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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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九百三十三話 異質さが手に入れた力

ソルたちは、まずスティームの頭がおかしくなってしまったのかと、疑問を抱いた。


天を斬り裂くという比喩表現はあれど、彼女たちは実際に斬り裂く者を見たことがない。


「ふふ、信じられないって顔だね」


「い、いや、それは……けど」


「その気持ちは解る。僕も……正直、この眼で確かに見たけど、それでも思わず疑ってしまったよ。目の前で起きた光景が、本当なのかって」


結果的に、アラッドは天を裂いた……だけでおさまらず、雪……吹雪を、天候を斬り裂いた。


「でも、実際に斬ったんだ。さっき言った通り、その時のアラッドには、ハッキリと額の片側から角が生えていた」


「あっ、そういえばルストがさ、アラッドは普通の人間とは違うって言ってなかったっけ?」


「ガルーレ、ルストとは以前話してくれた風竜のことでしょうか」


「はい。その時、ルストがそんな事を言ってたんですよ。ねっ、スティーム」


「そうですね……風竜、ルストから見ても……アラッドは捕食者の様です」


ドラゴンという、生物ピラミッドの頂点に君臨する生物が、アラッドを捕食者として認めた。


その内容に、もうソルたちはどんな反応をすれば良いのか解らなかった。


「捕食者……」


「アラッドは前にもドラゴンを討伐してて、アラッドのお兄さんもソロで討伐して、お父さんも討伐してるから、いつか竜殺しの一族って呼ばれるかも、みたいな話もしたよね」


「ふふ、確かにそんな話もしたね。まだ会ってないご兄弟姉はいるけど、アッシュ君には間違いなくそれが出来るだけのセンスがある。後……シルフィーさんも、間違いなく可能性を秘めてる」


話を聞く限り、まず現段階で三人のドラゴンスレイヤーが存在し、解っているだけで後二人もそれが可能な子供がいる。


ソルたちも、フールという元副騎士団長の男が、ほぼ一人でAランクドラゴンの暴風竜ボレアスを討伐したという功績は知っていた。

ただ……話を聞いてると、現当主だけがぶっ飛んでいるのではないと……その一族が有する戦力に驚きを隠せない。


「話を戻すけど、あの姿に関しては……僕も、本当に良く解ってないんですよ。狂化のスキルを極めればあぁなるのか、それともまた別の要素が……アラッドが闇竜に語った通り、祖先にもしかして鬼人族の人がいたのか」


「アラッドの場合、どっちもありそうって感じだよね~~~」


「……かもしれないね。狂化を使った回数は多くない様だけど、それでもこれまで戦ってきた相手が相手だからこそ、一回一回の戦いで練度が深まっているのかもしれない」


「アラッドが戦ってきたのって、BランクとかAランクのモンスターばっかりだもんね」


「…………それじゃあ、あの姿は……祖先の人が、影響してるのか?」


ソルの問いに、スティームは首を横に振って応えた。


「解らない。正直、アラッドから実は祖父に……もしくは曽祖父に、人族以外の人がいるという話は聞いたことがない」


スティームは、アラッドは自分にならなんでも話してくれる、とは思っていない。

仲間で、友人だとは思っているが、それでも人に言えない事や言いたくない事の一つや二つあるだろうと思っている。


「単純に、アラッドの狂化は他の人たちが有している狂化とは違うという可能性もある」


「……っ、なんだよ、それ」


人族である自分が、鬼人族の姿になる。

一時的とはいえ、それでも恐ろしさはあれど、ソルはその可能性の強い関心を持った。


だが、同じスキルでも、スキルレベル以外の部分で差があると言われては、どうすることも出来ない。


「…………仮に本当だとしても、それは仕方ないことだと思いますよ。だって……本当にアラッドの狂化が他の人たちが有する狂化違うなら……それは、アラッドが狂化を手に入れるまでの人生が異質だったから…………僕は、それに限ると思います」


生き方が違った。


アラッドは幼い頃から戦闘に興味を持ち、鍛錬を繰り返し、早い内から実戦を行い、これまで何度も何度も繰り返してきた。


貴族の家に生まれた者であれば、基本的に英才教育が施される。

その過程で怪物へと成長する。


稀に元から明確にその他大勢とは違う何かを有している者が生まれることもあるが……アラッドの異質さは、レベルが違った。

理解しようとする深さが違った。


(強制されて出来る生き方じゃない。勿論、才も関係してるとは思うけど、アラッドの幼い頃からの生活は……本人が自主的に取り組もうとしなければ、どこかで壊れる可能性があると思う)


自ら望んだ……だからこそ、アラッドは今も壊れていない。


そんな諸々の異質さが重なり続けた結果、アラッドは特別な狂化を得た。


というのが、スティームの頭の中に浮かんだ仮説だった。


「だから、悲観する必要はないというか、アラッドを妬むのは筋違いだとうか…………もし、ソルさんがアラッドと同じ道を、もしくは別の道を進むなら、今以上に……猛り狂うしかないかと」


「今以上に、猛り、狂う………………」


狂化というスキルは、既にソルの力になってしまった。

意図して得た訳ではないスキルは、その人物を象徴するスキルだと考える者も存在する。


狂化を活かすも殺すも、維持を選択するも……全てはソル次第である。

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