九百三十六話 秘めたる魅力的な魔力?
「……なんで、ドラゴンはわざわざ使いもしない物を、集めるんだろうな」
「ドラゴンの中には、人の姿になれるモンスターもいるんだ」
「それは、一応聞いたことがある。ただ、硬貨はどうするんだ? ドラゴンが、わざわざ人間世界の身分証までつくるのか?」
武器やマジックアイテム……そこまでなら、集める理由が解る。
だが、硬貨まで集める理由が解らないというソルの考えは、至極真っ当な意見だった。
「そこまでは知らない。ただ、金というのは……ドラゴンたちにとっても、魅力的な物に移るんだろう。人によっては、金には謎の魔力があると答える者もいるぐらいだからな」
本当に魔力が含まれている硬貨は存在しないが、それでも人によっては持っている考えに対し、スティームやフローレンスたちは解らなくもなく……ソルも金には世話になっているため、そこまで説明されれば解らなくもなかった。
「それじゃあ、とりあえず戻るか」
纏めてお宝を回収し、アラッドたちはクロたちの背に乗り、その日のうちに街へ戻った。
(……後にするのは、止めておくか)
冒険者ギルドも、早く結果を知りたいだろうと思っている……そんな組織の気持ちも考え、アラッドはさっさと飯を食って風呂入って寝たい気持ちを抑え、冒険者ギルドへと向かう。
「私たちも一緒に良いのですか?」
「ギルドも、上からの命令でお前たちが派遣されたことは把握してる筈だ。それなら、別にいても構わないだろ」
アラッドが問題無いと伝えたことで、ギルドの中にクロたちを除く全員で入った。
アラッドたちが騎士であるフローレンスたち交流があるという話は、ゴルドスで活動する冒険者たちの間でそれなりに広まっていた。
だが、共にギルドに入ってくるとなると、やはり時間が時間帯ということもあり、どうしても注目が集まってしまう。
「アラッドさん、皆様方。お疲れ様です、ご用件が……終了したという事で、よろしいでしょうか」
「えぇ、その通りです」
事情を知っている受付嬢が近寄り、フローレンスたちと共にギルドへ入って来た理由を聞き、ほっと一安心……といった表情をほんの一瞬だけ浮かべ、直ぐに仕事フェイスへと戻る。
「畏まりました。それでは、解体倉庫へご案内します」
元よりそのつもりであった為、アラッドたちは受付嬢の後ろに付いて行き、ロビーから消えていった。
「な、なんだったんだ?」
「ご用件、とか言ってたよな」
「言ってたわね。もしかして、ギルドから指名依頼を受けてたとか?」
「マジで? それは……まだちょっと早いんじゃねぇの?」
「アラッドって、貴族の令息なんでしょ。ギルドからなのか、それとも貴族からなのかは知らないけど、指名依頼を受けてもおかしくない信頼は既にあるんじゃないの?」
「…………それとは別に、なんであのフローレンスさんたちと一緒にギルドに入ってきたんだろうね」
「あの二人って仲良いんだっけ?」
「そうなん? 俺寧ろバチバチって聞いたぜ? ほら、アラッドって一瞬だけ学園に入学してたんだろ。その学園で? 行われたトーナメントの決勝戦でフローレンスを倒したらしいじゃん」
「バチバチに戦ったってだけでしょ。だからって、二人の仲が悪いことにはならないでしょ」
細かい事情を知らないルーキーたちはあれよこれよと会話で盛り上がるが、事情を知っており……ギルドから主にルーキーたちに忠告しておいてほしいことがあると伝えられていた中堅メンバーは、端っこの方で受付嬢と同じくほっと一安心していた。
「無事に戻って来た……と思って良いんだよな」
「アラッド君は他二人と共に行動していて、フローレンスさんは部下六名と共に行動していた。数は一つも減ってなさそうだから、無事に戻って来たと思って良いと思うよ」
「みたいね。でも、結構疲れてる感じだったよね…………やっぱ、噂通りあのモンスターを相手にしたのかしら」
「……だとしたら、昔からの噂は本当だったって事だな」
「ってなると、アラッド君にとってはそこまで難しくない戦いだったのかな」
「なんでだ?」
「なんでって、彼は過去にAランクのドラゴンゾンビを討伐したらしいじゃないか。であれば、Bランクのドラゴンが相手であれば……勿論油断出来ない相手だとは思うけど、そこまえ背負うリスクが大きい相手ではないんじゃないかな」
「おいおい、その噂まで本当だって言うのか?」
「ギリギリの勝利だったようだよ。僕も、余裕の勝利っていう話だったら、信じてないと思う。でも、彼が全てを出し切り、限界ギリギリの状態まで追い込んでようやく倒せた……っていう話なら、信じられる」
「俺も同じ意見だな。歳若いっていうのは間違いないが、既に俺たちと同じく覚悟を決めた眼を持っていた」
「………………まっ、あれか。なんにせよ、俺らじゃ出来ねぇ事をやってくれたんだ。ごちゃごちゃ言うのは野暮ってもんか」
「そういう事よ。素直に祝ってあげましょう」
事情を知っている中堅どころの冒険者たちは、どこかのタイミングでアラッドたちに飯を奢ろうと決めた。




