九百二十二話 背負えば良い。それだけの話
「ッ!! 破ッ!!!!」
「っ! ッ!! ッ!!!」
(……本当に、堅い。純粋な防御力は、ヴァジュラが戦っているハードメタルゴーレムの方が、上だとは思いますけど、このグレータースケルトンの防御力も、決して負けてませんね)
白熱した攻防を繰り広げること約二分。
黒色グレータースケルトンの攻撃は一度もフローレンスに当たっておらず、逆にフローレンスの攻撃は黒色グレータースケルトンに何度かヒットしていた。
しかし、今のところ属性的な相性では有利であるにもかかわらず、それなりのダメージを与えられた気がしない。
(骨が黒く、なっている……そういえば、人体の中で、一番堅い物は、骨……だったでしょうか。黒く変色し、更に硬度が増したとなれば……もっと踏み込まないと、倒せそうにありませんね)
骨が黒く変色したからという理由だけではなく、黒色グレータースケルトンは黒色リザードマンと同じく、闇竜デネブからマジックアイテムなどを受け取っていた。
人型だからこそ装備できる特権であり、それもあって属性的には有利なはずのフローレンスの攻撃が、思ったよりも効いていなかった。
(ウィリアスにソルたちの戦場を任せたのが、ここまで心細く感じるとは……私もまだまだですね)
フローレンスも、薄々勘付いていた。
現在自分と戦闘中である黒色グレータースケルトンは、あまり自分を攻めるつもりはない。
戦意はあるものの、死に物狂いで殺すといった殺気が感じられない。
それでも、攻める場面では攻めてくる。
現状のフローレンスでは、その攻撃を食らえば一気に形勢がひっくり返されてしまう。
黒色グレータースケルトンには、それだけの技術と攻撃力がある。
(……四の五の言ってられませんね)
頼れる相棒であるウィリアスがいない。
だからといって、今のフローレンスに手札がないわけではない。
「フンッ!!!!!!!」
「っ!!!!????」
聖光雄化。
フローレンスの切り札であり、フローレンスを麗しき聖女から筋肉聖女へと進化させる。
「ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「っ!? っ! ッ!! っ!!!???」
筋肉が肥大化する。
そうなるとパワーは上がるが、スピードも落ちる? 答えは否。
聖光雄化は、全身体能力を向上させる。
フローレンスが放つ閃光の突きは更に速く、更に重くなる。
黒色グレータースケルトンにとって、どの攻撃も完全に無視出来なくなった。
加えて……聖光雄化を発動したことで、フローレンスが纏う属性は光から聖光に変化。
相性面では、更に黒色グレータースケルトンが不利になった。
(っ!! このグレータースケルトン……本当に、恐ろしいですね)
フローレンスは……確かに強い。
同じ世代というくくりを抜きにしても、戦闘者として、トップレベルの強さを持っている。
ただ……ガルーレやアラッドの様に、柔軟な……野性的な動きは得意ではない。
対して、グレータースケルトンもそういった得意ではない。
基礎的な動きの方が対処しやすい。
聖光雄化を使用し、更に強く、速くなったフローレンスではあるが、それでも基本的な動きに大幅な変化はなかった。
故に、飛来する攻撃に対し、ワンテンポ速く対処すれば良い。
言うは易く行うは難し。
それらを忠実に実行するのは、容易な事ではない。
黒色グレータースケルトンの身体能力と技術、スケルトンになる前の……スケルトンになった以降の戦闘経験があってこそ、初めて実行出来る対処方法。
(さて、どうしましょうか)
フローレンスの聖光雄化は、スティームの赤雷ほど魔力の消費は激しくなく、アラッドやソルが使う様に、リミットはない。
まだまだ数分以上が戦い続けられる。
しかし、まだ他の場所で激しい戦いが続いている以上、あまり魔力は消耗したくない。
(細剣を捨て、肉弾戦に切り替える? …………斬り裂かれるイメージしか湧きませんね)
黒色グレータースケルトンの剣技、右手に持つ……確実にランク五以上の名剣。
見るからに闇属性の名剣であり、聖光雄化を使用することで防御力も強化されたフローレンスではあるが……受け方を間違えれば、容易に斬り裂かれるイメージが浮かんでしまう。
加えて、聖光雄化によって向上する身体能力を活かす為に、徒手格闘も学んではいるが……本職にはまだ届かない。
そんな状態で放つ攻撃で、あの黒色グレータースケルトンを仕留められるのか。
(っ!! ……ダメですね。本当に……私は、まだまだですね)
結果として、アラッドたちと組んで良かった。
それはフローレンスたちだけではなく、アラッドたちも同じことを思っている。
仮にフローレンスたちと組んでいなければ、クロを温存する余裕などなく、それぞれが最初から切り札を解放している。
だが……元々は、自分たちだけで仕留める筈だった。
(ウィリアスがいないからと、日和っていい理由にはなりません)
魔力量を気にするのであれば、さっさと戦闘を終わらせればいい。
さっさと戦闘を終わらせるには、どうすれば良い?
答えは、至極単純。
ただ……リスクを背負えば良いだけの話である。




