表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界の通貨が日本円!? スキル【100円ショップ】をもらった平凡大学生、100均グッズと弓の戦術で最強美少女たちと無双&経済支配!』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/49

EP 15

極秘のWin-Win同盟と、ドワーフの隠れ蓑

ひとしきり腹を抱えて笑った後、ギルドマスター・ヴォルフの顔からスッと笑みが消えた。

歴戦のA級冒険者が放つ、氷のように冷たく鋭い気配。執務室の空気が再び重く沈み込む。

「タロウ、お前さんの言う通りだ。こりゃあ大変な事だぞ」

ヴォルフはデスクの上の『チャッカマン』と『タッパー』を、まるで爆発物でも扱うかのように慎重に指先で転がした。

「魔力消費ゼロで確実に火が出る道具。そして、軽くて絶対に水や匂いを漏らさない謎の素材。……こんなもんが市場に出回れば、帝都の貴族やゴルド商会が血眼になって出所を探る。下手すりゃ、利権を巡って新たな争いの種、いや、戦争すら起きかねねぇ代物だ」

「……はい」

「そして、もしこの道具を生み出しているのが、闘気も魔法も使えないヒョロガキだとバレた瞬間……お前さんは一生、地下牢で鎖に繋がれてこれを出し続けるだけの道具(奴隷)になる。お前が恐れている『自動販売機化』ってやつだな。その頭の回転の速さ、サンガが手紙で異常だと書くわけだ」

ヴォルフは深く息を吐き、ドカリと革張りの椅子に腰を下ろした。

「だが、物は考えようだ」

隻眼の奥で、強か(したたか)な光が瞬く。

「冒険者ギルドは武力の集団だが、上層部(帝国の貴族)やゴルド商会に資金面で首根っこを掴まれてる部分もある。もし、うちのギルドがこの『画期的な魔導具』の独占販売権を握れれば……帝都でのギルドの発言力は跳ね上がる」

「……つまり、乗ってくれますか?」

「ああ。だが、そのためには完璧な『隠れ蓑』が必要だ」

ヴォルフはニヤリと笑い、デスクの引き出しから一枚の羊皮紙を取り出した。

「いいか、タロウ。帝都の連中を騙すなら、これしかない。……『冒険者ギルド専属の、偏屈で天才的なドワーフ職人が開発した新商品』だ」

「ドワーフ職人……!」

思わず膝を打った。

ドワーフ。ファンタジー世界において、常軌を逸した武具や魔導具を生み出す鍛冶のスペシャリストたち。彼らの中には、他の種族との交流を断ち、工房に引きこもって奇天烈な発明をする変わり者がごまんといる。

「姿は見せないが、ギルドにだけ商品を卸すドワーフがいる」。そう宣言してしまえば、このオーパーツの出所としてはこれ以上ないほど説得力がある。

「タロウ、お前がその道具をギルドに卸せ。ギルドがそれを『ドワーフの新発明』として、お抱えの商会ルートで高値で売り捌く。売上の3割をギルドが保護代(マネーロンダリング料)として貰い、残りの7割はお前さんに『円』で支払う。どうだ?」

僕のリスクはゼロになり、安全に現金が手に入る。

ギルドは強力な資金源と発言力を得る。

完璧な、Win-Winの同盟だ。

「……文句ありません。よろしくお願いします、ヴォルフさん」

僕が深く頭を下げると、ヴォルフは「ガッハッハ!」と再び豪快に笑い、僕の肩をバシバシと叩いた。

「よし、交渉成立だ! だがな、タロウ」

ヴォルフの声が一段低くなり、真剣な響きを帯びた。

「いくらドワーフを隠れ蓑にしても、ゴルド商会の密偵や、鼻の利く貴族どもはお前さん周辺を嗅ぎ回るかもしれねぇ。サンガの手紙にもあったが、お前は頭は切れるが腕っぷしが絶望的だ」

「……はい。ゴブリン一匹倒すのにも、罠と道具が必須なので」

「だろうな。そんなお前を守るとなれば、強くて、優しくて、何より金や権力で絶対に裏切らない、信頼がおける奴が四六時中張り付く必要がある」

ヴォルフは立ち上がり、執務室の奥にある控室の扉に向かって大声を張り上げた。

「となれば……おい! ライザ! 入ってきなさい!」

「はい、お父様」

扉が開き、涼やかな声と共に一人の少女が姿を現した。

燃えるような赤髪を後ろで一つに束ねた、息を呑むほどの美少女だった。

動きやすさを重視した軽装の鎧を纏い、腰には一振りの長剣をいている。その立ち姿には一切の隙がなく、洗練された刃物のような凛とした空気を纏っていた。

「ライザちゃん!?」

サリーが驚いたように声を上げる。

「久しぶりね、サリー。……相変わらず、泣き虫のままでしょうね?」

ライザと呼ばれた少女は、生真面目そうな顔を少しだけ綻ばせ、サリーに微かに微笑みかけた。二人は幼馴染らしい。

「タロウ。こいつは俺の娘のライザだ。年はサリーと同じ16だが、これでもギルドのBランクに片足を突っ込んでる天才剣士だ」

「……初めまして、佐藤太郎です」

僕が挨拶をすると、ライザは鋭い目で僕を上から下まで値踏みするように見つめ、小さく頷いた。

「ライザ。お前の次の任務だ」

ヴォルフは腕を組み、娘に向かって厳命を下した。

「このタロウを守れ。四六時中だ。分かるか? こいつの命を守る事は……大袈裟じゃなく、このマンルシア大陸の『世界を守る事』に等しい」

「……そんな! 娘さんを、何故僕の護衛なんかに!?」

ギルドマスターの愛娘を専属の護衛にするなど、いくらなんでも話が大きすぎる。僕が慌てて制止しようとしたが、ヴォルフは首を横に振った。

「タロウ、お前は自分の事がまだ完全に理解しきれていない。お前のスキルは、悪意を持った者の手に渡れば、世界を簡単にぶっ壊す。だからこそ、俺が一番信用できるライザをお前に預けるんだ」

父の重い言葉を受け、ライザは表情一つ変えずに一歩前に出た。

そして、僕の前にスッと片膝をつき、騎士のような美しい礼をとった。

「お父様の命により、本日からあなたの剣であり、盾となります。タロウ、あなたの背中は私が守るわ。……ただし」

ライザはスッと顔を上げ、真面目すぎる真っ直ぐな瞳で僕を射抜いた。

「あなたがもし、その力を悪用して弱きを虐げるような真似をすれば……その時は、私があなたを斬ります」

「……分かった。よろしく頼むよ、ライザ」

こうして、知略と100均トラップの僕、回復のサリー、そして神速の天才剣士ライザ。

帝都ルナミスの底辺から世界をひっくり返す、異端のパーティーがここに結成されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