7話 魔素と牢獄忍者
特訓兼ねて路銀も稼いだ俺とリリン監督は東の町セノを目指すことにした。
やみくもに旅をしているワケじゃなくて、セノには元々冒険者活動をしていたリリンの仲間の『忍者職』の人が来ているらしい。
「落ち着きのないヤツやけど腕は立つで?」
「···」
メル・トラカの馬借で馬を借りたから魔除けの街道を馬に乗って進んでる。
馬の乗り方はロミの家で『馬型ゴーレム』を造ってもらって練習していたが、『リアル馬』は初めてだ。俺は緊張していた。
「タケル、そんな硬ぅならんでも。別に暴れ馬とちゃうで?」
「いや、そうだけど。慣れなくて。位置が高いよね、馬。すぐ草食べ出すし野生、て感じ···」
「またお嬢様みたいなこと言うてる〜」
「お嬢様じゃないがっ」
なんて言い合いながら進み、今日は途中の魔除けの野営地でキャンプすることになった。
井戸の水を馬に水をやり、離れた所にある簡単なトイレ(底に専用種のスライムがいる!)の仕切りが壊れてたから一応直し、東屋の備蓄庫の薪になりそうな木材を補充しておいて、俺達用にはもう乾燥してるのを使う。
炉に火を灯し、さぁ夕飯···とはならず、
「よっしゃっ、魔素使っとこか。お師匠に使い魔で言われ取ったからええ昇華書仕入れといたで? ふふん」
リリンは何冊が昇華書を自分の収納ポーチから取り出した。これは獲得した魔素を消費してレベルアップや個別のスキル修行とは別に1発でステータスを上げたりスキルを習得したりできる。がっ、
「···先、晩御飯食べようよ。疲れた」
めんどくさそうだし、今日はもう疲れた。
「すぐ済む! すぐ済む! お師匠からは現役の判断で良さそうなのを良きタイミングで、言われとるけど、タケルは隙だらけやからやれる時にちゃっちゃっとやっとった方が安全やっ」
「そんにもんか? 魔素かぁ···」
最初経験値と誤解したヤツ。普通、魔素は簡単には吸収できないらしいが、『勇者職』はレベルアップやスキル習得の速さに加え、魔素吸収効率も高い。
俺の獲得魔素は路銀稼ぎを経て『380』にまで膨らんでいた。
「お勧めは『魔力C+』『スタミナストックスキル』『魔素呼吸スキル』の3点や! どれも魔素が120くらいは必要やけど、たぶんイケるっ」
「スタミナストックと魔素呼吸、て?」
「そのまんまや。スタミナストックはスタミナを『数分全力』くらい1日1回だけストックできる。タケルはヘタレ癖あるから必須やろ?」
「···まぁね」
ヘタレの自覚はある。むしろヘタレのプロ。
「魔素呼吸は呼吸するだけで世界に薄くはある魔素を吸収するスキル。普通やったら気休めくらいのスキルやけど、勇者職の魔素吸収効率は異常やから相性バッチシや!」
「昇華書使っても覚えられなかったり、魔素が基準値よりたくさんいることもあるんだろ?」
「大丈夫大丈夫〜。やっとこやっとこ」
ノリ軽いけど、昇華書って高価なもんで、ロミの言い付けでもリリンは結構無理したはずだった。申し訳ないなぁ···
「ちょっと1回メモ見ていい?」
「出た! 神様メモ! それ自分励ます幻覚とちゃうの?」
「酷いこと言うっ」
怯みつつ、コソコソとメモを広げた。
『早く使うべし』
『気を遣って返って足手まといにになったら余計カッコ悪い』
『勇者は世界に責任あるゾ』
責任···最近思うんだけど、これ、ゲームじゃなくてやっぱ異世界っぽいなぁ。
「···わかった。やるよ」
「よっしゃっ」
俺は3冊の昇華書を使った。俺の魔素に反応し、昇華書が開いて記された魔法式が展開し、ステータスの向上とスキルの定着が達成された。
ステータスを表示してみると、確かに魔力がCからC+に向上し、スタミナストックと魔素呼吸のスキルを習得していた。
「バッチシだよ。リリン」
「いえ〜いっ」
ハイタッチをして、あとは夕飯を食べることになった。
ロミ、リリンと。世話になりっぱなしだ。
_____
というワケでセノの町に着いた。馬は城門近くの馬借に返す。
さすがに『町』だ。ベースは産業革命前夜くらいに見える文明だけど、わりと清潔で、温泉郷のネル・トラカより発達もしていて、人口が多い。
ここはストレートの人間族と、あとは小柄で童顔でやたら素早いフェザーフット族が目立つ町だった。
「···取り敢えず、薄暗い落ち着く路地を進もうか」
「なんでやねんっ。ちゃっちゃっとセノの冒険者ギルド行くで!」
「人、多いってっ、動悸がっ、目眩がっっ」
「スタミナスキル使っとき」
俺はリリン監督に腕を引っ張られながら、大通りの賑わいの中を進み、セノの町の冒険者ギルド支部に向かった。
リリンの仲間は暫くはセノを拠点にソロ活動をして待ってるらしい。ならギルドに聞くのが早いだろう、てことで。
だったんだが、
「うわ〜んっ、リリン! 箱の人! オイラ無実だよぉっ」
ギルドの牢屋に『チビッ子忍者』が入れられて号泣してる。『箱の人』と伝わってるのか···
彼がリリンの仲間、ミゼヤッポ。フェザーフット族の男子。年齢不詳に見える。
「え〜と、コイツ。ミゼヤッポ、なにやらかしたんです?」
ギルド職員に聞くリリン。
「強盗殺人放火です」
「「凶悪ぅ〜っっ?!」」
「冤罪だってぇーっ!!」
容疑者、ミゼヤッポの叫びが牢獄に木霊した···




