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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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九百十七話 久しぶりに浮かぶ感情

「「「…………」」」


オルトロス亜種は、ほんの少し……数ミリだけ後退った。


相変わらず、強気な態度を崩さない人間からは強い闘志を感じる。

ただ……その人間が取り出した武器からは、特に闘志や殺気などは感じない。


それもその筈であり、精霊剣の様な何かしらの存在、意志が封印されている得物であればともかく、剛柔にはそういった者は宿っていない。

そう……設定上、剛柔はランク八の超高品質な名剣。


しかし、闘志や闘気は感じずとも、ケルベロスは剛柔から明確な脅威を感じていた。


「動かないなら……こっちから行っちゃうよッ!!!」


剛柔を手に持つと、誰かが教えてくれる。

この場面では、この斬り方が良いと。


これが最善の攻撃ではあるけど、こういう攻撃の仕方もありだと。

ここは斬撃よりも刺突が良い。


明確に……言葉として聞こえている訳ではない。

ただ、なんとなく現在使い手であるガルーレには、剛柔がそう伝えてくれるように感じる。


(多分、元々の持ち主の……エルスさん、だっけ。本当に良い人、良い大人、だったんだろう、なっ!!!)


教えてくれる攻撃は、全てが剣技に当てはまるものではなく、野性的な動きが得意なガルーレに合う攻撃も含まれていた。


人の個性を否定しない。


当然ながら、ガルーレはエルス・エスペラーサという人間に、英雄に一度も会った事がない。

それでも何故か……なんとなく、その英雄の人となりを感じ取った。


「「「ッ!!!」」」


「だからそれはさせない、って!!!!!!」


三位一体のブレスを放とうとするオルトロス亜種に、先程と同じく瞬時に戦場全体を把握して移動……するだけではなく、斬撃刃による牽制も行う。


(そろそろ、いけそうねッ!!!!)


ガルーレが剛柔を抜剣するまで与えたダメージは、決して効いていないわけではなかった。


次の一刀……放たれた斬撃波、見事オルトロス亜種の指を斬り裂いた。


「「「っ!!!???」」」


「まだまだ、こっからよッ!!!!」


今回の戦いは、確かにガルーレとオルトロス亜種の一騎打ちである。


基本的に全員ガルーレの性格は理解しているが、一般的に敵を打倒した人間が、まだ他に戦っている人間の元に駆けつけて援護するのは当然の流れ。


その考えなら、当然逆のパターンも予想出来るが……このオルトロス亜種は、黒色リザードマンの様に人語を話せるほど器用ではないが、それでもある程度の知能は備わっていた。


他の闇竜デネブから闇の力を授かり、自分と同じく完全に力が馴染んでいる個体であっても、全員が全員勝てる保証はないと。

なんなら、自分たちのトップである闇竜でさえ、殺られる可能性があると感じ取っていた。


だからこそ、焦ってしまう。


「ッ!!!!!」


「ガァアアアアアアアアアアッ!!!」


「攻撃が、雑になってない!!!!!」


指の欠損。

まだ、走り続けることは出来る。


なんなら、黒色ハードメタルゴーレムの様に、闇の力で自己治癒することは出来ないが、完全に闇の力が馴染んでいるオルトロス亜種だからこそ、闇の力を与えてくれた闇竜の力で治してもらえる。


だからこそ、本来ならそこまで焦るような怪我ではない。


ただ……状況が状況であった。

ここ最近、久しく感じていなかった死の恐怖。

まだ完全に頭の中を埋め尽くされてはいないが、それでも久しぶりに脳裏に浮かんだ。


加えて、剛柔から感じ取れる明確な恐怖。

それらが重なり、オルトロス亜種は自分から攻める気力が削がれてしまった。


(ん~~~……状況を考えれば、これはこれで、別に良いんだけど…………やっぱり勿体ないよね~~)


本当に、そんな事しなければ良いのにとツッコまれる。

だが、それをしてしまうのが……ガルーレである。


「あんた、本当にオルトロスなの?」


「「「…………?」」」


「Bランクの狼系モンスター? って言うと、最後の最後まで、何が何でも噛み千切ってやるって殺意増し増しの状況で襲い掛かってくると思ったなのに……Aランクのクロと比べて、たった一つランクが違うだけなのに、ここまで差があるのね……あんた、誇りとか一切ない駄犬なの?」


「「「…………ッ!!!!!!!!!!!」


ある程度知能があるからこそ、人間の言葉はそれなりに理解出来る。

表情から、どんな感情を自分に向けているのか理解出来る……オルトロス亜種は叫んだ。


何を既に、勝った気でいるのかと。


(ふふ、そうだよね。そうだよね……そうなるよね!!!!!!)


自分の思い通りに事が運んだ。

それが解った瞬間、ガルーレは笑みを零すも、それはほんの一瞬だけ。


絶対に乗ってくれる。

誇りがないわけがない。

そう信じていたからこそ、直ぐに戦闘者の眼に、表情に切り替わった。



随分、お転婆で勝気な使い手だ。



教え、提案とは全く関係のない言葉。

そんな言葉は聞こえる訳がないと……何かしらの幻覚、自分が勝手にイメージしてしまったものだろうと……そう思ったガルーレ。


それでも、剛柔は最高にして最適な構えを、攻撃方法を教えてくれた

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