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GLOBAL SHOUT!  作者: 丸尾累児
Chapter3「お嬢様、現実は厳しいモノでございます」
23/53

第2節「海底大空洞に挑め!/その2」(12/05一部修正)


「全員準備できた? しくじった人いたら、死亡しても完全に放置するからそのつもりでいてよ?」



 レイドダンジョンの突入口でミカリンが開口一番に発した一言。

 まるで自分が主催したかのような言い方は、目前に立つ友紘たちの神経を逆なでした。もちろん、それで怒ってはいけないというはわかっている。


 けれども、沸き上がる激情に虫の居所が悪い。

 友紘は感情にまかせて突っかかろうとした――が、とっさに横から祐鶴に肩口を捕まれため、ミカリンに向かっていくのをやめた。


 代わって、ミカリンの手前にいたロイが話を始める。



「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます。レイドダンジョン突入には、事前に『海鳴りの貝殻』というアイテムが必要ですので、まだもらってないという方は各自出立国の冒険者ギルドでもらってきてください」



 その一言に対して、一同が「大丈夫で~す」、「問題ない」などと口々に語る。ただし、ミカリンだけは「もらってないとかあり得ないから」逆なでするようなことを口にしている。

 友紘はミカリンのいちいち言わなくてもいいことに腹を立てたが、拳を強く握っただけでその場は我慢した。


 ロイの会話が続く。



「まず編成ですが、第1パーティに僕を含めたナイト2名とヒーラー2名と囮役1名。それと、ナイトがピンチのときに身代わりの術でカバーしてもらうために忍者さんに入ってもらいます。第2パーティはアタッカー4名に後衛2名、第3パーティは残ったジョブの人たちで編成してください」


「「「「「はーい」」」」」


「次にダンジョンの中で気を付けることですが、攻略情報によると大量の雑魚がリンクしやすいので注意とありました。進行方向にいるモンスターを引っ張ってくる釣り役の人はもちろん、左右の横穴にいるモンスターにも注意してください」


「わかりましたー!」


「了解です」


「他になにか質問ありますか?」


「特にないな」


「俺も問題ないです」


「クックック、我にはなんの心配もない」


「大丈夫でぇ~すっ!!」



 と、各々が準備万全であることを告げる。


 しかし、そんな中にあってミカリンだけは違っていた。友紘の前で驕りたかった態度をみせ、主催者であるロイに食ってかかるかのような質問をし始めたのである。



「はい、質問。ボス前の横穴行く?」


「横穴っていうと……。もしかして、『ネプ矛』のことですか?」



 ネプ矛――その名前を聞いて、友紘はピンと来た。


 正式名称は『ネプチューンの矛』と言い、友紘がログインする前にエタファン関連のまとめサイトで多数のドロップ報告がなされているのを確認している。

 それによると、水属性と支援効果としてMPとHPが徐々に回復するらしい。さらに攻撃間隔が矛槍系武具の平均的な間隔120に対して、この槍は60と短い上に攻撃力が高いとのこと。それだけ見れば、武器としてかなり優秀な部類だが、この槍にはもう1つ記載事項があった。




 それは『時々攻撃間隔0』という項目である。




 エターナルファンタズムにも他のVRMMO同様、攻撃時にわずかな硬直時間が設けられていた。もちろん、それは通信環境によるタイムラグを含めれば、コンマ0.1秒単位での誤差が生じる。しかし、その中には意図的に攻撃時のペナルティとしているモノがあった。


 それが武器の重量による攻撃間隔という誤差である。


 なるべく本物に近づけるためそうしているのだが、前作同様に神話系の武器に関しては対象外だった。それだけにネプチューンの矛は友紘すらよだれを垂らして欲しくなる武器だった。



