第二十二章
だがルナに乱れはなかった。
「その必要はありません」そして三人の少年に語りかける。
「やめておいた方が良いですよ。私は意外と強いです」
次の瞬間、コームとゲルトが左右から飛びかかって来た。
ルナは素早く後退すると、コームの足を払い、ゲルトの腕を掴んで引き倒す。
ブリスが邪魔をしようとするダンを突き飛ばし、ナイフを構え突進するから、手首をつかみ、関節を決めて捻り挙げた。
「いてててて」
ブリスが悲鳴を上げ、倒れているコームとゲルトが唖然と彼女を見上げた。
「な、何だよ、お前?」
「言ったはずです。私は強いですと。このまま腕を折りましょうか?」
「待ってくれ」ブリスが喚く。
「そんなことをされたら、医者にかかれないオレの腕がおかしくなっちまう。軍隊に入れなくなる!」
ルナは息を吐き、告げた。
「では縫いぐるみを探して下さい。ウサギの、耳の長いものです……それを私が買います。でもそれ自体には大した価値はありません。あくまで気持ちの問題なんです。だから私が一番高く買いますし、私以外には必要ないものです」
「わかった、わかったって!」
ルナはブリスを少し突いて、離す。
ブリスは解放されると、掴まれていた腕をさすりながら、その場にしゃがみ込む。
他の二人も、悪さを咎められた子どものように俯き、戦意はないようだ。
「あんたすごいな! ルナ」
ダンが興奮気味に駆け寄った。
「ブリスはここらを仕切っているんだぜ。それを……すっごく強いんだな」
「淑女のたしなみです」
「いや、ルナほど強い奴はこの近辺にいないと思う。だってまるで動きが見えなかった」
「そんなことよりも、縫いぐるみを探しましょう」
「ああ、そうだな」
ルナは再びゴミを相手にし、ダンとブリス、コーム、ゲルトも手伝ってくれた。
三人はすっかり大人しくなっている。
ふと、ダンの動きに目がいく。
彼は、ゴミの中から本を見つけると、大事そうに、手に下げている袋に入れる。
「へっ」
ブリスがそれを見て笑った。
「どうせ字も読めないんだから勉強もないだろ」
「……いつか習うんだ」
ダンは宣言後に、口を真一文字に閉じる。
「ぼくたちにそんな機会はないよ」
コームが呆れたように指摘する。
「そうそ、それにお前の親父は名誉なきものだ。誰も相手にしてくれるもんか」
「父ちゃんの悪口は言うな!」
ゲルトに対し、ダンは怒鳴る。
場に再び、きな臭い空気が立ちこめる。
ダンとゲルトの間が、一色触発の雰囲気になっているのだ。
「口論している暇はありません」
仕方なくルナが介入すると、あっけなく二人の表情は緩み、皆ゴミの探索に戻る。




