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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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六百十四話 望んでいたシチュエーション

スティームとファル対ソルヴァイパーの戦闘が始まってから既に五分以上が経過。


今のところ……開幕当初から変わらず、スティームとファルのタッグが攻め続けている。

形としては攻めている側が優勢に思えるが、スタミナという点に関して、スティームはファルやソルヴァイパーに劣る。


ただ……今回に限っては延々と防御に時間を費やしているソルヴァイパーの精神面がガリガリと削られていた。


これまで戦ってきたどの人間との戦いよりも……先程まで争っていたディーマンバとの戦いよりも、神経が削れる厳しい戦闘と断言出来る。


加えて、ただ敵の猛攻が絶えず苦しいだけではなく、もう一人と一体が自分を逃さないように構えている。

おそらく……現在己が戦っている敵よりも強い一人と一体。


まさに絶望的と言える状況ではあるが……臆病で逃走癖があるソルヴァイパーであっても、己の命を放り出そうとは思わず、まだ……まだ、スティームとソルヴァイパーの攻撃に耐え続ける。


だが、どれだけ耐え続けても、反撃の糸口……もしくは逃げる隙が生まれない。


ほぼ全力で動き続けていることを考えれば、そろそろスティームのスピードが落ちてきてもおかしくないのだが……今のスティームはランナーズハイの状態に近く、疲れを感じることなく双剣を振るい、戦場を駆け続ける。


未だソルヴァイパーの防御力は堅牢と呼べる状態だが……それでも徐々に切傷が増えてきた。


「ハァアアアアア゛ア゛ア゛!!!!!」


今がチャンスだと思い、更に加速。


このまま肺がどうなろうと構うものかと、これまでの戦闘で与えた切傷に向けて更に斬撃を刻む。


「ッ!!!???」


同じく動き続けているソルヴァイパーだが、こちらは自身の体力や魔力の減り具合を常に気にしており、正直なところ……速攻で逃げだしたい。


今はもう、これまで通り動き続けてきた反復によってなんとか攻撃を捌けてるだけの状態。


(殺れる……まだソルヴァイパーはそれなりの魔力を有してるが、それでも視たところ…………ここから逆転出来る手はないはず)


これまでの経験によって行われる防御技術は相変わらず厄介なことに変わりはないが、スティームにはまだ見せていない奥の手がある。


アラッドはこの時点で、友の勝利を確信した。


(うん…………これ、以上は、もう無意味な、やり取りだね)


全能感を体験しながら双剣を振るうも、これまでの戦闘で培ってきた堅牢な防御は少しずつしか攻略出来ない。


結局は魔力切れを狙う形で勝負が終わる……そんなイメージが思い浮かぶも、それはスティームが望む決着ではなかった。


「ファル!!!」


「ッ! キィエエエエエエエッ!!!!!」


主人の意図を読み取ったファルは両翼から放たれる羽の弾幕と風のブレスを同時に発射。


後に下がるか、それとも前に出て躱すか……どちらにしろ、次の行動は限定される。

そして一部だけ羽が地面に刺さらない道が生まれ、次の瞬間……赫い線が通った。


(殺ったな)


アラッドはもう完全に決まったと思った。


全身に赤雷を纏って強化し、双剣にも赤雷を纏って切れ味を超強化。


その状態では、どれだけ堅いソルヴァイパーの防御技術も意味をなさい。


大きく切り裂かれて絶命。

絶命に至らずとも、大量の血を流す致命傷となり、あと一撃与えるだけで勝負は決まる……筈だった。


(ッ……この感じ、まさか)


そのまさかが起こり得た。


アラッドがトロールにクロを殺された時と似ているのか……自らの死を明確に感じ取ったソルヴァイパーは、ここにきて自身の本当の才能を開花させ……白雷を会得し、赤雷を纏ったスティームの斬撃に耐えた。


「おいおいおい……ここにきて、会得したのか」


ここにくるまで、隠し通してきた可能性も捨てきれないが、若干自身の状態に違和感を感じてるであろう素振りをするソルヴァイパーを見ると、今ここで会得したとしか思えない。


普通に考えれば……危機的状況であるのは間違いない。

アラッドとクロという戦力が後ろにいるとはいえ、白雷という力を得たことは……単なるパワーアップとは言えない。


まだ魔力量がギリギリではないことを考えれば、赤雷を利用した攻撃を全て対処されてもおかしくない。


だが……この状況こそ、スティームが望んでいた状態。


(全く…………良い顔するじゃないか、スティーム)


自身が望んでいたシチュエーションとなり、本当の勝負が今……ようやく始まる。


やや疲れは感じるも、まだまだ体は動く。

魔力もまだ赤雷を使用しながら動いても問題にはならない。


従魔であるファルも主人と同じく、堅牢な強敵がパワーアップしたことに対して一切臆することは無く、寧ろ歓喜していた。


今のソルヴァイパーなら……うっかり心臓を潰してしまう可能性を考慮しなくても構わない。

そう思わせるだけの圧が増した。


(いやぁ~~~、本当にここは良い特等席、だ…………はっ?)


「えっ?」


ほぼ同じタイミングで戸惑った二人。


何故なら……つい先程超絶パワーアップしたソルヴァイパーが……地面を掘って地中に潜り……そのまま全く関係がない方向へ向かってしまった。

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