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六百六十九話 有名人

「アラッドが通ってた学園か~~~。それは気になるね!!」


「僕も気になるけど……勝手に行っても良いものなの?」


「一応俺は卒業生だし、問題無いだろ……多分」


数か月しか通っていなかったとはいえ、本人の言う通り、アラッドは一応パロスト学園の卒業生。


「確か、数か月だけ通ってたんだっけ?」


「……普通に考えると、数か月だけしか通ってないのに卒業できるのって凄過ぎるよね」


「それが条件みたいなところあったからな。というか、学園側としても一年生の時点でトーナメント優勝出来る奴がいても、扱いに困るだろ」


「それは…………うん、かもしれないね」


現最強であった三年生のフローレンスを決勝戦で倒した。

あのままアラッドが一般ルートである三年生卒業まで残っていれば……ソロのトーナメント優勝は全てアラッドが搔っ攫っていたと断言出来る。


パロスト学園としては嬉しいが……王都の学園全体の事情を考えると、どうせトーナメントに出場しても優勝はアラッドに奪われると、俺が私が優勝するんだ!!! という気力が完全に失われてしまう。


それはパロスト学園の学長としても、望むところではない。


「すいません、卒業生のアラッドなんですけど、中に入っても良いですか」


「「っ!!!???」」


門の前に到着したアラッドは警備兵に入っても良いかと尋ねる。

さすがに卒業生だからといって、警備兵の許可なしに入ろうとはしなかった。


対して、アラッドに声を掛けられた警備兵の二人は……何故、あのアラッドがここに居るのかと、全く驚きを隠せなかった。


アラッドと名乗る不届き者?

警備兵たちはクロの本来の姿を見たことがある為、目の前の青年が本当にあのアラッドであると確信。


「少々お待ちください!!!」


一人の警備兵が綺麗な敬礼を行い、即座にダッシュでどこかに消えてしまった。


「……アラッド、学園にいる間なにをしたの?」


「なにをしたって……別におかしなことはしてないぞ」


アラッドという存在に恨みを持った生徒がいけないお薬を使用し、アラッドに襲い掛かるという事件があったが……本人からすればそういった人物は現れるかもと予想していたため、そこまで驚く件ではなかった。


ただ、教師や警備を担当している兵士などからすれば、襲われた生徒が無傷で制圧したことに関しては、大なり小なり驚きを感じていた。


「でも、さっきの兵士の人、超緊張してたよね」


「それはそうだが…………一応、トーナメントで優勝したからか?」


その言葉に、もう一人の警備兵が心の中で肯定した。


警備兵の中には運良く休息日を手に入れ、その光景を生で見た者がいた。

その強さに……一人の男として、戦闘者として敬意を抱かずにはいられず、次の日には多くの同僚たちにその強さ、戦いぶりを熱く語った。


「お待たせしました!!! どうぞ、中へ!!!」


「どうも、ありがとうございます」


許可を貰ったアラッドたちは中に入り、一旦クロたちは以前従魔用のスペースとして滞在していた場所に連れて行き、その後校舎の中に入った。


(……通ってたのは数か月程度とはいえ、やっぱり懐かしく感じるな)


卒業してから一年と少し。


そこまで思い入れがあるかと聞かれると……ないとは言えない。

いけないお薬を使用してでも自分を殺そうと、同級生が襲い掛かって来た件も含めて、記憶に残る思い出が多かった。


「ね、ねぇ。あの人ってもしかして」


「だ、だよね。私、大会で見たことあるけど」


「マジかよ!? な、なぁなぁ!! マジで本物か!?」


「た、多分本物……じゃないかな? 隣にいる人たちが誰かは解らないけど」


(…………ちょっと恥ずいな)


当然ながら、パロスト学園でアラッドは非常に有名な卒業生。

在籍していたのが去年ということもあり、その外見も広まっているため、アラッドを直接見たことがない人物であっても、アラッド本人だ解ってしまう。


ついでに言えば、現在二年生であるレイやベルたち……中等部では妹弟のシルフィーやアッシュがアラッドについて尋ねられた時、自慢気に語っていることもあり、在籍していた事よりもその名は広まっていた。


「冒険者の中でもアラッドは有名人だけど、学生の中? でもアラッドは有名人みたいね」


「ここまで大勢の人たちが注目してるのは……うん、本当に珍しいと思うよ。やっぱり一年生ながら、トーナメントを優勝した功績が大きいんだろうね」


「……スティーム、あんまりそんな冷静に分析しないでくれ」


冒険者ギルドや訓練場で視線が集まるのとは違い、体験したことのない恥ずかしさを感じるアラッド。


「おっと、ここに居たんだな、アラッド」


「っ、アレク先生!! はぁ~~~、良かった~~~~~」


「おいおい、どうした?」


「いや、その……体験したことがない恥ずかしさを感じてて」


数か月間の間だけとはいえ、担任教師であったアレクと出会えたことで、少しは恥ずかしさが緩和されたアラッド。


「冒険者になってからの活躍は色々と聞いてるけど、もう緊張する事なんてないんじゃないのか?」


「体験したことがない緊張感なんで」


「ふっふっふ、あのアラッドを緊張させる感覚か。確かに、社交界とかに何度も出席しとかないと、慣れない感覚かもしれないな」


相変わらずのイケメンフェイスで女子生徒を射殺す笑みを浮かべながら、アラッドが会いたいであろう人物たちのもとへ案内した。

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