九百三十八話 対処は可能だった?
「アラッドが暴走、か……本当に想像したくないね」
「あっはっは!! 仮にアラッドが暴走してたら、どうなってたかしら?」
仮にアラッドが暴走してたらどうなっていたか。
そんな怖すぎるもしもの光景を想像してしまい、ソルたちはぶるりと震えた。
しかし、当のアラッドは大して気にしていなかった。
「そうなれば、フローレンスがウィリアスと精霊同化して、クロと一緒に無理やりにでも俺を止めてくれるだろ」
「あっ、そっか。そういう状態になれば、クロもアラッドに対して攻撃するのを躊躇ったりしないか」
「当然だろ。暴走すれば……どうなるのか解らないが、冷静さは失った状態になる筈だ。その状態であれば、フローレンスとクロがいれば問題無いだろ。それか、スティームが赤雷を死なない程度に浴びせてくれれば、痺れて動けなくなるだろ」
「死なない様に、か…………いきなりは難しいだろうから、やっぱりフローレンスさんとクロに任せることになりそうかな」
スティームにとって、赤雷というのは文字通り切り札であり、必殺技でもある。
だからこそ、これまで全力で放ち、時にはコントロールして放つことはあれど、手加減して使うことはなかった。
「クロ、というのはアラッドさんの従魔ですよね」
「えぇ、そうです。Aランクなので、戦闘力に関しては闇竜よりも上ですよ」
「……アラッドさんと比べた場合、どちらの方が上なのでしょうか」
なんとなく尋ねてしまった受付嬢。
しかし、その質問内容はスティームたちも少し気になっていた内容だった。
「それは……どうなんでしょうね。冒険者になる前はクロの確実に強かったと思いますけど、冒険者になってから俺も少しずつですが強くなってますからね」
アラッドは体質上、レベルが上がり辛い。
ただ、その代わり上がった際の伸び幅が大きく、基本的に強敵と戦うことが多いため、割と順調に伸びている。
「とにかく、俺が狂気に飲み込まれてたとしても、クロとフローレンスがいたので、割と大丈夫だったと思いますよ」
アラッドは、その二人に同時に襲いかかられたら、正直勝てないと本気で思っている。
ただ、言い換えれば暴走するアラッドを抑える為には、二人ほどの実力がある面子がいなければ抑えきれないということになる。
「アラッドさん、簡単に言いますけど、その間闇竜をどうするつもりですか」
「? そんなの、お前らが戦えば良いだけだろ。スティームにガルーレ、ヴァジュラにファルとお前らがいるなら、別に無理な相手ではないだろ」
数が多ければそれで良いのか?
結論……闇竜デネブであれば、問題はない。
風竜ストールやルストの様に細身のドラゴンではなく、どちらかと言えば鋼竜オーアルドラゴンに似ているため、攻撃が当たる範囲が広い。
そしてスティームたちだけではなく、ソルたちの攻撃力でもデネブに通じることは通じる。
渾身の一撃を与えたとしても致命傷には至らないが、それでも攻撃を食らい続ければ、闇で治せたとしても治すまでに血は流れる。
複数のマジックアイテムを装備していたデネブではあるが、造血の効果が付与されたマジックアイテムまでは装備していなかった。
「……簡単に言ってくれますね」
「なんだ、お前ら……自分たちでBランクドラゴンぐらい倒せないのに、フローレンスの傍にいようと思ってたのか?」
アラッドは…………一応、ルーナたちの事を煽ってるつもりはなかった。
ただ、アラッドはフローレンスであればウィリアスと共に挑めば、闇竜デネブを討伐出来ると思っていた。
相性次第では、Aランクモンスターにも手が届くと……今ではまだ無理でも、いずれは確実に手が届くと考えている。
そんなフローレンスの傍に居続ける為には、アラッドの言う通り、それぐらいの実力がなければ共に戦うことなど出来ない。
「っ! や、やってみせますよ」
「おぅ、ルーナの言う通りだ!!!」
「そうか。それじゃあ、それを目標に頑張ってくれ。っと、話を戻しますが闇竜戦、黒色モンスター戦に関する情報はこんなところですね。まだ、他に何か訊いておきたいところはありますか?」
「……やはり、今回の戦いはアラッドさんたち、フローレンス様たちだけで討伐するのは不可能だったでしょうか」
元々アラッドたちはアラッドたちで、フローレンスたちはフローレンスたちだけで闇竜に挑むつもりだった。
もし、そうなっていれば、どうだったか。
受付嬢としては、是非とも今後の為に訊いておきたかった。
「俺たちの場合は…………クロが参加していれば、無理ではなかった」
「逆を言うと、クロがいなかったら、危なかったよね」
「フローレンスさんがBランクの黒色モンスターを一体受け持っててくれたわけだし、確かにクロがいなかったらって考えると、結構危なかったよね」
クロがいなければ危険だった。
それがアラッドたちの感想。
「私たちだけであれば、不可能だったでしょう」
対して、フローレンスはあっさりと自分たちだけでは、闇竜デネブと従う黒色モンスターたちを討伐出来なかったと、素直に認めた。
そんなフローレンスの言葉に「そ、そんな事ありませんよ!!!」と異を唱える者はおらず……ただ、大なり小なり……全員悔しそうな表情を浮かべ、強く拳を握りしめていた。




