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七百八話 反応しないものなのか?

結局平和に散策することが出来ずに観光を終えたアラッドたち。


その件に関して国王の耳にも入ったが、アラッドが上手く対処した。

結果として誰も傷付いていないということもあって、全くお咎めなしで代表戦当日を迎えた。


「どうだ、アッシュ。緊張してないか?」


「……多少は緊張してるみたいですね」


自身の手の震えを見て、自分を多少なりとも緊張しているのだと自覚するアッシュ。


(自分は緊張してるんだって、この歳で自覚して納得してるなんて……本当に逸材で原石だね)


傍にいるスティームはアッシュの素直さ、冷静さに感嘆すら覚えた。


「アッシュは学園同士のトーナメントに参加していなかったから。あんまり観客は多くないみたいだが、多少は観る人たちがいるのは間違いない……それでも、自分の力を出せるか?」


「はい、それは大丈夫です。勝たないと約束していた素材が手に入らないので」


(うん、本当に大丈夫みたいだな。さすがアッシュ……とことんブレないな)


アラッドもブレない方ではあるが、アッシュのそれは更に上だった。


「相手がどんな奴でも遠慮なくぶっ飛ばしちゃいなさい!!!!!」


「焦る必要も、慌てる必要もありません。アッシュらしく、戦ってください」


「お二人とも、ありがとうございます」


(……美女二人にエールを送られてもブレないところを見ると、将来アッシュに嫁さんができるのかちょっと心配になってきたな)


妹であるシルフィーには、頼れるパートナーができることは嬉しいと思うものの、そのパートナーが本当に頼もしいのかは……自分の身で確かめたいと思っているアラッド。


しかし、弟であるアッシュには、なるべく早くそういう人ができてほしいなという思いがあった。


「……」


「なんか難しい顔してるけど、もしかして今更アッシュ君が代表戦の相手に勝てるか不安に思ってきたの?」


「いや、そこはあまり気にしてない。ただ、アッシュぐらいの歳頃の奴がガルーレやフローレンスにエールを送られて、あんなに表情を変えずにいられるものなのかと思ってな」


アラッドは二人と歳が近く、ガルーレとフローレンスという人間に関してある程度知っており、フローレンスに関しては面倒という気持ちの方が強い。


そういった諸々の理由があり、加えて人生一応二度目という要素もあるため、特に頬が赤くなったりすることはない。


(とはいえ、俺が転生者じゃないって考えれば……そうだな、絶対に頬が赤くなって嬉しさで心臓バクバクになってただろうな)


現状、二人に対してそういった反応を取ることはないものの、もしもという想像の中でも否定するほど頑固ではない。


「そういえばそうだね。元々あの歳頃らしからぬ冷静さを持ってるなと思ってたけど、そういう部分に関しても大人びていると言うか」


「お兄ちゃんとしては、やっぱりそこら辺が心配になるの?」


「それはそうだろ。これから先、アッシュの奴が錬金術を極めようとすることに文句はない。道を外れようとしてる訳ではないのだから、止める理由はない」


アラッドも冒険という人生を満喫しようとしているため、錬金術に夢中な弟のことをとやかく言えない。


「幸せなんてのは、人それぞれだとは思うが、アッシュみたいなタイプの人間にこそ、傍で寄り添ってくれる人が必要だと思ってるんだ……あいつにとっちゃ、余計なお世話だとは思うがな」


「へぇ~~~。良いじゃん良いじゃん、お兄ちゃんらしいじゃん!!」


「…………でもさ、アラッド。この前、妹さんの旦那さんになるには、自分と戦う必要があるみたいな事言ってなかったっけ?」


「ん? そうだな……確かにそんな事言ってたな」


妹の旦那になるには、アラッドと戦わなければならない。


本人がその発言をしたと認めたことで、ガルーレとフローレンスの顔に……何か言いたげな表情が浮かぶ。


「え、アラッド。それマジなの?」


「あぁ、マジだ。大マジだぞ。何と言うか……古い考え、なのかもしれないが、旦那って言うのは家族を守れないと駄目だと思うんだよ」


前世という記憶があるアラッドからすれば、多様性という言葉が広がり始め、本当にその考え方は古いというのが世の考えになりつつあり……当時の記憶はまだ残っている。


それでもこの世界に転生したことで、やはり旦那というのは家族を守る存在でなければならないのでは、といった考えが強くなった。


「守り方にも種類があるのは解ってる。物理的な力だけが全てではない。だが、いざという状況になった時……最後の最後に守れる力は、物理的な強さだ」


アラッド本人、権力者であろうとも結局のところ殺してしまえば全てが終わるという考えを持っている。


勿論、一応既に立場がある人物であり、家族に迷惑を掛ける云々を考えれば……容易に行動には移せない。

それでも……覚悟と、いつでもアクセルを踏み込む用意は出来ている。


「シルフィーが守られるだけの立場に興味がないのは解ってるが、それでもあいつの旦那になるなら……一定以上の強さは持っていないとな……義兄になるかもしれない立場としては、認められないな」


アラッドが考えることは、解らなくもない。

スティームとフローレンスは似たような立場であり、ガルーレもアラッドの考えに一定の理解はある。


だが……アラッドが言う、一定以上の力とはどのレベルなのか。

それが解らない以上、将来シルフィーが連れてくる男が可哀想に思えた三人だった。

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