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八話 少々空気が重い

夜になれば、家族全員で夕食を食べる。

フールも書類仕事が残っていたとしても、仕事部屋から出て席に座って家族と一緒に夕食を取る。


普段は賑やかな夕食になるのだが、本日は少々空気が重苦しかった。

その理由は単純であり、アラッドがドラングを模擬戦でワンパンで倒してしまったからだ。


本来ならばアラッドの血が繋がった母であるアリサは息子を直ぐにでも褒めたかった。

だが、この場にはドラングと血の繋がった母、第二夫人のリーナもいる。


二人の仲は良好であるが、さすがにこの場でアラッドがドラングを一撃で倒してしまったことを手放しで褒めるわけにはいかない。

しかし、今日一日の間に起こったビッグイベントはその一戦。


是非とも今語り合いたいと思う者は多少いたが、家族全員がいるこの場でその話をするのはドラングの傷口に塩を塗りこむことになる。


ただ、そんなことを気にする素振りなくアラッドはパーシブル家の専属料理人が作った料理を美味しそうに食べる。


(どんな食材を使ってるのか知らないけど、この世界の飯は美味しいな。ただ、貴族に生まれなかったらこういった料理を毎日食べられなかったし……この世界に転生させてくれた何かに感謝だな)


どういった理屈で自分がこの世界の住人に転生したかは分からない。

なので適当に心の中で自分を転生させてくれた何かに感謝の念を送った。


そして夕食を食べ終えると、直ぐに木剣を持って訓練場に移動。

日課の体力づくりと素振り、シャドーを行う。


(日本人として生まれてから五歳児になった時と比べて、今の方が圧倒的に動けてるよな)


そんな事を考えながら素振りを行っていると、血の繋がった母であるアリサが訓練場に入ってきた。


「アラッド、聞いたよ。ドラングと模擬戦をして圧勝したんだって」


「うん、そうだね。でも、一瞬で終わったから模擬戦って呼べるのか分からないけど」


本当に一瞬で終わってしまった。

アラッドにとって模擬戦は数分ぐらいは戦い続けるものだと考えているので、ドラングと模擬戦を行ったという感覚がない。


「いや、だとしても圧勝したんだ。さすが私の息子だ!!!!」


「むぐっ!? あ、ありがとう」


母からの熱いハグに嫌な心地にはならない。

だが、柔らかい胸に押し付けられる感覚は元男子高校生として悩ましい状態だった。


(戦う時の格好じゃないから、こう……胸の感触がダイレクトに伝わってくるな。まだまだ見た目はガキんちょだからムスコが立つことはないのが一安心だな)


アリサが自分と血がつながった母親だと解っているが、それでもあまりにも綺麗でナイススタイルを持っている。


(エリア義母さんもリーナ義母さんも超美人だし……父さんは色々と上手くやったもんだね)


三人とどのような経緯で結婚したのかは知らない。

だが、フールが男として勝ち組になったのだけは理解できる。


「にしても、なんで木剣は使わなかったんだい?」


「いや、だって木剣で攻撃するとうっかり大怪我をさせるかもしれないじゃん。拳で殴っただけでも骨が折れてたし……万が一頭に当ったら危ないなと思って」


「……そうかそうか。アラッドは強いだけじゃなくて、ちゃんと優しさもある……うん、偉い偉い!!!!」


精神年齢は既に二十歳を超えているが、母親に褒められながら頭を撫でられるのは意外と悪くなかった。


(こんな美人だからってのもあるだろうな……ただ、母さんには悪いけどそろそろ訓練を再開したい)


まだ今日の分が終わっていないので、訓練を再開したいと思っていると一人のメイドが訓練場に入ってきた。


「アラッド様、フール様がお呼びです」


「父さんが……珍しいな。分かった。母さん、ちょっと行ってくる」


「いってらっしゃい、私は鈍った体を起こしとくよ」


おそらくフールはアラッドだけと話したいことがあるのだろうと思い、付いて行かず木剣を木箱から取って素振りを始めた。


「アラッドです」


「入りなさい」


フールが仕事している部屋の前に着き、声を掛けると直ぐに返ってきた。

メイドがドアを開け、中に入ると椅子に座っていたフールは直ぐに立ってソファーに座った。

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