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GLOBAL SHOUT!  作者: 丸尾累児
Chapter2「お嬢様、オフ会にお急ぎください」
20/53

第9節「悪劣なオーナーと招かざる客/その3」(11/20一部修正)


「――キサマら。次やったら、リアルで制裁を喰らわせたうえ、サービス終了までゲーム内のポストに石つぶてを送りつけてやるからな。覚悟しておけよ」


「ひぃぃぃぃ……。ゴメンナサイ、廿里様」



 ファミレスにたどり着くなり、友紘は泰史と共にテーブルに突っ伏した。

 先ほど路上でからかわれたことがよほど腹に立ったのだろう――祐鶴は向かいの席に座って、不機嫌な顔を浮かべている。


 友紘は必死に許しを請おうと頭を下げ続けた。


 そして、しばらくしてからのこと――

 祐鶴の口から「許す」という一言が漏れる。友紘はその一言にもうからかわない事を誓い、ホッとした溜息と怒らせてはならないモノを怒らせてしまったという後悔の念を抱いた。


 それから、気持ちを新たにある質問をぶつけてみた。



「ねえ、どうして学校で言ってくれなかったの? この前、泰史が読んでた一撃ゲームステージをチラ見してたよね」


「それには、私なりに事情がある」


「事情……?」


「君には、話しただろ? 勉強がイヤになって、ある意味ストレス解消のためにネットゲーを始めたと」


「そういえば、そんなこと言ってたね」


「あれはホントの話だ。私の両親は度が過ぎるぐらい教育熱心でね。それについて行けなくなって、この年頃らしく反抗してみたのだよ」


「委員長も大変だね」


「まあ別の事情もあったんだが、そちらはきっかけに過ぎなかったからな」


「別の事情って?」


「……気にしないでくれ。というか、私も他人にあまり触れて欲しくないモノなのでね」


「なんかよくわからないけど、触れて欲しくないなら聞かないよ」


「そう言ってもらえると助かる」


「でも、もし俺たちに相談できることなら言ってよ? 俺的には、夕凪さんが委員長だってわかって、なんかとっても親しみが持てたからさ」



 友紘がそう言うと、祐鶴から感謝の言葉が発せられる。

 見つめる顔には、先ほどまでの険しい表情はなく、友紘の気持ちを受け取って素直に喜んでいるような表情だった。




 不意にケータイの着信音とおぼしきメロディが流れる。




 友紘が気付いて、その方向に顔を振り向けると、颯夏がショルダーバッグの中からケータイを取りだそうとしていた。



「あ、電話に出てもよろしくて?」



 と颯夏に問われる。

 友紘を含めた全員が短く返事をすると、颯夏は目の前でケータイに耳を当てて話し始めた。



「……もしもし、わたくしですわ……そう……見つかったのですね……」



 相手は、さっき駅のところで見かけた執事だろうか?