「今回はやりません。このユニオンでは経験も人数も不足してますし、攻略に必要なジョブも足りてませんので」


「ちぇっ、やらないんだ」


「ご不満かと思いますが、それは後日他のパーティでお願いできますか?」


「わかりました-。ボス攻略1本で行きまぁ~す」


「あと釘を刺すようで申し訳ないんですが、ボスドロップのSレア武器も合議のときに話したとおりでお願いします」


「了解でぇ~す」



 ミカリンが不満そうな声を上げる。


 それを見て、友紘はなんとなく不安を覚えた。なぜなら、あまり良くないウワサしかないミカリンのことだから、きっとやらかすだろうと思っていたからだ。



 そんな人物をユニオンに入れる――これだけでも、相当にイヤな予感しかしなかった。



「では、各自編成を始めちゃってください」



 と、ロイが各自にチーム編成することを促す。

 そうして、各員がユニオンの元となるパーティを組み始めた。


 囮役を担当はウサ猫。

 シーフとしての俊敏性を生かして先陣を切ることとなった。


 アタッカーの筆頭は祐鶴。

 ハンターだけに遠距離からの攻撃は甚大で攻撃による後方支援という意味では強力である。そのほか、燦はアタッカーチームの回復担当となり、忍者である泰史はナイトを助ける役目を任された。

 友紘はアタッカーとして祐鶴と同じパーティに編成され、攻撃の担い手として支援を頼まれた。


 各々が編成などの準備を終えて、ユニオンに組み込まれる。友紘はその一員として、レイドダンジョンの入り口に立った。

 編成が終わったことをを見計らってか、唐突にロイが叫ぶ。すでにレイドダンジョンの扉に手を掛けており、周囲を見て準備が完了していることを確かめていた。


 次の瞬間、準備完了と見なしたロイが声を上げる。



「行きますよ? 突入します」



 それと同時にまばゆい光が友紘の身体を包んだ。


 視界は奪われ、身体が真っ白い景色の中へと飲み込まれていく。

 その中で、友紘は眩しさに目を覆った。ほんの一瞬だけだったが、目を痛めかねない光は友紘の身体に緊張をもたらした。


 やがて、ピチャポチャとしたたる水音が聞こえてくる。


 友紘が覆った手を払いのけると、そこには仄暗い洞穴が広がっていた。学校の体育館ほどのフロアの天井からは、いくつもの尖った岩が連なっている。遠くからは、微かな波の音が聞こえてくることもあって、ここがレイドダンジョン『海底大空洞』であることを示していた。



 チラリと視界の右上を見る。

 そこには「制限時間1:24」と書かれたパロメータが表示されており、域内に制限時間が設けられていることを現していた。その末尾には「58:07」と表示されており、特に「07」は一瞬だけ見えてあっという間に目減りしていった。


 刻々と時間が過ぎていく。



「時間も惜しいので、とっとと進みますよ」



 それだけにロイが叫び声を上げるのにもうなずけた。友紘はアタッカーチームの一員として、先導する盾役チームの後ろを付いていくことにした。


 やがて、広いフロアから狭い通路に移行したところで、ウサ猫の声が響いて聞こえてくる。



「敵はっけ~ん!」



 その声にチラリと前を見る。


 すると、40メートル先に「コンバットクラブ」と表記されたカニが行く手を塞いでいた。

 大きさは、人間の腰元に届くほどの大きさで、6匹で縮こまるように群がっている。友紘は、モンスターの群がり用から仲間の動きに反応して活動するモンスターであることを察した。



