目的
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「どこかない?」
朝、僕は旅のメンバーだけを集めた。
親衛隊長ザフィーリ・アバハビルト。
側用人ランドリーク。
元家庭教師のエルフ、サティオ・ヴァィゼ。
メイド長エレヴァとメイドのシア。
アマゾネスの傭兵隊サンブルート旅団副団長フファル。
猫耳族の獣人リンセル・クース。
アバハビルト公国元財務官僚アストト・リスティン。
この8人だ。
だが、ライムジーアの問いに応えようとする者は皆無だった。
沈黙が続く。
「なにか・・・」
こらえきれずに、もう一度問い掛けようとライムジーアが口を開く。
「何を求めるかによるのではないですか?」
ほぼ同時にアストトが声を上げた。
ライムジーアの言葉を遮ってしまったと気付いて、息を呑んで青ざめている。
ほっと息をついて、僕は穏やかな瞳を向けた。
少なくとも、自分ではそういうつもりの顔を向ける。
意見を言ってくれる部下は貴重だ。
そう思ったのだ。
メイドのエレヴァとシアは絶対に意見なんて言わないし、今も関心ごとはどのタイミングで参加者にお茶を配るかだけだろう。
親衛隊のザフィーリも話し合いでは「決定に従うのみ」の人間だ。
会議ではほぼ無用な人材になってしまう。
「つまり?」
「つまり。目的となりうる要素は・・・人、資源、食料、領地でしょう? 最終的な目的地をフェルォルトにお決めになったようですんで領地は除外するとしても大きく分けて三つが考えられる。そのどれを優先的に採るか、です」
なるほど、そういう意味か。
「そういうことなら、最優先は人だ。次に食料、そして資材だな」
考えるまでもない、と断言する。
「わかりました。で、人だとするとまた選択肢が出てきます。優秀な幹部候補。領民となりうる集団、打ち倒して捕らえ奴隷とするべき悪党ども、と。そのどれか、と聞いているわけです」
「はっきりした目処があって聞いているのかな?」
幹部候補、というからには特定の人物ということだ。
目処があって、なおかつ僕の事情を踏まえた上で紹介できる人間というのがいるのなら、ぜひ会ってみたい。
「・・・必ず、とは言えません。『産まれてきちゃった皇子』にお仕えすることになるとは思いませんでしたので、その人物が皇子をどう思っているかはよくわかりません」
そんなところだろうな。
一歩間違えれば、帝国中央へ提訴されて帝国軍が捕らえに来る事態を招きかねない。
危険は冒せない。
どうせ危険を冒すのなら。
「領民候補にしよう」
「わかりました。なら、ここからさらに南に強制収容所があります」
さらり、と言われたので僕は最初その単語の意味を理解できなかった。
きょうせいしゅうようじょ?
嬌声襲幼女。
・・・鬼畜か。
強精収用女。
・・・あほか。
去勢手術所。
・・・やめて!
強制収容所。
・・・これだ!