 話す言葉の節々からは、部下と上司の関係のようなそれらしい会話が聞き取れる。友紘は、颯夏が電話を終えるのを見るなり、その話の内容について訊ねた。



「もしかして、さっきの執事さん?」


「ええ、そうですの。わたくしが夕凪さんに提案して、遅刻したモカカさんの送迎を執事の渡辺にやらせてくださいと頼みましたの」


「じゃあいまの電話はモカカちゃんが捕まったって、連絡だったんだね?」


「はい。いまから、こちらに向かうそうですわ」


「そっか。なら、全員揃いそうだね」



 そう安堵した表情を見せる。


 ここに来る前、光紗姫のケータイに1本の連絡があった。

 もちろん、相手はモカカである。事前にゲーム内でアドレス交換をしていたらしく、送り主の名前にも「モカカ」と記載がなされていた。



 そして、肝心の内容は、



「常闇より出ずるタキオンの発生が予想よりも遅すぎた――しばし待て。さすれば、我は汝らの元に現れようぞ」



 というモノだった。


 友紘は、モカカの徹底した中二病っぷりに苦笑いを浮かべながらメールを読んだ。



「モカカ君が来たら、お互い顔と名前が一致ないだろうから、改めて自己紹介をしよう――と言っても、ここにいる3人は同じクラスなので面が割れているんだがな」



 と向かいに座る祐鶴が話す。


 そんな言葉に反応してか、突然左側に座っていた光紗姫が手を上げて立ち上がった。



「ハイハ~イッ! 私、にぃーたと大ちゃん以外の人は知らないので、ここで自己紹介しまぁ~す!」



 なにかと思えば、勝手に自己紹介を始めるつもりらしい。

 友紘は斜に構えて、黙って光紗姫が挨拶する様を見守ることにした。



「えっと、私は槻谷光紗姫です。14歳のピッチピチのJCで~す!」



 おどけた声が店内に響く。

 あまりにも大きな声だったらしく、何人かの客の視線が集まった。友紘はそのことに気付いて、なにも無かったことをアピールしようと周囲に愛想を振りまいた。

 すぐさま光紗姫に向かって注意する。



「バカッ!! オマエ、声がデカすぎんだよ!」


「え~いいじゃん。私は見られても平気だよ?」


「兄貴として、俺が恥ずかしいっての」


「ふふんっ、にぃーたは恥ずかしがり屋さんだなぁ~」


「……なにを言ってるんだ、オマエは」



 ワケのわからないことを言う妹に目を細めて呆れる友紘。

 そんな友紘のそばで、突然クスクスという笑い声を上げる。顔を振り向けると、颯夏が2人の様子を微笑ましそうに眺めていた。



「槻谷君は、妹さんと仲がよろしいのですね」


「ただ兄妹ってだけだよ。コイツ、時折ムカつくって思うことあるしさ」


「それでも仲が良いと思いますよ。わたくしもそんな兄妹が欲しかったですわ」


「山吹さんって、兄妹とかいないの?」


「いえ、姉が1人いますわ」


「あ、お姉さんがいるんだ。じゃあその人と仲がいいんだね」


「えっ? あ、はい……」



 突然、颯夏のくぐもったような声を出す。

 友紘はその様子の変化に妙な違和感を覚えた。とっさに「どうかしたの?」と訊ねてみたものの、颯夏からはなんでもないとはぐらかされてしまった。


 腑に落ちないと思う中、



「では、わたくしもご挨拶させていただきますね」



 と、光紗姫の自己紹介に合わせるように言葉を紡がれてしまう。

 そうした流れもあって、さすがの友紘もそれ以上のことは聞けなかった。



「わたくしは山吹颯夏と申します。ここにいる竹中泰史君、槻谷友紘君、それと廿里祐鶴さんとは同じ学校における学びの友ですわ。そして、同時にエターナルファンタズムをプレイする中までもありますの。どうか1つよろしくお願いいたしますわ」




 その間にもオフ会は進行し、話題は次のバージョンアップで盛り上がっていた。



「なあ、夕凪さんは明後日のバージョンアップと同時に始まるオープンベータ版初の大型イベントに参加すんの?」


「イベント? もしかして、竹中の言うイベントとは『海底大空洞に挑め』というヤツのことか?」


「えっ、なにそれ? そんなんやるの?」



 と友紘が聞き返す。

 すると、とっさに祐鶴が答えた。



「どうやら、初の大型イベントといいうことで、ユニオンでのダンジョン探索らしいのだ」


「ユニオンって、前のゲームでいうところのアライアンスのこと?」



 友紘の言うアライアンスとは、複数のパーティが徒党を組んで、ダンジョンや大規模戦闘の攻略に挑むシステムのことである。

 今回は、たまたまユニオンという名前にだけで仕様はほとんど変わらないはず。

 その考えから発した言葉だった。



「大まかなところではそうだが、すでに実装されているユニオンの仕様を見る限りでは違うところもあるようだ。例えば、組んだ人数と「その際どんなジョブを組み入れたか?」によって得られるステータスボーナス。これには、加えて攻撃・防御・追加効果などの特性ボーナスが付加されるようになった」


