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六十八話 視界に入ったその人は……

「ん? あれは……」


武器屋、マジックアイテムを売っている店を回りながら小腹が空けば露店でつまみ食いをして王都を観光していると、アラッドの視界に一人の少女が写った。


(……どう考えても平民、じゃないよな)


視界に入った少女は顔が半分ほど隠れるフード付きのローブを被っていた。

その姿を見た瞬間、身を隠すローブがただのローブでは無いことに気が付く。


(多分、他者からの視線をズラす。後は隠蔽効果が付与されてるよな)


「アラッド、どうしたの?」


「あの子……多分、迷子ですよね」


「そう、みたいね。もしかしなくても、貴族の令嬢かしら」


目を凝らし、アリサも少女の姿を確認。

少女が路地裏の方に行く素振りは無いが、どうしたら良いのか分からず周囲をきょろきょろしている。


(あのまま放っておいたら誘拐されて、実家に身代金を要求されそうだな)


実際にそういった事件は少なくない。

さすがにそうなるかもしれない流れを見逃せるはずがなく、アラッドは騎士やアリサに相談する前にその少女に向かって歩き出した。


「よう、迷子か」


「えっ!? あ、は、はい! その……ま、迷子です」


アラッドの少々強面にビビりながらも少女は自分が迷子であることを認めた。


「……一緒に行動してる人はいなかったのか?」


「その、いたのですが……いつの間にかはぐれてしまって」


いつの間にかはぐれた。

少女はそのように認識しているが、着ているローブには隠蔽の効果が付与されているので、目の前から一瞬でも姿を消されると見失ってしまう。


(多分、この子が少しはしゃいでしまった瞬間に、護衛の人たちは見失ってしまったんだろうな……お気の毒に)


目の前の少女にではなく、今頃必死でことを大きくしないように探している護衛の人たちに心の中から合掌を送った。


「一つ提案なんだが、俺は一応貴族の令息。お前もそこら辺の出だろ」


「は、はい……そ、そうです」


「それなら、お前の護衛たちが見つかるまで一緒にいないか? 今俺は母親と護衛の騎士と一緒にいるから、一応安全は保障できる」


「えっと……それでは、是非ご一緒させてください」


「分かった。と、まだ自己紹介をしてなかったな……アラッドだ」


フルネームで名乗ろうとしたが、その必要はないだろうと思い、名前だけを答えた。


「私はフィリアスと申します。よろしくお願いします、アラッド様」


ピンク色の髪と可憐な瞳。

そしてフィリアスという名前……アラッドの中で全ての情報が一瞬で合致した。


(えっ……はっ!!?? マジで、か……いやでもそんなこと……でも体から溢れる高貴さを考えれば……そう、なのか?)


アラッドが得た情報はこの国の第三王女の情報と全て一致する。

そしてもう一度今頃血眼になりながらフィリアスを探しているであろう護衛たちに合掌を送った。


「フィリアス様、とお呼びした方がよろしいでしょうか」


目の前の少女が第三王女と分かり、アラッドは直ぐに話し方を訂正する。

アラッドも侯爵家の三男なのでそれなりに身分は高いが、それでも相手は第三王女……そう、王族なのだ。


下手な態度を取る訳にはいかず、口調を速攻でチェンジ。

だが、どうやらフィリアスはそれが気に入らなかった。


「い、いえ。その……フィリアスとお呼びください。様は不要です。それと、話し方も先程の方でお願いします」


「……分かった、そうさせてもらう」


第三王女本人からそのように言われれば、戻しても問題無いと判断して一先ずフィリアスと一緒にアリサたちの下へ戻った。


すると、フィリアスの顔を見た瞬間に騎士たちの表情が固まり、アリサはもしかしてと思って名前を尋ねる。

本人が名前を答えた瞬間、騎士たちは卒倒しそうになり、アリサは珍しい物を見た顔になる。


「とりあえず護衛の人たちが見つけやすい場所に行きましょう」


王都の中心部には大きな噴水広場があり、まずはそこを目指して歩く。

到着してからフールから借りているアイテムバッグからリバーシを取り出し、騎士に軽食を買いに行かせて退屈にならないように時間を潰した。

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