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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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七百九十七話 同じ、存在

「「ッ……」」


二体のアサシンは、仮面の奥で苦い表情を浮かべていた。


先程までも中々毒付きの遠距離攻撃が当たらない状態が続いていたが、今は更に状況が異なる。


(このアマゾネス……あの三人の中で、最弱の存在ではなかったのか)


アサシンたちも楽な戦いだけを乗り越えてきた訳ではない。

だからこそ……否が応でも解ってしまう。


今の自分たちは、完全に狩られる側に回ってしまったのだと。


しかし、だからといって逃走という選択肢はない。


「逃げないのね……良いわね。それじゃあ、続けましょう」


これまで攻撃を避け続けたガルーレだが、ここにきて攻めに転じる。

当然、容易に近づいて得意の鉄拳、鉄脚をぶちかまそうとはせず、魔力による遠距離攻撃で攻める。


念願の立体感知を会得し、極限の集中状態であるゾーンに入ったガルーレ。


かつて感じたことがある無敵感。

今、自分が最高のコンディション、集中状態であることが解る。

だからこそ……ガルーレは冷静さを失っていなかった。


(あれだけ毒を、使うってことは、まだ何か隠し持ってる、でしょ)


何かしら嫌な予感がする。

とはいえ、魔力を使用した遠距離攻撃だけでは、二人のアサシンを仕留める事は出来ない。


(確かめようかしら)


片方の行動を把握しながら、もう片方のアサシンに向かって駆け出す。


「シッ!!!!!!」


カウンターの軌道を読み、躱しながら予定通り鉄拳を叩き込む……フリをして、脇腹に蹴りを叩き込んだ。


「ぐっ!!!???」


見事に騙されたアサシンは勢い良く壁に激突。


「やっぱりね~~~。嫌な予感が、したのよ。多分、あなたも同じやつを着てる、でしょ」


先程の攻撃、ガルーレがあのまま鉄拳を当てようとしていれば……黒衣から滲み出た毒によって侵されていた。


自身が指定した服の個所に毒を生み出す。

着用者によっては殆ど物理的なダメージを食らわず、逆に相手に毒を食らわせることが出来るカウンターとなる。

二人のアサシンはそういった効果を持つ特殊な黒衣を身に付けていた。


常にカウンターを狙えるのであれば、常に毒を出していれば良いのではないか? と思われるかもしれないが。

さすがにそこまで都合の良いマジックアイテムはなく、毒を出す為に魔力が消費される。

黒衣全体から毒を出そうものなら、一気に魔力を削られてしまう。


だからこそ、相手に攻撃……体が当たる瞬間のみ、毒を出すのがベスト。

二人にはそれが出来るだけの把握力があるのだが……ゾーンに入ったガルーレの集中力が本能を活性化させ、初手でその危険度を見破った。


(それならそれで、戦りようはあるッ!!!!!!!)


初手で毒によるカウンターが成功せず、痛いダメージを貰ってしまった。

加えて、黒衣の効果を見破られた。


仮面を付けているアサシンたちの表情は見えない。


だが……今のガルーレは、対峙している相手の感情の色が、なんとなく見えていた。


「っ、ハッ!!!!!!!」


「っ!!!!!!?????」


拳を止め、別の個所を蹴ろうとする……という動きをフェイクに使い、発勁を叩き込む。


(見えてる、わよッ!!!!!!!!!)


「ヌグっ!!!!!?????」


脇腹に強烈な蹴りを食らうも、なんとか立ち上がって遠距離攻撃ではなく、近距離攻撃を仕掛けたが……短剣を魔力を纏った素手で弾くというフェイントに騙され、変則的な蹴りで睾丸を蹴り上げられてしまった。


先程食らった脇腹への蹴撃よりも更に強烈な一撃。

意識が飛びそうになる一撃を食らうも……アサシンはなんとか意識を保たせる。


しかし、根性で意識を戻した瞬間には、嫌な男が前方から聞こえた。


「後、一人」


発勁を左肩付近に食らおうとも、まだ片腕があれば戦えると、アサシンとは思えない根性を魅せるも、ガルーレは今度もフェイントで別の部分を狙った。


狙った箇所は……仮面を付けている頭部。

頭上や側頭部、後頭部であれば黒衣を身に付けているため、毒でデバフをかけることが出来たが、仮面にそういった効果はなく……簡易発勁を食らってしまった。


いくら鍛え上げられた人間とはいえ、頭部の中身までは鍛えられない。


仮面を越え、頭蓋骨を越えて通された振動、衝撃はアサシンの脳をぐちゃぐちゃにした。


(こいつも、化け物だったか!!!!!!!!)


残ったアサシンはこれまで通りガルーレを仕留めることを最優先……するのではなく、目的を変更。


アラッド、スティームの二人だけではなく、ガルーレというアマゾネスも怪物の一人であるという情報を持ち帰る。

その為、アサシンは懐から毒の煙玉を取り出した。


「っ!?」


「ねぇ、寂しいじゃ、ないッ!!!!!!!!」


懐に手を入れた。


その動作が把握出来た瞬間、ガルーレはジャブの要領で拳から魔力の弾丸を放った。

当て勘を頼りに放った弾丸は見事毒煙玉ではなく、手首にヒット。


生まれた僅か隙を突き……跳び蹴りが顔面に叩きこまれた。

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