九百四十話 使い道
(内臓とかは売るとして、魔石や心臓、骨とかどうしようか……)
正直なところ、アラッドは武器に関しては迅罰に渦雷、羅刹と非常に充実している。
だが、闇属性の武器という物は持っておらず、武器市場全体で見ても中々に珍しい商品である。
「…………」
「何を迷ってるんだい、アラッド」
「……心臓をアッシュにやってもいいかと思ってな」
「…………相変わらず下の子たちに優しいね」
Bランクドラゴンの中でも、最上級と言っても良い程の実力を持つドラゴンの心臓をあげる。
当然、アラッドは弟から買い取ってもらおうとは思ってらず、タダで渡そうと考えていた。
「だろ。ただなぁ……ちょっと、危ない気がしてな」
「闇属性だからかい?」
「そうだ。モンスターの素材だから、危ないってのは当然の事かもしれないけど、ちょっとな」
「ふ~~~~ん……確かに、個人的にあのドラゴンが一杯食わせようと、何かしらの仕掛けを施してもおかしくないと思う」
「だろ…………仕方ない。売ってしまうか」
アラッドは脳も含めて売ることを決意した。
ただ、魔石と骨、肉、鱗の一部は自分で持っておくことにした。
「ふふ、やっぱり全部売らなかったんだね」
「何となくな。スティームも、黒色リザードマンの素材を全ては売らなかったんだろ」
「そうだね。今度、今回の素材を使って、新しく双剣を作ろうかと思って」
「ほぅ。万雷じゃあ、不満なのか?」
「まさか、そんな訳ないに決まってるでしょ」
からかうアラッドに、スティームは慌ててそんなことはないと告げる。
成体の雷獣の素材から作られた双剣、万雷。
ランク八の雷属性の双剣であり、赤雷と並ぶスティームの切り札。
不満などある筈がない。
ただ、武器の属性が戦況を左右することもある。
何より……直感という曖昧な理由ではあるが、スティームは黒色リザードマンの素材を使用すれば、元はCランクモンスターの素材であっても、名剣が生まれるという予感があった。
「ただ、アラッドみたいにもう少し、いくつかあっても良いかなと思ってさ」
「……確か、最後の最後に暗黒剣技を会得したんだったか」
「うん、そうだよ。あの瞬間……本当に、肝が冷えたよ」
「ふふ、だろうな」
「同じだね~、スティーム~~~。私も、何かしらの武器を造ってもらおうと思ったよ!!」
ガルーレも心臓やその他の内臓、脳などは売却するも、魔石や骨、牙などは残そうと思った。
「良いね。どんな武器を造るんだ?」
「それはねぇ……ちょっと迷い中。ほら、私の戦闘スタイル的に、多分スティームと同じで双剣が合うかな~~って思ったんだけど、今回の戦いで剛柔を使ってみて、ロングソードも悪くないな~~って思ったんだよね」
「あれを使ったのか。どうだった、使い心地は」
剛柔がどういった名剣なのか、ある程度解っているアラッドではあるが、実戦では使った事がないため、あまり細かいところまでは解っていない。
「なんかあれだね。少なくとも数年は使ってたんじゃないかってぐらい、上手く使えたって感じがした!」
「そうか……やっぱ、とんでもない名剣だな」
ガルーレはロングソードを全く使えない訳ではないが、それでも鍛錬を重ねた期間は一年にも満たない。
そんなガルーレが、数年は使ってたんじゃないかと思う程上手く使えた、という感覚は……決してガルーレの錯覚ではない。
「でもさ、私に何が足りないかって考えたら、重くて鋭い攻撃かな~って思ったんだよね」
「……そうだな。何が足りないかという問題であれば、それも一つだな」
攻撃面での問題を考えれば、重くて鋭い攻撃が足りないというガルーレの考えは間違っていなかった。
素早く重い攻撃というのは得意ではあるが、世の中……それだけでは討伐出来ない怪物も存在する。
「だから、戦斧でも造ってもらおうかなって思ってるんだ!」
「戦斧か……ガルーレのパワーなら、問題無く扱えるか」
「良いね、凄く良いと思うよ、ガルーレ」
ガルーレのアイデアに、二人とも大賛成であった。
「でしょでしょ! それにさ、私が戦ってた……ケルベロスみたいなオルトロス……亜種? って、火と雷だけじゃなくて、闇も使えたんだよね」
「闇の力を授かった個体であることを考えれば、当然と言えば当然か。でも、そうなれば……一個の武器に、三つの属性が付与されてもおかしくない、か」
「それは…………可能なのかな?」
「さぁ、どうだろうな。鍛冶は専門外だからな」
錬金術に関してはある程度可能性の有無について語ることが出来るが、鍛冶に関しては本当に専門外であるため、下手に語れない。
だが、可能性がないとも言えなかった。
「別のモンスターの素材を混ぜ合わせれば別の問題が起こると思うが、オルトロスは二つの頭を持ちながらも、一体のモンスターだ。そこにもう一つ頭が増え、属性が増えた。であれば……その三つの属性が一つに纏まることは、不可能じゃない……気がする」
「ふっふっふ、超楽しみになってきた! でも、鍛冶師の人に頼む前に、どの武器にするかだけはちゃんと決めとかないと」
数分後、フローレンスたちも素材をどうするか決定し、必要ない素材を売却……素材が特殊だったこともあり、ソルたちの手元にもそれ相応の金額が入ってくることになった。