「おぉ~なんかスゴそうだね」


「他にも同じジョブが何人いるかによって、その効果に上方修正がかかったり、逆にいないと下方修正がかかったりするらしい」


「つまり、ユニオンは適材適所を組み入れないとダメってこと?」


「そういうことになるな。たとえ装備などで攻撃力や命中率の補正をしていても、ソロ戦での強さ=ユニオン戦の強さになるわけではないということになる」


「じゃあユニオン戦で、あんまり偏った編成とかもできないってことになるよね?」


「そうは言うが、結局は戦略が重要だからな。次のイベントから実装されるにしたって、まだまだオープンベータ版であるうえにレベルの上限も30止まりだ。運営側も手探り状態でいろいろな試みをしてくるだろうさ」



 そう説明され、友紘は祐鶴の言葉に納得するしかなかった。

 なにせまだ実装もされていないのである。前作との違いを実感するにも、情報だけではまるでわからなかったからだ。

 たとえ「一撃ゲームステージ」の速報を読んだとしても、表面的な部分でしかわからないだろう。

 それゆえに友紘にとって、明後日のバージョンアップは楽しみで仕方がなかった。


 ふとウェイトレス姿の女性が近づいてくる。



「いらっしゃいませ。ご注文がおきまりでしたら、お伺いいたします」



 どうやら、この店の店員らしい。


 友紘は全員がメニューリストを開いて、飲食物を選び始めるのを見るなり、自らも慌ててメニューを選び始めた。



「あっ、えっと……。コーラ1つください」



 そして、すぐさまコーラをオーダーする。

 泰史や光紗姫はお腹が空いていたのか、「チーズハンバーグ」や「オム焼きそば」を頼んでいた。

 友紘は、そうしたオーダーを後から頼むことにして、祐鶴との話の続きをすることにした――が、またもや話の腰を折られてしまう。



「で、いまの話の続きなんだけど……」



 と言いかけた直後。


 出入口の方向から、こちらへと歩いてくる老齢の男性とセーラー服姿の小さな身体の女の子を目にする。老齢の男性の方は、先ほど颯夏に付き従っていた「渡辺」という名前の執事であることはわかった。




 けれども、小さな身体の女の子の方には見覚えがない。




 友紘はそうした状況から、彼女が「モカカの中の人」であることを察した。



「あ、モカカちゃんっぽい女の子が来たよ」



 とっさに喚起してみせる。

 すると、友紘の声に気付いた全員が颯夏の執事である渡辺という老人とモカカらしき少女の方を振り向いた。



「クックック、よくぞ集まった我が同胞たちよ」



 モカカらしき少女が左目を押さえながら言う。

 一瞬ケガでもしているのかとも思ったが、ゲーム内での言動からすれば、なんらおかしなことではないのだろう。なにせ、あれだけゲーム内でも中二病発言が目立つのだ。

 現実の世界でも、それらしい言動をしていても不思議ではない。


 友紘はそうしたことを察して、モカカとおぼしき少女に問いかけた。



「えっと、モカカちゃんだよね……?」


「うむ、如何にも。それは我が常世の世界の名である」


「初めまして、クルトです」


「そうか、汝がクルトであったか」


「うん、そうだよ……っていうか、モカカちゃんって、リアルでも中二病なんだね」


「中二病だと? なにを世迷い言を」


「へ?」


「この姿は常世の世界から作りせし、仮の姿。その名も『向後燦(ひさごさん)』という少女の姿をした人形の器でしかないのだ。ゆえにこの姿は、並行世界に無数に作られた仮初めの姿の1つにしか過ぎん」