「強制収容所?!」
意味が分かったところで叫んでしまった。
そんなものがあるとは思わなかった。
「大公が作ったものです。自分の支配圏内にいくつか持ってますよ」
眉一つ動かさず、アストトは平坦な声を出した。
「ちょっと待って、それ帝国の法にあからさまに違反していない?」
サティオが目を丸くして問い掛けた。
「ええ。違反です」
それがどうかしましたか? と言いたげにアストト。
思っていた以上に『先の』宰相閣下は領地を私物化しているようだ。
「なら、話しは早いね。大公閣下の支配地域を主な狩場とさせてもらおう。敵にする相手は少ない方がいいし、違法なことをしていたのなら帝都に訴えることもできないだろう。自分の悪事もバレてしまうからね」
「そういう、ことですな」
ランドリークが呆れた、という顔と声でつぶやく。
「基本戦略は、大公の支配域を移動しながら物資と人材を確保。小集団に分けてフエルォルトへと送り、さらに移動するというものになる」
「大公が黙って見ていてくれるでしょうか?」
疑問を口にしたのはザフィーリだ。
僕は小さく頷き、当然の不安であることを認める。
「攻撃を受ける可能性はもちろんある。強制収容所なんてものを作っているなら、かなりの数の私兵を持っているだろうからね」
「そうであったなら、どうなさいますか?」
緊張を顔にも声にも出さないように、慎重にザフィーリが聞いてくる。
「小集団での送り出しはやめて、一団となっての移動に替える。攻撃されても反撃が可能なようにね」
「まるっきり反乱になっちゃうわね」
楽しそうにサティオ。
「そうはならないさ。大公が生きている限り、帝都へ告げ口する者はいないだろう。大公が必死になって止めてくれる。自分の領地内、自分の手の届く範囲で事態の収拾を図りたいだろうから。そうじゃないと、彼も破滅するしかないんだし」
我ながらあくどい。
そう思って、ライムジーアは笑みを浮かべた。
強制収容所『北』という捻りもなにもない収容所を見つけたのは、クラテラタンの街を出て四日後のことだった。
ごく当たり前の顔で騎馬と馬車に分乗しての移動だ。
何度か荷車を引いた馬車とすれ違い、騎馬に追い抜かれながら街道を二日進み、途中で街道を逸れてなにもない道を進んだ。
一行の人数は80名ほどになっている。
ザフィーリの部下たちが集結し始めていた。周辺に散っていたのを呼び集め始めたのだ。もう周辺の情報収集とかはいいだろう。
獣人たちの方が得意そうでもあるし。
後方にはヴィルトとガゼットの1300もいるのだから。
そして一日半。
問題の強制収容所が目の前に現れた。
収容所は谷間に建てられている。
おかげで上から見下ろす形で、その全体を見ることができた。
「なるほど」
・・・強制収容所が必要だったわけだ。
僕は一目見て納得した。
そこには大きな溶鉱炉があった。
クラテラタンの街で採掘した鉄鉱石を製錬する工場が建っている。
大きな溶鉱炉があり、大勢の裸の男たちがたたらを踏んで空気を送り込んでいるのだ。
獣人族が多いようだが、人間族もいた。
獣人も人間もなく、女たちもたたらを踏んでいる。
多分、昼夜を問わず動かし続けているのだろう。鉄鉱石のある限り。
そして、なぜ四日も離れたところにこれがあるかと言えば、すぐそばに森があった。火を起こすのに木材が必要だったのだ。
燃料を運ぶか、鉄を運ぶかを秤にかけた結果、鉄を運んでくる方がいいという結論に達したのだ。たぶん、近くに川があるのもその理由の一つのはずだ。
鉄の精製には水も必要だから。
「たぶん、この下流にも収容所があるんだろうね」
川は水運にも使える。
特にこの世界のなら。
前世日本の河を「流れている」と表現するのなら、この世界の河は「溜まっている」と言わなくてはならない。
それだけ流れが緩やかなのだ。
前世日本ではかつて、外国から治水の専門家を招いて洪水防止をしようとしたのだが「治水の仕方も知らんのか」とバカにしていた専門家は洪水対策を任された河を見て頭を抱えたとか聞いたことがある。 「これは河ではない。滝だ」と。
僕にしてみれば「これは河じゃない。湖だ」だ。
差渡し600メートルはありそうな広大な川が流れている。
