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花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第19話】

その日は祝宴だった。

早めに家に帰った義範は、たくさんの缶ビールと缶チューハイを買い込んで、鍵を厳重にかけて、暫しの喜びに耽った。まさか、あの大徳エンジニアリングに入社できたとはな。

広報の仕事は大したことなさそうだけど、腐らず懸命にやるだけだ。

まずはビールで。

あっという間に飲み干した義範。

ーーなんだか、静かすぎて・・・なんというか、張り合いがないが。

南波澄香ちゃんにメールしてみるか。やっぱやめた。

なんというかーーせめて今日だけはささやかに入社祝いをしたくて。二杯目のビールを空けた。なんだか、いい気分になってきた。魚屋で買った、アジの叩きが旨かった。あとは、中トロのいいところが控えている。

缶チューハイに切り換えた。最近は青リンゴ味がお気に入り。

マクドナルドのフライドポテトも、義範にとっては欠かせないおつまみのひとつ。

少し酔っ払ったかな。でもいつもみたく邪魔するやつもいないし、かわいい女の子を前にして、変に緊張することもない。

最高の酒だ。さてそろそろ、中トロを切り分けようかーーと、思ったその時!電話が鳴った。

なんと、南波澄香ちゃんからだった!

「もしもしーー」

「あ、もしもしーー私、だーれだ?」

「意地悪言わないでよーー」

「ふーんだ。あれからただの一度もTELなりメールなりしてくれないんだもん」

「ごめん、俺が悪かった。だから許してーー」

「うーん、分かった。許しちゃう♪」

「ありがとー!」

「・・・って、私、こんなんでいいのかしら?」

「そこは悩まないほうがいいよ」

「そうね。ここまでがご挨拶。本題はこれから。義範君はお酒、強いほうよね?」

「そうでもないよ」

「強・い・ほ・う・よ・ね・?」

「まあまあ、いける口です。はい」

「実はね、凄いお酒が入荷したの。『魔王』って焼酎、知ってる?」

「噂で聞いたことがあるくらいかな」

「それが、超レア物で、売り物にはしない予定なんだけどーーなんだけど、個人的に一本だけ、ゲットしましたぁ~!」

「うおー!何だかよくわからんが凄そうな話だ!」

「でね、あなたには入会金七十万円払ってもらってーー」

「こらこら・・・」

「だって、儲かりそうじゃん?」

「だからってーー」

「じっさいに飲んでもらうのは、千円の名もなき焼酎ーー」

「こらこらこら」

「うふふ、冗談よ」

「で、話ってのは・・・」

「言うまでもないでしょう。一緒に飲むのよ」

「そんな、高そうなお酒・・・とっといたほうがいいんじゃない?」

「さよなら」

澄香ちゃんは電話を切った。

義範は大層、残念がった。そこにTELが。澄香ちゃんだ。

「私がいいって言ってるんだから、いいの。それでねーー」

「何?ーー」

「せっかくだから、あなたの家で飲もうと思うのだけどーー住所、教えてくれないかな?」

義範は歓喜した!願い下げいや願ってもない提案に、素直に従った。従ったのだが・・・曰く付きの特効服やらTシャツなどを処分しなければ。義範は、衣類や抱き枕などを押し入れにぶちこんだ。これで大丈夫。ドンと来いだ。澄香ちゃん家からここまで、走って五分ほど。そんなに待つこともないだろう。

澄香ちゃんが来るまで、少々、ネットで調べることにした。幻の酒『魔王』について。

結果はもちろん、賛否両論だった。調べて後悔した。

何しろ、最近飲んだことのある人間がまるでいないのだ。これじゃあ、調べた意味がない。

あれから一時間・・・澄香ちゃんは来ない。

人を騙すような娘ではない。もしかしたら道中に何かあったか?

心配になった義範は、ラインを入れてみる。

「臥浄照探の術の会得、誠にめでたくつかまつる所存にございまする。さて、幻の酒と誉れだかい『魔王』とやらを献上つかまつる件、どのようになっておりまするか、教えてちょんまげーー」

すぐに返事が来た!

「臥浄照探の術、会得には苦労したでござる。さて、当方、少々長風呂をしておりまして、いまさっき、玄関を出たところでござる。暫しの間、待っていてほしいでござる♪ーー」


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