表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

嗚呼、さよならボス

作者: まこも

なんということでしょう。

思ってたのと違う。

おかしい。

あれ?こんな簡単でいいのですか?

もっと、がんがんどんどん、めきめき、大工仕事のように削ったりするのかと思ってましたが。

いやそれを期待していたわけではないけれど、あまりにもあっけないボスとの別れ。

「はい、終わりです。しばらくは出血すると思いますから綿を噛んでおいてくださいね」

衛生士さんに促され、ゆっくりと起き上がる。

「大丈夫ですか?気分が悪いとかないです?」

あまりにも私が呆けた顔をしていたからだろうか、彼女は心配そうに尋ねてきた。

「あい」

それしか言えなかった。

綿が詰まっているし、麻酔で口がうまく動かせない。

「帰ったら痛み止めをのんでおいてくださいね。お疲れさまでした」

「あい」

本当はボスと対面したかったけど、おそらく砕けてボロボロの姿になっていたであろう。

うまく喋れないし、ご対面は諦めて帰路についた。


歯医者から家まで車で約20分くらいかかるけど、何とか痛みも出ず無事に帰宅できた。

帰る早々洗面所に行き、おもむろに口を開いてみた。

わ!そこには真っ赤に染まった綿が。

グロい!!!!!

手をよく洗い、念のためアルコール消毒もし、綿を摘んで捨てる。

真っ赤な綿、グロい!!!!!

そして、再び口を開き、鏡をのぞき込む。

あれ?思ってたのと違うぞ。

私はもっと大きな穴が開いていると思ってた。

おそるおそる舌で歯茎をなぞってみる。

ん?穴はあるけどそんなでかい穴ではないのか…そうか、ボスはもういないのか。

これで化膿することもなくなるんだな。そうか。

なんだか嬉しいような寂しいような変な気持ち。

今日は柔らかいものを食べよう、薬ものんでおかねば。

なんだ、こんなに簡単に抜けるんならもっと早くに決断すればよかったな、拍子抜け。

いやいや、でも、この程度で済んだのだからヨシとしよう、頑張ったな私。

嗚呼、ボス、今までありがとう。

お世話になってたわけではないけど、むしろ私がお世話してやったんだけど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 それは上々ですね。私は真横に向かって生えてたので、地元の歯医者に拒否られまして……。紹介状片手に大きな病院に行って、2~3週間おきに1本ずつやっつけてきました。 結果:上は歯の形が残ってました(※…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