「各個撃破でお願いします」



 ロイが指示を出す。


 それに併せて、ウサ猫が1匹のカニに向かって攻撃を仕掛けた。同時に他のカニたちも反応を示し、友紘たちの方へと向かってくる。



「クロスアビリティ発動ッ――『広域抑止(コンテインメント)』!!」



 横を向くと祐鶴がクロスアビリティを発動させていた。続けざまに弓を引き、「バインドショット」とハンターのノーマルスキルをカニの一群に向かって放つ。


 友紘は1匹のカニに攻撃を加えながら、祐鶴の行動にちょっとした疑問を抱いた。



「ねえ、夕凪さん。バインドショットの効果『敵をその場に貼り付けにする』って、通らない場合なんてないの?」


「今更なにを言いだす? 私の個々のスキル熟練値など、とうにレベルキャップに達してるぞ」


「え、マジでっ!?」


「ふふんっ、クルト君が入院している間も勉強の合間を縫ってやりこんだからな……。私がエタファンをやっているうえで、これだけは自慢できることだ」


「うは、スゴすぎ」


「それにハンターには、シーフ同様にフィールドでのアイテムをサルベージする能力もあるからな。石つぶてからレア武具まで広い放題だ」


「うらやましいなぁ~。俺も最初からハンターにしておけば良かった」


「それを言ったら、武術家だって近接戦闘系ジョブの優等生ではないか。サブジョブの召喚士との相性の良さも相まって攻撃力はピカイチだろう?」


「……そうなんだけど。でも、それじゃあアイツに勝つことできない気がするんだよ」


「アイツとは、もしかしてユアたんのことか……?」


「そりゃもちろん!」



 と言いつつ、「紅蓮連拳(ブレイズラッシュ)」を発動させる。

 他のメンバーがHPを削っていたこともあってか、コンバットクラブはアッサリとその場に倒れ込んだ。そして、グラフィックが砕けたガラスのように飛散して消える。



「3年前もそうだったけど、俺はアイツがどれだけエタファンを楽しんでる連中に迷惑掛けてるか、絶対にわからせてやりたんだ!」



 熱弁を振るいながらも、カニに勝利した喜びをガッツポーズで表す友紘。

 しかし、それとは対照的に話しかける祐鶴は暗い顔を見せていた。すぐに反応が返ってきてもおかしくないはずなのに、どういうわけか黙り込んでいる。


 友紘はそうした様子に違和感を覚えた。



「……夕凪さん?」


「ああ、スマン。君のそういう熱弁におもわず驚かされてな」


「そんなに俺、熱がこもってた?」


「もちろん。なんだか頼もしく思えたぞ」


「う~ん、そう言われるとムズかゆいんだけど……まっ、いいか」


「とりあえず、いまは手を動かすことに集中しよう」


「そうだね」



 そう返事をした途端、別の方向から「ねえ、ちょっと!」という怒声が聞こえてくる。

 友紘が声のする方向へ顔を向けると、左前方1メートル先でミカリンが苛立った様子でこちらを見ていた。足元には、殲滅したとおぼしきコンバットクラブの死骸が転がっている。



「サボってないで、しっかり戦いなさいよ!」



 どうやら、祐鶴との話をしっかりと聞いていたらしい。死骸が立ち消えるのも気にせず、ズカズカとこちらに向かって近寄ってきた。


 友紘はまた面倒なことになると思い、



「ちゃんと戦闘に参加しましたよ」



 と言い返した。


 しかし、それでも腹の虫が治まらないのか、ミカリンは「次はないからね」と主催者であるかのような発言をして戦列に戻っていった。



(いちいち言わなくてもわかってるっつーの!)



 友紘は口にすることなく、ミカリンの背中に向かって変顔で中指を突き立てた。



「進みますよー」



 というロイの呼び声に一団がさらに奥へと進む。


 狭かった通路は50メートル歩いたところで、「逆三角形型」に道が開けていた。その左右には、5メートル間隔に横穴が無数に空いており、ちらほらとモンスターの影が見える。