「そ、そうなんだぁ……」



 やっぱり、中二病でしかない。

 友紘はそう思って、苦笑いを浮かべた。


 それから、燦が窓際の光紗姫に相対する席に座る。友紘は着席する様子を見ながら、燦がだいたい光紗姫と同じぐらいの年齢ではないかと考えた。


 そして、ぶしつけにも問い質す。



「あのさ、モカカちゃんは中学生?」


「中2というヤツだが、それがどうかしたか」


「あ、いや光紗姫……じゃなくて、ウサ猫と同い年ぐらいかなぁ~と思って」



 どうやら、友紘の読みは当たったらしい。

 すぐさま喜び声を上げて、光紗姫が話に割り込んでくる。



「えっ!? モカカちゃん、私と同い年なの?」


「それがどうかしたというのだ?」


「やったぁー! 私、近い年のゲーム仲間少なかったから、モカカちゃんが同い年で良かったよぉ~」



 安堵する光紗姫を見ながら、友紘はうれしさをにじませた。

 いつもは「にぃーた、にぃーた」とせわしないぐらい自分を頼ってくる妹だけに友達がいないのかと心配になることがある。

 それだけにこのオフ会に参加したことは、友紘にとって1つの収穫だった。



「よろしくね、モカカちゃん!」



 と、光紗姫が目の前で燦の右手を思いっきり振って握る。

 その行為が半ば強引な感じにも見えたが、燦が特段イヤがっている様子はなかった。友紘は無愛想な表情を見せる燦がなんとなく喜んでいる気がしてならなかった。



「あの、槻谷様」



 唐突に別の角度から声を掛けられる。


 振り返ると、今度は颯夏の執事が腰をかがめて友紘を見ていた。すぐさま友紘が用件に応じると、渡辺という名前の執事が低頭して挨拶を述べてきた。



「いつもお嬢様からお話は伺っております。わたくしは颯夏お嬢様にお仕えしております執事の『渡辺勝治郎』と申します」


「あ、これはご丁寧にどうも」


「わたくしにはゲームのことなどいっさいわかりかねます……ので、これからもお嬢様と仲良くしていただきますようお願い申し上げます」


「そんなかしこまられても、俺は大したことしてないですよ」


「……いいえ。アナタはお嬢様にゲームの楽しさをお教えくださったじゃありませんか?」


「それは成り行きというモノで――」


「それも一期一会でございます。どうか皆様と一緒に仲良くしてあげてくださいませ」


「は、はぁ……?」



 なんだか口に含んだ言い方だ。

 友紘はそう思いながらも、勝治郎の顔をじっと見つめ続けた。



「渡辺、それぐらいにして」



 ふと手前にいた颯夏が制止する。

 その顔は妙に赤くなっており、目の前で友紘たちの話を聞いて恥ずかしがっていた。

 もちろん、そんな姿を見せられてた勝治郎が謝らないわけがない。とっさに「申し訳ございません」と発して、ペコリと頭を下げる姿を見せた。





 そうこうしているうちに先ほどのウェイトレスが注文の品を持ってやってきた。





 全員が座るテーブルにそれぞれオーダーしたモノを配膳していく。それから、泰史や光紗姫が頼んだものがテーブルの上に並べられ、チーム風雷房のオフ会は一応の形をなした。



「では、揃ったところで、コミュニティオーナーである私から一言」



 全員にドリンクが行き渡ったのを見て、祐鶴が向かいの席で立ち上がる。

 なにをするかと思えば、一息払って緊張を和らげようとしている。友紘は、祐鶴のそんな姿にこれからの時間を楽しくしようとしていることを感じ取った。



「え~今日はお集まりいただき感謝します」


「なあ、委員長。堅苦しいから、早く始めようぜ」


「竹中。いまいいところだから黙ってろ」


「……へいへい」


「オホンッ、まあとにかくだ。竹中もせかしてるので手短に済ませるが、今日はゆっくりとエタファン談義に花を咲かせたうえで、大いに楽しんで帰ってくれ――では、乾杯っ!」


