第4話
「……」
「どうかしましたか?」
理音は深月の1つ下の弟である『弓永明斗』が自分を理事長と呼んだ事に眉間にしわを寄せると理音の反応を不思議に思った明斗は首を傾げる。
「あれだよ。明斗、理音は自分を理事長扱いする人間になれてないから戸惑ってるんだよ」
「あのなぁ。姉貴がおかしいんだろ。吉井先輩達は理事長先生の幼なじみだからそれが普通だとしても、姉貴は違うだろ」
深月は理音が明斗の言葉で戸惑っていると答えるが、明斗は深月の言葉におかしな事を言うなと言いたげに大きく肩を落とした。
「いや、まったく、深月の言う通りなんだが」
「えーと、確かにみあちゃんがところ構わず、理音くんを呼ぶから、理音くんを理事長ではなく、生徒だと思っている生徒もたくさんいますしね。式典関係も理音くんは無駄だって挨拶とかしないですし」
「理音が作った自由な校風の賜物だね。うんうん。みんなが仲が良いのは良い事だよね」
しかし、理音は深月の言う通りだと答えると秋菜は苦笑いを浮かべ、深月は楽しそうに笑う。
「自由な校風じゃないだろ!! 分別をわきまえろ!!」
「明斗は細かいな。そんな事を気にしすぎると禿げるよ。ボクは弟が禿げるのはあまり嬉しくないな」
「姉気が大雑把過ぎるんだよ!!」
明斗は眉間に青筋を浮かべて深月を怒鳴り散らすが、怒られているはずの深月はさらに明斗の怒りに油を注ぐ。
「みあ、秋菜、どうして、明斗がずれてると思えるんだろうな?」
「うーん。不思議だね」
「えーと、どうしてでしょうか?」
この姉弟のケンカはすでに桜華学園の名物にもなっているようで理音達だけではなく、廊下を歩いている生徒達も誰も気にする事はない。
「そう言えば、理音くん、時間は良いんですか? 研究棟に行くと言ってましたけど」
「ん? そうだったな。秋菜、みあ、今日も帰りは遅くなると思うから、怜生の事を任せるぞ」
「うん。わかってるよ」
2人の姉弟のケンカを気にする事なく、秋菜は理音に研究室に行かなくては良いのかと聞くと理音はこの状況にすっかり流されていた事を思い出したようで苦笑いを浮かべると弟の『前田怜生』の事を2人に頼み、研究棟に向かって足早に歩き出す。
「それじゃあ、怜生くんを迎えに行こうか?」
「そうだね。だけど、おじさんもおばさんも理音くんがこんなに稼いでるのにどうして、お仕事を辞めないのかな?」
「2人にも考える事があるんじゃないでしょうか? 理音くんにはしてあげられなかった事が多いから、怜生くんの学費とかは自分達で出すって言ってますし、おじさんは前に親としての意地って笑ってましたけど」
深秋と秋菜は並んで歩き出すと深秋はふと思った前田家の疑問を口に出すが、秋菜は同じ疑問を以前に抱き、理音の両親である『前田海理』と『前田怜奈』に聞いたようで苦笑いを浮かべた。
「そっか。おじさんとおばさんに考えがあるなら、良いや」
「そうですか?」
「うん。ボク、あんまり難しい事は分らないしね」
「わからないじゃなくて、もう少し理解しようとしてください」
深秋は秋菜の言葉に納得したと頷くが、あまり深くは考えていないようで秋菜は深秋の言葉に大きく肩を落とす。




