The Thorn in the Interaction ー 解答・解説および日本語訳
統計はどのように使われたのか
本章では、「The Thorn in the Interaction」に関する解答および日本語訳を掲載します。
物語の中で用いられている統計的手法は、派手な理論ではありません。
•KJ法による観察の整理
•主効果の検証(t検定)
•交互作用の可視化(interaction plot)
という、段階的な仮説検証の流れです。
まずKJ法で事実を構造化し、
次に単一要因の有無を確認し、
その後、要因同士の関係を探る。
統計は結論を作る道具ではありません。
問いを絞り込む道具です。
本章では、統計的手法がどの段階でどのように使われたのかに注目してください。
主効果が否定されたとき、
思考は次の層へ進みます。
そこに現れたのが交互作用でした。
⸻
解答
1.C
2.C
3.B
4.C
5.B
⸻
解説
Question 1
C が正解。
KJ法は統計的証明のための手法ではありません。
観察事項を整理し、仮説形成の土台を作るための思考整理法です。
⸻
Question 2
C が正解。
同一ロット内で分散が観察されたことが、
単純な湿度要因では説明できない可能性を示唆しました。
⸻
Question 3
B が正解。
線が交差するということは、
湿度の影響が納入時期によって変化していることを示します。
これは典型的な交互作用のパターンです。
⸻
Question 4
C が正解。
桜子は勝利を感じたのではなく、違和感と不安を覚えました。
交互作用は原因の単純化を許さないためです。
⸻
Question 5
B が正解。
問題は単なる規律違反ではなく、
特定条件の組み合わせでのみ発現している可能性があります。
⸻
本文日本語訳
交差する棘
KJ法で付箋を再整理した後、桜子はホワイトボードから一歩下がった。
現場での観察から生まれた数十枚の付箋は、仮のテーマごとにまとめられている。
湿度変動。
納入時期。
取扱いの差。
同一ロット内分散。
しかし、どのクラスターも決定的な説明を与えない。
「噛み合わないですね。」
西野が小さくつぶやく。
「t検定では保管条件単独の有意差は出なかった。
それでも、何かが不安定なのは確かです。」
桜子は「同一ロット内分散」と書かれた付箋に指を置いた。
「もし湿度が主因なら、
高湿度下では全ロットが一様に劣化するはずです。」
彼女は一瞬言葉を止める。
「でも、このメモは違う。
同じ材料でもばらつきが出ている。
湿度だけでは説明できない可能性がある。」
西野が眉を寄せる。
「つまり、湿度単独ではない、と?」
「断定はしません。でも……
納入時期と湿度が組み合わさったときに何かが起きている可能性は?」
静かな一致。
「交互作用、ですか。」
「仮説です。検証しましょう。」
⸻
西野はPCに向かった。
まず湿度を区分化する。
# Categorize humidity into levels
test_data$humidity_level <- cut(test_data$humidity,
breaks=c(0,50,70,100),
labels=c("Low","Medium","High"))
# Interaction plot
interaction.plot(test_data$humidity_level,
test_data$delivery_period,
test_data$defect_rate,
type="b",
col=c("blue","red"),
pch=c(1,19),
main="Humidity × Delivery Period Interaction")
エンターキーの音が室内に響く。
表示されたのは二本の線。
平行ではない。
交差している。
ほとんどの納入時期では、湿度上昇に伴う不良増加は緩やかだった。
しかし、特定の納入時期だけは、高湿度域に入った瞬間に不良率が急上昇している。
数学的に不可能ではない。
しかし、安定した材料挙動としては説明しにくい。
「これは一般的な保管問題ではありません。」
西野が言う。
「多くのロットは許容範囲内で耐えている。
でもこの期間の材料だけは挙動が変わる。」
グラフには鋭い折れが描かれていた。
桜子は勝利を感じなかった。
違和感だった。
「もしこれが事実なら、問題は規律ではなく特異性です。」
KJ法のクラスターを振り返る。
答えは出していない。
問いを浮かび上がらせただけだ。
「この納入期間の納品書を全部持ってきてください。」
⸻
締め
主効果では見えなかった構造が、
交互作用という視点から浮かび上がりました。
しかしそれは確信ではなく、仮説です。
構造は単純ではありません。
そして、単純でないこと自体が重要なのです。
交互作用という視点と国際的な現場
交互作用という概念は、日本のQC活動だけのものではありません。
アメリカや欧州の製造現場でも、
•Two-way ANOVA
•Interaction term in regression models
•DOE(Design of Experiments)
といった手法を通じて、要因間の相互影響を分析します。
特にアメリカでは、Demingの影響もあり、
「単一要因で問題を断定しない」
という姿勢が広く共有されています。
湿度だけが原因、
納入時期だけが原因、
という単純化は避けられます。
むしろ、
「どの条件の組み合わせで不安定が発生するか」
が重視されます。
交差する線は、失敗ではありません。
構造の存在を示すサインです。
統計は犯人探しの道具ではなく、
システムを理解するための言語です。
桜子が見つめているのも、
個人ではなく構造です。
それは、日本でもアメリカでも変わりません。




