答えが出ない。スポーツライトワゴンでもない、スーパーレイジングウォーリアでもない、さらに理解できるようになったなワンダムなどという名言じみたセリフでもなかった。
「それって、もしかして『SHROWER』って意味じゃない?」
そんなとき、誰かが声を上げる。
声に反応して、顔を向けると光紗姫が小さく手を挙げていた。
「スローワー?」
と、友紘が聞き返す。
それに対して、光紗姫が「うん」と頷いて答えた。
「つまり、投げる人って意味だよ」
「それだったら、ピッチャーとかボウラーとか他にも言い方があるじゃないか」
「ピッチャーだと、なんとなく野球のピッチャーを思い浮かべちゃうからじゃない? それにこのボールはバレーボールぐらいの大きさはあるし、どちらかって言うとドッジボールのボールみたいじゃん」
「……ドッジボール? そう言われると確かにそうだな」
それなら、しっくりくる。
友紘は妹の推理に頷いてみせた。
しかし、なぜ「SRW」などという表記が付いたのだろう。
表記の意味がわかったところで、それ自体が持つ特性を理解しなければ意味がない。さらに言えば、運営から発表されているジョブ以外にジョブが存在するのか?
友紘はその疑問に頭を巡らせた。
「もしかしたら、バカボンドの特性に関係してるんじゃないか?」
と、唐突に祐鶴が口を挟んでくる。
言っている意味がわからず、友紘はそのワケを訊ねた。
「どういうこと?」
「バカボンドって、意味合いとしては『放浪者』という意味だろ? 実際、バカボンドをメインジョブに据えた場合、サブジョブは別の2つの職業の特性を生かすことができる」
「それは俺もまとめサイトとかで見たことあるよ」
「ところがサブジョブにした場合の効果については、有志で検証してもわからずじまいだっただろ?」
「そういえば、そうだね」
「もしかしたら、わからなかった部分が今回のアップデートで追加されたのかもしれん」
「えっ、じゃあこのスローワーってヤツは隠しジョブだとでも言いたいの?」
「おそらくは……だ。しかし、正式なジョブではないためバカボンドをサブジョブに据えたときのみ発生するジョブなのだろう――さしずめ『サードパーティ』といったところか」
「……サードパーティ……」
祐鶴の言葉には、不思議と納得させられるモノがあった。
放浪者を意味するバカボンドには似つかわしくないボール型の投擲武器。バカボンドがそれを持って戦うことは、だいぶイメージとかけ離れている気がする。
友紘はその考えから、祐鶴が導き出した推論に同意せざるえなかった。そして、両手に掴んだボールを見つめ、ある決意を抱く。
「――俺、このボールで戦ってみる」
「は? 正気か?」
さすがにその場にいた全員が驚かされたのだろう。
代表するかのように泰史が呆気にとられた表情で口を開いていた。しかし、友紘の心には予感めいたモノがあり、それが「ボールと友達になれ」と言わんばかりに叫んでいる。
友紘はその心に従って、サブジョブでバカボンドを育ててみようと思った。
「夕凪さん、スローワーはサブジョブじゃないと発生しないんだよね?」
「確証はないが、開発がそういう風に狙って作ったのなら、おそらくはそうなのだろう」
「だったら、少し大変でも最初から上げてみようと思う」
「しかし、クルト君。各アビリティやスキルの熟練値を上げるとなると、それなりの時間がかかってしまうぞ?」
「いや、いいんだ。どのみちオープンベータ版もあと少しで終わりだし」
「確かにそうだが……」
「それに正規版がスタートしたらパッチが当てられちゃうかもしれないでしょ? だったら、いまのうちに楽しんじゃった方が得した気分になれるじゃん」
友紘がそう言うと、突然祐鶴が笑い出した。
あまりの突然の笑い声にムッとしてその理由を尋ねる。
「なんだよ。笑う必要なんかないじゃないか」
「いや、スマン、スマン。クルト君の妙なポジティブさにおかしくなってしまってな」
「な~んかスゴく腹が立つんですけど」
「まあできれば、そのポジティブさをオリエ君との仲直りにも使って欲しいところだ」
「もちろん、わかってるよ。そっちはそっちでなんとかする」
祐鶴の言うとおり、颯夏との関係を修復しなければならない。友紘はどうやって仲直りすべきかを考えなければならなかった。
「ところで、最近またユアたんが現れたらしいぞ」
突然、話題が変えられる。
友紘はその話題に眉をひそめた。なにせにっくきユアたんの話題である。それを祐鶴が切り出したのも、なんらかの意図を持ってのことだろう。
だから、友紘は慎重を期するようにゆっくりと問いかけた。
「アイツがどうかしたの?」