その大河に繋がる支流のそばに、その収容所は建っていた。
流れがほとんどない川は、上流から下流に船を動かすのに川の流れを利用できない半面、下流から上流に動かす場合でも苦労しなくていい。
天然の水路として、使用できるのだ。
ここで作ったものを船で下流に運び、どこかで金属加工が行われて、売るか蓄えるかするのだろう。
「よくおわかりで」
「単純な推測だよ」
アストトの感嘆に素っ気なく答えて、僕は強制収容所の全体をくまなく観察した。
どこをどう攻めるか。
収容所と溶鉱炉、大きな建物が並んでいる。
奥にあるのが収容所だろう。
寝るのと飯を食うのとができる最低限の設備しかなさそうだが。
700人はいそうだ。
周囲は木塀で囲われていて、歪な四角形の各角四カ所に見張り台。四隅と中央五カ所に見張りの詰め所がある。塀の外には見張り用のすこしまともそうな小屋も建っていた。
ざっと見回して30人。交代要員とかも含めると100人ぐらいだろうか。
「・・・失敗したな。大公を人質にして交渉すれば簡単だったんじゃないか?」
実は、あまりにも簡単に捕らえることができたので大公本人ではなく、執事とか管理人とかなのではないかと疑っていたのだが、シアが捕らえた老人は間違いなく大公だった。
アストトが証言している。
それでも、わずかながら影武者だったのではないだろうかという考えを、僕は捨てられていないが。
「最初はそうでしょうけど、すぐに追っ手を差し向けられますよ。あそこに残してきたから、獣人たちの一団に注意を向かせることができているんですから」
そう、アストトの言うとおりだ。大公をわざと生きたまま放置し、フェルォルトに向かう獣人たちには少なくとも数日間は無理に痕跡を消さないよう言って送り出した。
今ごろは救出された大公が獣人たちを追跡し始めていて、獣人たちは自分たちの痕跡を慎重に消して移動を続けているはずだ。
ここに大公を連れて来ていれば、ここの収容所は確実に無傷で手に入るが、代わりに、明日にでも大公の私兵に取り囲まれていただろう。
「うまくいかないな」
「どうしますか? 木塀があるようですが、あれは中から外へ逃げるのを防ぐためのもので外からの攻撃は想定されていません。攻め落とすのなら楽勝です」
ザフィーリが頼もしいことを言ってくれる。
「そうだろうな」
僕もその判断には賛成だ。
力攻めで落すのは簡単だと思える。
向こうは内乱の可能性は考えていても、外からの急襲にはまるっきり無防備だ。
たとえば、夜になるのを待ってまず外の小屋を制圧する。そして、交代のタイミングで各詰め所、各見張り所を落す。
たいした危険もなく勝利するだろう。
「だけど、気になることがあるんだ」
「気になること、ですか?」
見張りをしている者たちの装備と行動に、僕は違和感を覚えた。
「普通さ、こういうところで奴隷のごとく働かせている場合。怒声や罵声の一つぐらいありそうなのに、そう言うのが見られないだろ?」
「言われて見れば・・・かなり静かですね」
「そして見張りが持っている武器の質だ。なんというか、どこかの戦場から拾ってきました、というようなものを使っているだろ?」
小屋も粗末すぎるし、労働者たちに対して自分たちの優位性を押し付けようとしているような感じも全くない。
どこかやる気なさげにフラフラしているだけだ。
仕事に対する意欲が全く見られない。
「つまり?」
フファルが焦れたように聞いてくる。
「彼等もまた、無理やり働かされているんじゃないかな、と思ってね」
アストトによれば、この下流域にも収容所があるという話だ。
たとえばAという収容所から連れて来た人間にBの収容所を見張らせる。
Bから連れて行った者にCを。CのものにAを。こうすれば見張りをさせるために兵士を雇わなくても見張りをする人員を確保できる。
元々いた収容所にいる親子兄弟姉妹を人質に取っているわけだ。
なにかへまをしたら、家族を殺すぞと脅されている。としたら?
彼等のいた収容所の者たちも救出すると約束して取引ができないだろうか?
見張りもまた収容所の――別のであれ――人間ならば大公への忠誠心なんてないのではないだろうか?
