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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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九百八話 傲慢な遊び

「…………妙だな」


「……闇の力を与えられた個体と全く遭遇しないから、ですか?」


「あぁ、そうだ」


しらみつぶしに、見逃しがないようにクロたちの機動力を生かして探索を行っているアラッドたち。


その道中、当然モンスターと遭遇することはある。

ただ、アラッドたちやフローレンスたちが遭遇したサラマンダーやオーガ、ワイバーンの様な闇竜から、闇の力を授かったであろうモンスターとは一体も遭遇していなかった。


(もしかしたら、グレートウルフたちの様な、まだ力を付与されたばかりの個体というのも存在するのかもしれないが…………だとしても、妙だな)


ここに来て、一体も手掛かりになりそうにないモンスターと遭遇してない状況に、不気味さを感じるアラッド。


「……既に、私たちの存在に気付いてるという可能性もあるでしょう」


「纏まって別の場所に移動したということか? ……だとしたら、最悪だな」


ギリギリと奥歯を鳴らし、表情を歪ませるアラッド。


仮に別の場所に移動したとしても、討伐する予定は変わらない。

だが、移動されれば、ますます見つけるのに時間が掛かり、他の事に手が回らなくなる可能性がある。


(グレイスさんが教えてくれた存在は、今回の闇竜だけで終わりじゃない。できれば、後五日以内には終わらせたいところなんだがな)


本当に揃って移動していれば、五日以内で終わる可能性は非常に低い。


「そうなったら、やっぱり一人一殺? みたいな感じでバラバラに動いた方が良いのかな」


「そうだな…………一応、その可能性を考えておこう」


風竜ルストの様に、今回のドラゴンも並以上の思考を持っている。

その可能性を頭の片隅に置いておきながら探索し……更に一日が経過。



「中々見つからないね~~」


「そうだな」


栄養満点の夕食を食べながらも、あまり雰囲気は明るくなかった。


「今回私たちが狙ってる闇竜って、結局何がしたいんだろうね」


「人間を滅ぼすとかじゃないの?」


「やっぱりそれかな~? ねぇ、アラッドはどう思う」


「……結果的に、人の村や街を襲うことはあるだろうな」


引っ掛かる言い方に、フローレンスたちはそれ以外に目的があるのかと、首を傾げる。


「他に、何か考えている事があると」


「他に明確な理由があるかどうか解らないが……もしかしたら、遊んでるのかと思ってな」


「遊んでいる、ですか」


「そうだ。ただ人を襲ったり、人の村や町を襲って遊ぼうとしてるのかもしれない」


アラッドの予想を聞き、ソルたち騎士は怒りを隠せなかった。

勿論、矛先はアラッドではなく、闇竜へと向けられている。


「世間一般的なドラゴンのイメージは暴力的で、独裁的って感じだもんね」


「一般的なイメージは、そうかもしれないな」


約二体ほど、そのイメージに当てはまらないドラゴンを知っているアラッドではあるが、そこに関して特に反論しようとはしなかった。


「だから、命を使って遊ぶっていう傲慢的な考えを持ってもおかしくない、ってことだね」


「個人的な憶測だけどな」


「…………もしかして、こうして私たちが闇の力を授かった存在と遭遇出来ない様にしてるのも、闇竜のも湧く通り、遊ばれてるのでしょうか」


「あぁーー……ないとは、言い切れないな」


闇竜に、今自分たちが会話している内容を、浮かべてる表情を知れる術があるのかは知らない。

それでも、その可能性は絶対に有り得ないと断言出来る者は、この場にいなかった。


(多分、人の言葉を喋れるのは間違いないだろうな。それを考えると……イラつきがマックス状態の時に遭遇して、文句吐き散らかす俺たちをバカにして笑いたい……とか考えてたりするのかもな)


もし自分が闇竜の立場で、性格が普通のドラゴンとは異なるというのを考えれば……予想出来なくはない。


「……まぁ、どちらにしろ倒せれば、それで良い」


極論ではあるが、その気持ちは全員同じであった。





「………………ッ、ワゥ!」


「ん? どうした、クロ」


「ワゥワゥ!!」


更に翌日、午後昼過ぎを迎えた頃、クロが何かを感じ取り、ある方向に足を向けた。


「……あっちに、何かあるんだな」


「ワゥ!!」


「よし、行くか」


この隊に専門の斥候はおらず、自称ドラゴン博士もいないため、何かを感じ取った……という、非常に曖昧な理由で探索先を変えることに対して、特に誰も文句を言うことはなかった。


(っ……匂い、じゃないな。だが、どことなく……空気が、重い?)


先行するクロの後を付いて行き、広い広い洞窟へと入っていく中で、アラッドは何かが充満していると感じた。


「これは…………闇、ですね」


「闇の魔力が充満している、ということか?」


「闇の魔力なのか、それとも……闇という存在なのかは解りません。ただ、この先の奥に……私たちの標的がいるのは、間違いないでしょう」


「そうだな……気を引き締め直そう」


奥へ、奥へ…………更に奥へと進み続ける。


以外にも、太陽の光は届いているからか、アラッドたちの視界は良好。

迷うことなく……闇の発信源へとたどり着いた。


(やはり、フローレンスたちと組んで行動するという判断は、英断だったようだな)


視線の先には、アラッドたちの標的である闇竜が、そして……十を越える闇の力を持つモンスターたちがいた。

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