「たいしたことではないのだが、なりを潜めていたユアたんと思われるPKがここ最近頻発しているらしいのだ」
「だったら、運営に報告して解決すればいいじゃない? 俺だって、やられたときはちゃんと報告したじゃん」
「いや、報告はされているらしい。ただ運営側がが正規サービス開始に向けて多忙な時期に現れたのが気がかりでな」
「それを見越して現れたんじゃないの?」
「だから、よく考えてみてくれ。それだけ正規版の開発にいそしんでいる中で大規模なツール対策なんてものができるか? しかも、アイメット発売からオープンベータ版開始までのこの7ヶ月であんなに強力なツールを作られたら、普通は対策を講じるモノだろ」
「つまり、開発が大詰めのいまを狙ってPKを多発させてるってこと?」
「アイツの目的がなんにしろ、そう考えるのが妥当だろうな」
「正規版の発売って12月だっけ?」
「正確には12月24日だ」
「あと2ヶ月ちょいか」
「それまでに何人ものプレイヤーがPKされるんだろうな。まあ最もユアたんの犯行によるものではないPKが発生しているのも事実だが」
「アイツがいなくならない限り、エタファンⅡも安泰とは言えないな」
「それには同感だな。私も早くアイツがいなくなって欲しいと願っているのだが……」
「そういえばさ、イベントのときに流れたメッセージって、『1stのユアたん事件のときに流れたヤツ』だよね?」
「ん? ああ、そうだな……」
「どうかしたの、夕凪さん」
「……いや、なんでもない。それより、運営がユアたんをどうにかしてくれないと、正規版でも同じようなことが起こりかねない気がするぞ」
「ユアたんか……。いったい、いつまで振り回され続けなきゃいけないんだろ?」
そう愚痴をこぼす友紘。
まるで過去の亡霊に取り憑かれてるみたいで、気分は最悪。頭を抱えて、いつまでも震えていなきゃいけない気がしてならなかった。
「話は変わるが、いまからウサ猫君たちのメインストーリーを進行させに行くところだ。2人も一緒にどうだい?」
不意に祐鶴から別の話題を振られる。
それは、メインストーリー攻略の誘いだった。
もちろん、友紘はその誘いに「もちろん行くよ」と軽快な口調で答えた――が、途端に「HELP」という文字が目の前に浮かび上がったことで眉をひそめざるえなかった。
目の前に浮かび上がった「HELP」という文字。
それは低レベルのプレイヤーが誤って高レベルのモンスターに絡まれた際に他のプレイヤーから救援を受けられるようになるサポートシステムだった。
ただし、このコマンドは襲われたプレイヤーがいるフィールドを含む地域のみでしか表示されない。
友紘はヘルプという表示をタッチして、襲われているプレイヤーの居場所を確かめた。すると、襲われている場所は意外にも友紘たちと同じフィールドでかなり近い場所であることがわかった。
しかし、そうなると疑問が残る。
なぜなら、ここはモンスターはレベル1からでも倒すことができるフィールドだったからだ。例えノートリアルモンスターが出現したとしても、レストアエリアに十分退避できるはず。
友紘は奇妙な出来事に胸騒ぎを覚えた。
「だ、誰か助けてくれ!」
やがて、助けを求める声が聞こえてくる。
とっさに振り返ると、アルヴとおぼしき背の高いアバターが憔悴しきった様子で駆けてきた。命からがら逃げてきたらしく、友紘たちの前までやってくると肩で息をしながらその場に倒れ込んだ。
すぐさま男の頭上に表示されていたモノを見る。そこには、男のプレイヤーネームとレベルが書かれており、多少なりと状況が把握できた。
そして、予想通りと言うべきか。
男のレベルは現状のレベルキャップ30に達していた。しかも、このフィールドで生死を分かつようなレベルではなかったのである。
それだけに男が憔悴する理由がわからなかった。
「なにかあったんですか?」
と友紘が問いかける。
その問いかけにすぐさま男が答えた。
「ア、アイツが……ユアたんがでやがった!」
友紘の眉がピクリと動く。
発狂したように話す男の言葉に強く反応したのだろう。やにわに男の肩を抱き、「どこだっ!? どこで出たんだ!」と荒々しい声で語りかける。
すると、男が言った。
「ラッキーペンダントを落とすNMが出没するポイントだよ! 俺たちのTCが網を張って待ってたら急にアイツが現れて、みんなを次々に殺し始めたんだ!」
その一言にいても立ってもいられず、友紘は走り出した。
リベンジしたいという気持ちがそうさせるのだろう。
「おいコラ、クルトっ!」
という泰史の声が耳にしても、頭の中はすでにユアたんのことで一杯だった。
そして、友紘はユアたんのいる場所へ急行した。




