第1話
『私立桜華学園』
1人の天才が気まぐれで作り上げた学園であり、研究機関である。
一般的な高等学校の教育カリキュラムの他、桜華学園独自の教育カリキュラムや生徒の独自の発想を研究できる施設を充実させる事で生徒自身の向上心を求めた。
天才の持つ名前の力に多くの国や企業が出資し、莫大なスポンサー料が集まり、生徒には質の良い教育を与えられ、向上心を持った生徒はその期待に応えて行く。
桜華学園設立7年目、桜華学園の卒業生が大学や社会で頭角を表し始めた頃、この物語は紡がれて行く。
(……まぁ、第一期卒業生の評価は上々か?)
桜華学園の一室で1人の少年が机の上に並べられた資料を見て、小さく口元を緩ませた。
少年の名前は『前田理音』。小学校の入学前に優秀すぎる頭を行かすために日本を飛び出し、多くの研究で名前をとどろかせた正真正銘の天才であり、この桜華学園の最高権力者である。
(後は……『浅倉奏』か?)
卒業生の評価レポートを閉じると次の資料に目を移し、その中で1人の転入生徒の『浅倉奏』と言う男子生徒で目を止めた。
桜華学園はその特異な体質から多い月には数十人の転入手続きが行われる。転入は親の転勤と言った普通の理由の他に先天的に持った才能を集めるために理音が転入を進めるケースがある。
(けた外れの才能は周囲に不協和音を生む。俺のように理解してくれる人間がそばにいてくれれば別だが……少なくとも彼の周りにはそんな人間は見つからなかった)
理音と同様に大きすぎる才能は持たざる者から見れば異質であり、排除の対象になりうるため、理音が自分の過去とその者達を重ねあわせた上での行動であり、理音は奏の友人関係や対人関係、家族関係をまとめた資料を見て眉間にしわを寄せた。
(彼がこの学園で何かを見つけてくれれば良いんだが……俺が考える事ではないか。自分の先を決めるのは自分でしかないのだからな)
理音は奏と自分を重ねてしまったようで、自分が感傷的になった事がおかしかったのか小さく口元を緩ませると机の上に乗せてある置時計から、小さな音が鳴り響く。
(ん? もうこんな時間か? 予想した通りになっていればいいんだが、まぁ、研究室に行ってみるか。それにこちらで補助をしないといけない部分もあるだろうしな)
理音はアラームを止め、時間を確認すると自分の研究が気になるようで資料を閉じ、研究室に向かおうと廊下に出た。
「理音くん♪」
「み、みあちゃん、止まってください!? あ、危ないです!? り、理音くん、よけてください!?」
「ごふっ!?」
理音が廊下に出た瞬間をまるで見計らったかのように1人の女子生徒を引きずりながらも勢いよく、1つの物体が一直線に理音に向かってきて、彼を吹き飛ばす。
「あれ? 理音くん?」
「り、理音くん、大丈夫ですか? け、けがはないですか?」
理音を吹き飛ばした物体は桜華学園の女子生徒であり、抱きついたはずの理音が腕の中にいないため、首を傾げると引きずられていた女子生徒は慌てて吹き飛ばされた理音に駆け寄る。