だが、こちらの期待通りの低い忠誠心ならばいいが、万が一にも忠誠心が一定程度あったり、指揮官が融通の利かない頑固な人間だったり、悪い方にしか物事を考えられないような精神状態だったりすれば、みすみす奇襲の機会を捨てる結果になって全面的な戦いになるかもしれない。
「賭けだな。でもやってみる価値はあるんじゃないか?」
「そうですね・・・確かに価値はあるでしょう。問題はそれを誰が実行するか、ですね」
ザフィーリが言いたいことは、自分がやるわけにはいかない。ということだ。
なぜなら、目下僕の指揮下にある兵というのはすべてザフィーリの部下だからだ。いざ戦闘、となったとき。隊長のザフィーリが敵の手元にいるというのは問題がありすぎる。
僕が行くというのもだめだ。
僕の身柄という起死回生のチャンスを目の前にすれば、『先の』宰相閣下と『産まれてきちゃった皇子』を天秤にかけて『先の』宰相閣下を選ぶ確率がわずかではあるが上がる。
餌をちらつかせて誘うつもりが、腕ごと喰われるなんてことになりかねない。
となると・・・。
「私でしょうね、この面子なら」
ふわっと長い銀髪を掻き上げてサティオが前に出た。細長い耳をあえて髪から突き出させている。
エルフは公正にして公平、論理的。との評判が定着している種族だ。
交渉人を任せるなら最適の人選だろう。
いつものあの性格のことさえ頭になければ、ライムジーアも初めから彼女を指名していたはずだ。
「頼めるか?」
「もちろんよ、私の皇子様」
本気ともおふざけともとれる声音でそう言って、サティオは歩き出した。
自分の肩を僕の肩にこすりつけるようにして当てて。
甘い匂いが鼻腔をくすぐり、体温を感じる。
そのうえ、視線をねっとりと絡ませていった。
無駄に官能的な態度が、不安と情欲を煽ってくる。
・・・困ったものだ。
「交渉が決裂したら、間髪入れずに攻め込む。用意して」
「はっ!」
「任せて」
「はいにゃん」
ザフィーリが部下たちに配置を指示に走り、フファルが軽く体を動かしながら手近な詰め所をターゲットと狙いを定め、リンセルは小屋の窓に目を向けた。
まんいち、サティオが失敗したらリンセルが救助のため小屋に突入、ロロホルとザフィーリの部下数人が押し入る。フファルは小屋に近い詰め所を急襲して叩き、ザフィーリとシャハラル、ザフィーリの部下 たちが順次各詰め所に押し入る。
その用意が、手早く整えられた。
僕の警護はエレヴァとシアが担当。
アストトは荷物の見張り番、といったところだ。
準備万端整えて待つ。
結果として、準備は完全に無駄だった。
三十分ほどたったところで、小屋の中からサティオが出てきた。後ろからは武装を解除した者たちが付いてくる。
説得は成功したらしい。
「ご覧のとおりです。皇子様とともに逃亡生活を送るのも苦じゃないそうよ。ただ、彼等は味方するに際して一つだけ条件を付けて来てるわ」
ここで死ぬまで働かされるよりは、まだ希望があるからな。
「条件?」
「少なくともあと二つ、収容所を解放してくれること。彼等の話によると、そこの川沿いに金属加工の作業場が二つあるんですって。皇子様が予想したように、彼等はその二つに人質がいるそうなの」
まぁ、そんなところだろう。
予想できたことだ。
「もとよりそのつもりだった。君たちにも協力してもらいたいが、いいかな?」
サティオの後ろに並んでいる者たちに顔を向けて問い掛けると、決意を宿した視線を返してきて重々しく頷いて見せた。
「ただ、その前に問題がある」
見張りをさせられていた者たちの中の一人が、収容所を振り向いて声を潜めた。
「どんな問題だ?」
「『目』がいる。大公に雇われて俺たちを監視している人間だ。各見張り所に一人ずついる。あと、毎晩見回りがどこからか来て、『目』の報告を聞いていくのと『目』も交代する。こいつらを何とかしないと、状況がすぐさま他の収容所に知らされてしまう」