 友紘はその一団の真ん中からやや後方を周囲を警戒しながら歩いた。

 なにせ横穴にも無数の強そうなモンスターが襲ってくる可能性があったからである。

 おそらく近づかなければ襲ってこないタイプのモンスターなのだろうが、それでも遠くから視認して襲ってくるモンスターがいる可能性もあった。



「サハギンいっぱい発見っ!」



 とっさに前の方でウサ猫の叫び声が上がる。

 その声に呼応してか、



「さっきより無数にいますよ~。足止め、殲滅しっかりお願いします!」



 とロイが指示を出してくる。

 すぐさまウサ猫がサハギンを連れてくると思われたが、唐突なロイの「待って」という発言に友紘を含めた全員が立ち止まらざるえなかった。


 その理由を問おうと、友紘がロイに話しかける。



「どうかしましたか?」


「あ、いえ。ウサ猫さんが上手に2、3匹ずつサハギンを連れてこられないかなと」


「ああ、なるほど……」



 どうやら、バインドショットや睡眠魔法での足止めをせずに殲滅するつもりらしい。けれども、友紘が知る限り、ウサ猫にそんな技量があるとは思えない。

 しかし、あえて聞くことで、ロイにその考えを諦めさせることにした。



「おい、ウサ猫。オマエの技量であの塊から2、3匹だけ釣ってくるってできるか?」


「う~ん、アレはちょっと無理ゲーすぎかなぁ~!」


「だよなぁ……」



 やはり、予想していた通りの答えだった。


 それだけにロイはすぐに諦めるだろう――友紘はそう思った。



「私がやろう」



 ところが予想外なことに祐鶴が間に割って入ってきた。

 しかも、すでに友紘より前に出て弓を引こうとしており、ロイさえ了承すれば射るつもりらしい。ウサ猫の投擲武器よりもリーチが長い大弓だけに理にかなった攻撃ではあったが、それでも友紘にはキッチリ2、3匹だけを呼び込める気がしなかった。



「夕凪さん、やれんの?」



 友紘はおもわずそう問いかけてしまう。

 しかし、祐鶴は弓の弦を振るわせることなく、



「やれんのではない――やるんだっ!!」



 と、自信に満ちた表情で矢を撃ち放っていた。


 それが功を奏したのだろう。

 友紘の予想に反して、祐鶴の矢は20メートル先でわずかに群れから離れた3匹のサハギンのうちの1体に命中。大きなダメージを与えると同時にこちらの存在を気付かせる結果となった。



 やにわにサハギンが襲いかかってくる。



「1匹は眠らせてください。もう2匹にはナイトを盾にして攻撃を集中させて」



 友紘はロイの指示に従い、右手から走ってくるサハギンに攻撃を仕掛けた。

 しかし、よほど祐鶴が与えたダメージが大きかったためだろう。ナイトであるロイが敵対心を挙げようとアビリティを駆使するも、サハギンは一直線に祐鶴に向かっていく。

 友紘は目の前を素通りするサハギンを危険に思い、祐鶴に注意を呼び掛けた。



「夕凪さん、逃げてっ!」



 だが、そうは言っても逃げられる場所はない。

 友紘は横穴に無数のモンスターがいることを直後に思い出し、逃げ場などないことを理解した。祐鶴も逃げられないことを察してか、顔をうつむけたまま動かずにいる。



「……クルト君。ハンターの武器はなにも弓だけではないことを教えてあげよう」



 とっさに祐鶴が奇妙なことを言い始める。

 友紘はとち狂ったのかと思い、襲われそうになっている祐鶴の顔を見た。しかし、そこには狂気などなく、ニヤリとなにかを繰り出そうとする自信の笑みが浮かんでいる。


 それでもピンチであることに変わりはない。



「なに言ってんのさっ!? もうそこで一度死ぬしか……」



 友紘はそう言って、体勢を立て直すことを促そうとした。

 ところが祐鶴は左右の腰元からなにかを引き抜こうとしている。その一挙手一投足を見て、友紘は祐鶴に何らかの秘策があることに気付かされた。


 そして――



「クロススキル発動――双撃跳弾(ダブルバウンディング)ッ!!」



 突然、祐鶴が両手に持ったハンドガンを撃ち放つ。

 その銃声に混じって、友紘の耳になにか跳ね返るような音が聞こえてきた。耳を澄ませてその正体を突き止めようとしたが、音は祐鶴が打ち終えると同時に止んでしまった。


 友紘はワケがわからず、



「……あ……えっ……いったいなにごと……?」



 と茫然とした様子でつぶやいた。


 刹那、サハギンが倒れ込む。


 どうやら、一撃でサハギンを倒してしまったらしい。

 まだ半分近くあったHPゲージの数値も削られて、一気にゼロになってしまう。そんな光景を見せられ、友紘は胸元でスッと両拳に力を込めて驚嘆した。



「ハンター、SUGEEEEEEEEEE!」






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