プロローグ
西暦2513年
ポルトガルで起きた財政破綻により、ヨーロッパ全体がリーマンショック以来の大不況に陥った。
ヨーロッパ全体で失業率が20%を上回り、失業者で溢れかえった。
治安は急激に悪化し、警察も財政破綻の影響でほとんど機能しておらず、犯罪が多発した。
だが、一つだけ不況の影響を受けず、国家としてしっかりと機能している場所があった。
バチカン市国である。
教皇の絶対的な力と世界中からの支援、厚い信仰、様々な要因が組み合わさり、奇跡的にバチカンは生き残っていた。
それでもバチカンへのヨーロッパ各国の批判、強い風当たりなどで苦しめられていた。
神は本当にいるのだろうか。
いるのならなぜ我らを助けてはくれないのか…
西暦2113年
世の中は歓喜に満ち溢れていた。
日本人物理学者の斎藤秀樹がアインシュタインの相対性理論が覆し、質量があるものでも条件を満たせば光速を越すことができるということを発表した。
ただし、光速下での時間の進み方はアインシュタインと同じ考え。
つまり光速では時間は流れないというものだ。
これにより未来にのみ行けるタイムマシーンが完成する見通しが立った。
「やったな、ちひろ。これで長年の夢が叶うぞ!!」
物理学者斎藤秀樹は言った。
「うん!!これで未来にいけるんだね!!ありがとう、パパ!!」
斎藤の娘、ちひろは言った。
ちひろは父譲りの天才的な頭脳で現代の技術を全て理解しつくし、もっと卓越した技術を学びたいという強い願望があった。
実際このアインシュタインの理論を覆した父を支え続け、様々なアドバイスを出してきたのはちひろだった。
しかもちひろはまだ14歳、中学生だった。
父はその天才的な頭脳を最大限に生かすため、娘を未来へ行かすことにしたのだ。
「ちひろ、タイムマシーンの完成まであと少しだ。しっかり準備しとくんだ。」
「わかってるよ、向こうに1年ぐらい滞在してまた戻ってくるから。」
父が千尋を未来へ行かせるのを決めたもうひとつの理由は完全なタイムマシーンの完成が未来ではすでに起こっていると考えたからだ。
これを使えば再び現代に帰れるというわけだ。
「じゃあ、もう寝るね。おやすみ、お父さん」
ちひろはそう言って研究室を出た。
一方西暦2513年
ついにバチカンも財政破綻の影響を受けてきた。
これを食い止めるため、バチカンは国を閉鎖した。
いわゆる「鎖国」である。
神などいない。
我らを救ってはくれない。
人々は絶望していた。
食料、衣服は全て国内でまかなうことはできず、日本、アメリカ、中国などのヨーロッパから離れた先進国からヨーロッパ各国には極秘に寄付を受けていた。
その寄付も不況の影響で徐々に減っていっていた。
電力も不足し始め、もう電灯をつける電力もなかった・
バチカン政府は農地の拡大を行い、なんとか食傷不足は起こっていなかった。
だが依然として状況は悪化する一方。
ついには電力もなくなった。
必要最低限のものすらなくなり、世界は破滅に向かう一方だった。
西暦2113年
ついにタイムマシーンが完成した。
一人乗りのもので、地下に作られた円形のトンネルで加速し、光速に達した後、特殊な操作を行うことで指定した時期に移動できるというものだ。
行き先は400年後のバチカン。
なぜバチカンかというと未来において最も技術が発達していると考えられるからだ。
ちひろはイタリア語、ラテン語、英語など約30カ国後をしゃべれる。
つまりどこでも行けるわけだ。
研究室からタイムマシーンまでの距離を父と娘は無言で歩いていく。
タイムマシーンがある場所に着くと一言
「いってくるね」
「ああ。」
という会話を交わし、ちひろはタイムマシーンに乗った。
父と技師が操作を行う。
「タイムトラベル開始まであと10秒」
と機械が伝える。
「3…2…1…」
0のカウントと同時にちひろの体が後ろに引っ張られた。
とてつもないGが体にのしかかる。
どんどん意識が遠のいていく。
「タイムトラベル完了まで三秒」
とかすかに電子音が聞こえる。
意識がブラックアウトすると同時に体にさらなる衝撃が加わった。