あー、やっぱり収容所の人間だけで済ませるほど間抜けではないか。24時間体制での監視もできなくなるし。
だが、四カ所に一人ずついるという『目』なら問題にはならない、と思う。
「ザフィーリ、部下たちに命じてその毎晩来る見回りというのの居場所を調べろ」
「はい! ・・・!?」
命令を受諾したザフィーリが怪訝な顔を横に向けた。
ザフィーリが敬礼しようとしたのを、リンセルの手が止めている。
「待つにゃん! 山や森での探索なら、ミャーたち獣人の方が得意だにゃん。任せてほしいにゃん」
ああ、なるほど。
それはそうかもしれない。
「よし。リンセル、ヴィルトたちと連絡を取って大公の手の者を補足殲滅しろ」
強制収容所の管理を任せられているものは、大公の信任を得ているものと予想できる。信頼はされていな くても、商売上の信用は得ているはずだ。
僕とは相容れない人間。
リスクを冒してまで、助けるものではない。
後顧の憂いを立つためにも、殲滅が最適解の選択だ。
「わかったにゃん。任せとくにゃん」
ぽんっと胸を叩いて、ピューっと走っていった。
「ザフィーリ。中の『目』を頼む。絶対に逃がすなよ」
「はい!」
ロロホルとシャハラル以下80名を率いて、収容所へと駆けこんでいった。
見張りだった者たちも慌てて後を追う。
事情を知らない者たちが混乱して、暴れ出すのを抑えなくてはならない。
「まぁ、収容所の制圧は問題なく片付くだろう」
「そうでしょうね。内部での暴動は予想していても、外からの攻撃なんて考慮していないでしょうから」
アストトがなにか感慨深げにうなずいた。
「そのあとのことについてだが、ここで精製された鉄はどうするんだ? いや、つまり、通常だと、という意味だけどね」
「あの建物の奥に、積み荷用の船があります」
居住用の建物を指差してアストト。
「確か、輸送船が五隻と曳舟が二十五隻用意されていたはずです。それで運びます。運び込みは常に正午と決まっています」
「・・・目撃者に、昼日中から後ろめたいことはしないだろう、そう思ってもらえるようにか?」
もしそうなら、大公にもまだ少しばかりの人間味が残っているということだが・・・。
「いいえ。労働者が馬鹿な真似をしてもすぐに気付けるようにです」
「そうか」
人間味なんてあるわけないか。
「五隻か・・・荷が鉄だからな」
容積は有り余るが、積載可能重量の限界で運べる量は少なくなる。
五隻くらいないと一日の生産に足りないのだろう。
「そのぐらい加工所もでかいってことだな。その船だけど、人間に換算すると、目いっぱい積むとして何人乗せられる?」
「そうですね・・・人をということですと、輸送船一隻に250といったところでしょう。曳舟と合わせて・・・1700というところではないかと思いますね。もちろん、ぎゅうぎゅうに・・・それこそ荷物として詰め込むなら3000から4000ぐらいまでは詰め込めるかもしれませんが」
3000か。
ヴィルトたちが1300、ザフィーリの部下が80、収容所の人員が800。
で、約2200。
余裕をもって全員乗れる計算だ。
その余裕分に金と食料を詰め込めば、全員引き連れての移動も可能、と。
「ここから一番近い収容所だけど、環境はここと同じだろうか?」
「環境というのが施設や警備についてなら。そうです。私が知る限り、収容所はすべて同じです。大公は収容所の他に『基地』と呼ぶものもいくつか持っていて、重要な物や金はそこに集めます。私兵に厳重に守らせてです」
「ここから船で行くのに時間はどのくらいかかる?」
「正確にはわかりませんが、聞いた話ですと日が昇ってから船を出しても、正午には十分間に合うそうです」
なるほど。
なら話は早い。
今夜のうちに収容所の人員を掌握。船に乗せる段取りと運び出す荷物を選別して明日の朝に出発。向うに着いたら、ヴィルトたちとともに一気に制圧、占拠する。
「収容所の制圧、完了です」
ザフィーリが駆けてきた。
やはり楽勝だったらしい。




