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八十五話 一刀両断して弟に丸投げ

「でも、本当に強かったぞ。素の身体能力は確実に俺より上だったからな」


「アラッドさんの方が上だったら、騎士は立つ瀬がないでしょうね」


脅威的な力を持つ子供であっても十五歳や十八歳などではなく、まだ十代ですらない正真正銘の子供。

いくらアラッドが日々モンスターと戦い続けてレベルを上げていても、


身体能力では騎士という高い壁を乗り越えた猛者には敵わない。


「剣技も通用せず、武技を使ってもダメージは与えられなかった。奇策が上手くいってなかったら、本当に勝てなかった」


糸を全力で使えば話は変わってくるが、そうなれば模擬戦の域を超えて殺し合いに発展してしまう。

王城でそんな大惨事を起こすわけにはいかず、アリサに攻撃で糸を使ってはならないと命された。


「騎士、か……やっぱちょっと憧れるっすね」


「……まぁ、カッコいいとは思うな。でもダイア、お前の目標は冒険者になって活躍することだろ。もしかして進路変更か?」


平民が騎士になることは決して珍しくない。

出世するかどうかは置いといて、よっぽど賄賂などが横行していなければ騎士という地位と爵位を得られる。


「いや、そういう訳じゃないっすよ。ただ……やっぱり騎士に憧れるっす。竜騎士とか超カッコいいじゃないっすか」


「竜騎士か……それは確かにカッコいいというか、男なら一度ぐらいは憧れるよな」


ドラゴンの背に乗って戦場を駆ける。

英雄などに憧れる男子であれば、一度は体験してみたいと思う夢。


「そういえば、弟のドラングがドラゴンの卵が欲しいって父さんに頼んでたな」


「えっ、マジっすか!!?? ど、ドラゴンの卵って……普通に無理じゃないっすか?」


「金を積めば無理ではないだろ。世の中にはドラゴンより強い冒険者や騎士がいるんだ。ただ、ここまで無事に送り届けるってのがまた難しい」


子を守る親というのは恐ろしい。

それは人だけではなく、モンスターにも同じことが言える。


そして仮にドラゴンの卵を盗み出したとしても、送り届けるまで絶対に孵化しない可能性はゼロではない。


「さすがに無理だって却下されたけどね」


「ドラゴンの卵を……ドラング様は意外と無茶をおっしゃるのですね」


「そう、だな……いくらなんでも無茶な頼みだったのは間違いない」


普段のドラングはアラッドに対してだけ態度が厳しいが、他の使用人に無茶な命令をしたり暴言を吐くことはない。

勉強や礼儀作法などを学び、アラッドに勝ってフールを超える騎士になるため、鍛錬を続ける。


普段から我儘でフールとリーナを困らせることもない。

なので先日の一件は非常に珍しかった。


「そういえば、パーティーでは令嬢たちから話しかけられなかったんですか?」


子供たちにとって、パーティーは将来の相手を探す場でもある。

侯爵家の三男であるアラッドは普通に考えて優良物件。貴族令嬢たちが放っておく訳がない。


「勿論話しかけてきたぞ。でも予定通り全部断った」


「は、はは……流石っすね、アラッドさん!!!」


おそらく美少女揃いであろう令嬢たちからの声掛けを全て断った。

そんな一般的にはあり得ない決断を下したアラッドに対し、更に尊敬の念を抱く。


「褒めてもなんも出ないぞ。まぁ、相手がどういった考えを持って近づいてきたのかなんて、実際に話してみないと分からないところもあるとは思うが、俺はそういうのよりも美味い飯に夢中だったからな」


女よりも食い気を優先。

ロリコンではないアラッドにとってそれは当然。


「母さんに付いていって騎士と戦うまでは延々と料理を食べてたからな」


「その間、誰かに話しかけられたりしなかったんですか?」


「エレナ……令嬢たちからの声掛けを一刀両断して弟に投げた男が普通に見えるか」


「え、えっと…………ちょ、ちょっと普通じゃない、かもしれません」


「だろ。だから飯を食ってる時は特に周りを気にせず楽だったんだよ……さて、話はこれくらいにして訓練を始めるぞ」


「「「「はい!」」」」


気持ちは一瞬で切り替え、四人はアラッドから貰ったプレゼントを使い慣れるため、時折笑みをこぼしながら訓練に集中した。

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