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九十一話 鉱山内に響き渡る声量

「オーアルドラゴン殿に提供する対価は、料理です」


「……ふむ、料理とな」


オーアルドラゴンとしては、正直なところこの鉱山に滞在しても良いのであれば、それなりの願いを叶えるつもりだった。


フールの願いがこの鉱山を拠点にしてほしいという内容ならば、自身の願いと合致しているのであまり対価などは必要ない……が、今まで出会ってきた者たちとは異なる目と雰囲気を持つフールたちがいったいどんな料理を提供してくれるのか……かなり気になる。


「それでは、今からこの場で作るのか?」


「えぇ、その通りです。材料と調理器具は持ってきていますので、直ぐに取り掛かれます」


「そうか……それでは、お主たちが作る料理……頂こうか」


人化のスキルを習得しているが、長い人生の間であまり人里に降りたことがない。

腹が減っては適当にモンスターを殺して食べ、偶に同族やランクの高いモンスターに喧嘩を売られてはバチバチに戦ってきた。


それなりに生きてきたが、あまり食という物に拘ってこなかった。

故に騎士たちが食材と調理器具を取り出し、作り始めた料理に強く興味を持った。


そして約二十分後、アラッドが前世の料理を必死に思い出してこの世界に誕生させた料理がテーブルの上にズラっと並べられた。


「ほほぅ……中々食欲をそそる匂いだな。ただ、この状態だとややあれだな……人型になるとするか」


オーアルドラゴンはドラゴンの姿から変形し、人の姿へと数秒で変化。

その姿はフールより十歳ほど年上のダンディなおじ様スタイル。


ドラゴンが人の姿に変形する様子はフールも含め、全員が初めて見たので揃って驚いた。


「そんなに人の姿になるモンスターが珍しいか?」


「えぇ、そうですね。基本的に人化と人語のスキルを習得するモンスターは珍しいので」


「そうだったか……ふむ、そうかもしれないな」


オーアルドラゴンは他のモンスターと戦う時、鑑定のスキルは持っているが特に視ることはない。

それは何故か?


理由は単純明快……視ずとも己が勝つという絶対的な自信を持っているからだ。

過去に鑑定を使ったのは数度のみ。


同じ属性を持つドラゴンとの激闘。

その際はある程度相手の手札を確認しておきたいと思い、鑑定を使ってから暴れに暴れた。


「まぁ、今そんなことはどうでも良い。目の前の料理……頂こう」


唐揚げ、ハンバーグ、生姜焼き、オムライスにグラタンなど。

保温効果がある箱に炊き立ての米を入れたので、短時間でそれなりの料理が完成。


そしていざオーアルドラゴンが料理を実食。

まず口に入れたのは唐揚げ。


「……うむ、美味い!!!!!!」


「「「「「「ッ!!!???」」」」」」


その言葉が聞けたのは非常に嬉しい。

非常に嬉しいのだが……オーアルドラゴンが発した声はあまりにも声量が大きかった。


あまりの声量の大きさに鉱山が僅かに揺れた。

そして直ぐ傍にいたアラッドたちはなんとかギリギリ耳を塞ぐことに成功したが、それでも若干頭がくらくらした。


「おっと、すまん。あまりにも美味かったからつい大声を出してしまった」


「い、いえ……お、お気になさらず」


そう言いつつも、もう一度先程の様な大声を出されてはきつい。

クロも文句は言わないが、耳に大ダメージを食らったので今は完全に閉じている。


オーアルドラゴンはさすがに大きな声を出し過ぎたと思い、感想を言う時の声量を治めた。

そして五分後にはそれなりにあった料理が全て空になる、完食された。


「うむ、もう一度言おう……大変美味だった。料理というのは凄いな」


「料理の内容をシェフに提案したのは息子のアラッドです」


「そうなのか? お主、戦闘力が高いだけではなく発想力も高いのだな」


「は、ははは。そ、それはどうも」


正確にはどれ一つ自分で考えた料理はない。

リバーシと同じく、この世界で初めて作ったのはアラッドだが、前世という違う世界で工藤英二が生まれるよりも先に考えた人がいるので、発想力の高さを褒められるとつい苦笑いになってしまう。

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