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七百三十四話 ごたごたが片付いたら

「アラッド~、褒めてくれるのは嬉しいけど、あれはかなり武器の性能のお陰でもあるんだよ」


「何言ってんだ。武器の性能云々を話し始めたら、俺は渦雷を使ってラディア嬢も精霊剣を使ってたんだぞ」


フローレンスとライホルトも並ではない武器を使用しているため、珍しくアラッドの綺麗なカウンターがスティームに炸裂した。


「それに、その武器のメイン素材になってる奴は、最後お前が止めを刺しただろ」


「うぐっ……そ、それはそうかもしれないけどさ」


まだ否定したい様子のスティームだが、もう遅かった。


ラディアとライホルトがロックオン……というのは少々物騒だが、完全に見誤っていたと反省し……強者を見る眼を向けていた。


「それは、気になるね」


「うむ、同感だ」


ラディアとライホルトが戦う光景はしっかりと観ていた、そして今も記憶に刻まれており……強者である二人から認められたということは、スティームの個人的な目標であるアラッドの隣に立つのに相応しい冒険者に近づいた証と言えなくもない。


しかし、あまり貴族に……しかも他国の貴族にロックオンされるのは、少々勘弁していただきたい。


「ところでアラッド、あなた達はこれからどうするの」


「これから、というのはどういう事でしょうか」


「せっかくナルターク王国に来たのだから、この国で少しぐらい冒険者活動をするのかと思って」


あと数十年は現役として活動し続けると決めているアラッド。

勿論、他国でも活動することを視野に入れているが……それは今ではなかった。


「もう少しナルターク王国の王都を観光しようとは思ってるけど、長居はしないかと」


「そう? この国にも、それなりに面白いところがあると思うけど」


ラディアとしては、同じ冒険者であるアラッドやスティーム、ガルーレたちと冒険できれば……それはそれで楽しそうだと考えていた。


(嬉しい提案ではあるけど、まだごたごたが片付いてないからな…………自国でならともかく、他国で本格的に活動するのは、もう少し先になるな)


非常に興味があるお誘いではあるが、今は応えられなかった。


「なんと言うか、まだやらなきゃいけない事が幾つかあるんです」


「??? ……それなら、仕方ありませんね」


ぶっちゃけな話、非常に興味はあって嬉しいお誘いではあるものの、アラッドは臨時でラディアとパーティーを組めば、それによって起こる問題が容易に想像出来てしまう。


(……いや、もしかしたら俺ではなく、スティームの方が絡まれてしまうか? それならまぁ……俺のストレスは割と少なめになるか)


客観的に見て、世間一般的に言うイケメンとはアラッドではなく、スティーム。


スティーム本人は否定するが、大多数の人は賛成する。

つまり、ガルーレとラディアという美女を侍らせているのは、実質スティームという男……と思われる可能性は、ないとは言えない。


本当に面倒な件に発展すればアラッドも黙ってはおらず、場合によってはその場を阿鼻叫喚で埋め尽くすかもしれない。

しかし、自分にそういった眼が向けられないだけで、ストレスというのはかなり軽減されるのを考えると……友人にそういった感情が向けられてしまうと解っても、それはちょっとありかもと思ってしまう。


「そういえば、アラッドは一応騎士の爵位を持っているのだったな。それを考えれば、色々と用事があってもおかしくないな」


「……そんな事まで知ってるのか。いや、別に隠してることでもないが……少し恥ずかしいな」


他国の騎士がそれを知っていると思うと、変な恥ずかしさ、むず痒さを感じるアラッド。


「これまでアラッドが達成した功績に関しても、ある程度知っているぞ。騎士が本職なら、スピード出世で既に部下を持つ隊長まで昇進してるだろう」


「勘弁してほしいかな。昇進する前に、規律違反で騎士の称号を剥奪されてるかもしれない」


「正義を為すための規律違反であれば、上も目を瞑るのではないか」


自分が戦う相手ではないが、自分自身が戦う相手であったフローレンスについて調べる中で、アラッドという存在が気になり、多少なりとも調べていた。


当然ながら実際に拳を合わせただけではなく、つい先程初めて喋ったばかり。

にもかかわらず、ライホルトは共に学園生活を送っていた友人かのように、アラッドの芯を理解していた。


「…………さぁ、どうだろうな。まぁでも仮にスピード出世、昇進したとしても俺は現場で働きたい人間なんで、昇進は断るでしょう」


「良いですね。私もこれからは断り続けましょう」


フローレンスが零した言葉に、騎士関係者の者たちがギョッとした顔になる。


「お前なぁ……いや、そりゃ個人の自由な部分はあると思うが、それは無理だろ」


「何故ですか? 常に現場で働きたいという気持ちは、騎士道精神に反していないと思いますが」


「フローレンス、解ってて言ってるだろ。お前の立場的に、上の人たちはなるべくお前を上に上にと引き上げたいだろ」


珍しくアラッドとフローレンスの腰巾着二人の意見が重なるも……とりあえずこの場で、フローレンスの気持ちが特に変わることはなかった。

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