「「「「かんぱぁ~~いっ!!」」」」



 祐鶴の音頭に合わせて、全員の声が一斉に上がる。

 それから、各員が思い思いの話を始めた。エタファンのこと、リアルでの生活のこと、趣味のこと――話したいことは山ほどある。


 そんな雰囲気でオフ会は進んでいく。


 そんな中、通路側に立っていた勝治郎が小声で颯夏に話しかけていることに気付いた。



「お嬢様。わたくしは一度お屋敷に戻りますので、終わりましたらケータイにご連絡ください」


「わかったわ。終わったら、連絡するから早めに来てちょうだい」


「かしこまりました」



 そんな話を聞いていると、やはり颯夏がお嬢様であることを思い出させられる。

 友紘はゲームをやりだした頃の颯夏のことを思い出しながら、おもわず2人の会話に聞き入った。



「あの、槻谷君?」



 しかし、あまりに聞き入りすぎていたため、颯夏が話しかけていることにも気づけなかった。慌てて返事をしたものの、かえって不審がられてしまっている。

 勝治郎もいつのまにかいなくなっており、2人の間は「なんとなく」気まずくなっていた。


 どうにか取り繕うと用件を訊ねる。



「お、お、俺になにか用?」


「いえ、用事ってほどではないのですが……」


「じゃあなに?」


「前にも聞いたことがあったと思うのですが、その昔わたくしと会ったことはありませんか?」


「山吹さんと……?」



 唐突な質問に戸惑いを見せる。



(そんなことあったっけ? ってか、なんで山吹さんはそんなこと言い出したんだろ)



 友紘は浮かび上がった疑問に頭を巡らせてみたが、颯夏との接点らしい接点は浮かんでこなかった。



「う~ん、ちょっと思い当たるフシはないなぁ~」


「そうですか。やはり、わたくしの勘違いでしたわ」


「でも、どうしてそんなこと言い出したワケ?」


「……それは……」


「あ、言いたくなかったら別にいいんだよ。なんか無理強いして聞いてるみたいだし」


「いえ、そういうことではなくて……。その方がわたくしに生き方を教えてくださったので」


「山吹さんの生き方?」



 そう問うた途端、颯夏が伏し目がちになった。

 なにか昔のことを思い出したのだろう。

 颯夏の顔は、どこか遠くを見ながら懐かしんでいるようにも思える。友紘はそんな顔を見て、颯夏の言うとおりどこかで会ったかもしれないと古い記憶をたどり始めた。

 だが、どんなに考えても颯夏のような愛らしい少女の記憶はない。


 友紘はもう一度詳しい話を聞こうと喉の奥から声を発そうとした。



「――颯夏?」



 ところが友紘よりも早く颯夏に話しかける人物が現れる。

 おかげで颯夏から詳しい話を聞くタイミングを逸してしまう。そのことにムッとしながらも、友紘はその人物の顔を見た。

 すると、驚いたことに颯夏によく似た女性が通路側に立っていた。顔立ちは、颯夏をそのまま大人にしたようで、とても色香のある女性だった。

 どうやら、女性の後ろを通り過ぎていく女子大生とおぼしき集団と同じグループらしい。



「千春、どうしたの?」



 と、奥の方にいた別の女性から声を掛けられたことからも、女性が大学生グループの一員であることは間違いなかった。

 女性は颯夏の顔を覗き見て、不機嫌そうな顔を浮かべた。



(それにしても、山吹さんにスゴく似てるなぁ~)



 友紘は、その感想から今度は颯夏の方を向いて、顔を見比べてみた――が、とっさに見たその顔に先ほどのなにかを懐かしむような表情が無いことに気付かされる。

 それどころか、見る見るうちに顔色がスーッと青ざめていく。


 途端に颯夏が大きく口を開けて、



「……お姉……様……」



 とつぶやいていた。



 いったいどうしたというのだろう?

 友紘はその意味もわからず、2人のやりとりをただ茫然と見ていた。





 

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