18話 川の社の攻防 後編
セノの時と違い、今度は魔物避けの闇系の結界が張られているから壁を抜いて俺達だけ先に入るってワケにもゆかない。
だからまず神官に補助魔法を受けた自警団と郷長達に先に突入してもらい、混乱に乗じてリリンのクィックと隠行箱で俺達はその後ろからこっそり侵入!
リバーサハギンの首魁、サハギンパトリアークとその補佐のサハギンシャーマンを仕留めるっ! といった段取りが採用された。
「これ、ちょっと楽しいですねっ」
「まぁね」
実戦で初の、俺達の十八番になってる『加速ダッシュ隠行箱』に入って興奮気味のユミィ。わかる。電車ごっこ感ある。
因みにワーフロッグ達には隠行箱スキルは『特別な潜行系魔法道具をギルドから提供された』と誤魔化してある。それなんだよ? て話だけど···
とにかく武装した魚人リバーサハギン達が慌てて出入り口に殺到しだす中、俺達は一気に奥にあるパトリアーク個体達の小屋を目指した。
「あれやっ!」
「すぐ出ず余裕ぶってるんだぞっ!」
そう、突入のワーフロッグ達は手練れだけど普通にやったら百数十体はいるリバーサハギン達に勝つのは厳しい。ましてパトリアーク個体とシャーマンはより手強いはずだ。
勝負にならないっ。だがそこに勝機はある、はず!
俺達は見張りのリバーサハギン4体をスルーして、戸もなかった中に滑り込んだ。途端っ、
バチィっ!!
いきなり衝撃が走って隠行箱が揺らいだっ。床に解除系? と魔法陣が隠されていた!
「魔法トラップ! 探知ミスだぞっ、ごめん!!」
「ウォータッ!」
中の大柄なサハギンパトリアークの近くにいたサハギンシャーマンが水のギロチンを放ってきたっ。
俺達は慌てて避けたが、見張り4体も飛んできて、サハギンパトリアークも槍を手に構えだしたっ。シャーマンも第2射の体勢! ヤバい挟まれてるっ。
「ふぅっ」
ここで単純に応戦すると泥仕合になりそうだ。そしてコレ、スポーツじゃない。
···ここならワーフロッグ達の視線はなく、少なくとも現状、サハギンは逮捕して裁判が成立する相手でもない。
フルパワーで、やってみるか? 強箱っっ!!
「鉄箱ぉっ! 反射箱ぉーーっ!!!」
パトリアーク、シャーマン、見張り4体を全て最大の多重鉄箱で覆いっ、用心棒戦の反省も踏まえ即座に最大の反射を付与して炸裂させた!!
ドシュッ!!!!
パトリアーク個体以外は良い子に見せられない形で箱内がクラッシュし、パトリアーク個体にも深刻なダメージを与え、武器も破壊した。
「凄いパワーですっっ」
「偽装無しやと凄いな自分〜っ」
「でもグロいんだぞ···」
呼吸が乱れ、魔力切れの俺は即、マナストックとスタミナストックを使い回復した。
「···ふぅ、衛兵に突き出しても意味無いんだろ? さっさと手下達と退散してくれないか?」
一応言ってみたんだが、
「退散? ハッ。暗黒の神々よっ! 我が身を捧げるっ、神命を遂げる力を!!」
パトリアーク個体から闇の力が溢れ、爆発的に膨れ上がりだしたっ。自爆かとっ? 俺達は一目散に小屋の外に逃げたが、炸裂した小屋から現れたのは浮遊する巨大怪魚だった。
「社は滅しっ、ジリタンダ川は穢しっ、力高めしこの地の水勢の魔の眷属を『魔王様』に捧げる!! ハッハッハッ!!!」
パトリアーク個体だった巨大怪魚は社の方に飛び去った。魔王、やっぱりいるかぁ···
「「「ええ〜〜〜っ???」」」
どーしろと?? 俺達が唖然としていると、
「タケル殿! この者達を使うゲコっ!」
交戦中の郷長が水の力を感じる宝玉を使って4体の水の馬、ケルピーを召喚した。
ケルピー達は問答無用に俺達を掬うように背に乗せ、超高速で巨大怪魚を追跡しだした。
「「「おおおっ??」」」
戸惑いまくりだが林を抜け、湿地に巨木が生えた水の魔力の強いエリアに入り、苔生した石の社が見えた当たりで追い付いたっ!
「やるっきゃ、やで?! サンダーっ!」
「補助魔法はまだ有効ですっ、プラスヒール!」
リリンが電撃で足止めし、ユミィは全員と全速できたケルピー達も回復させたっ。
「タケルっ、行くんだぞっ? とりゃーすっ」
旋風手裏剣スキルで怯ませるミゼヤッポ! 俺も腹を括ったっ。
ケルピーは意思がわかるようで念じただけで水飛沫を上げて飛んでくれる。
「ハンド! 反射箱っ、トーチ!」
収納ポーチの小石を操り、箱で撃ち出して牽制しながら正面に回る。サーベルには火を灯したっ。
「ボォァッ!!」
喰い付いてきたっ。鉄箱で受け止めるっっ。
「ケルピー離れろっ!」
ケルピーを逃がし押されて木々とサンドイッチされないよう背中にも鉄箱を展開するっ。
そのまま高速でバキバキと湿地の木々を砕いて押されてゆくっ! 守備魔法と充填魔除けはすぐ破られたっ、前後の鉄箱は潰された側から生成させてる。ストック無しっ、魔力の残量よ!!
「ハンド! 反射箱っ!」
念力で側面に燃えるサーベルを飛ばし、箱で撃ち出して片目に突き刺し焼くっ。
「がぁっ?!」
突進が止まった!
「圧縮ぅっっ」
怪魚を押し留め多重鉄箱は指の爪くらいに縮め、一面だけを反射箱に変えて一気に斜め上に撃ちだした!!
ザンッッッ!!!
顔面から後頭部まで貫通点とその周囲を吹き飛ばされて、怪魚は湿地へと落下していった···
「タケル〜っ!」
「タケルさーん!」
「生きてるかぁー?!」
仲間達がケルピーと向かってきているが、さすがに疲れ果てた俺は休眠箱で自分を小さく覆って体育座りで回復しながら浮遊しだした。
あ、なんかこの体勢落ち着くな、と···




