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六百三話 友人にしてスレイヤー?

木竜の時と同じように、領主の家に呼ばれて食事をご馳走されていたアラッドとスティーム。


木竜の時も領主はこのままではどうなってしまうのかと不安で一杯だったが、結局は何も起こらない……という可能性もあった。


だが、今回は二体の火竜がただ暴れ回ることに飽き……周囲の街を襲い始めたかもしれない。

これも可能性ではあるが、決して低くない可能性であり、過去に例としてだた暴れ回ることに飽きた凶悪なモンスターが人間の街を襲い始めたことがある。


「いやぁ~~、本当にお二人が来てくれて幸いでしたよ」


領主としては、水蓮の派遣隊かアラッドか……どちらが倒してくれても有り難いことに変わりはない。


死にかけだった二体の火竜が食らい合い、生き残った一体が轟炎竜に進化したという話を聞いたときは紅茶をぶちまけてしまったが、その後に無事アラッドと従魔が討伐してくれたと聞いて安心した。


感謝感激といった言葉を何度も伝えられ、賄賂……ではないが、最後に冒険者ギルドとは別に秘密の報酬を受け取って会食は終了。


アラッドとしてはギルドから報酬を受け取っており、轟炎竜の素材が手に入ったということも嬉しく、お腹一杯に近い状態だったが……貴族の世界を生きる領主としても、今後不安になる要素だけは消しておきたい。



「別に要らないんだけどなぁ……」


「あって困ることはないんだから、受け取っておいて正解だよ。アラッドだって、なんで領主がわざわざ冒険者ギルドとは別で報酬をくれたか解るでしょ」


「……一応な」


秘密の報酬を受け取った後、二人は直ぐに新しい目的に向かって出発していた。


「そういえばアラッドって……これで何体のAランクのドラゴンと遭遇したの?」


「……四体だな」


「四体…………凄いね」


オーアルドラゴン、ドラゴンゾンビ、木竜、轟炎竜。


ラインナップを聞いただけでも震え上がってもおかしくない。


「いや、分かってたけど、良く生きてたね」


「四体のうち、二体はこちらに友好的だったからな」


「……ドラゴンの友人でありながら、ドラゴンスレイヤーでもある……なんか、本当に色々と凄いね」


テイマーの素質があり、ドラゴンを従魔に出来るほどの力量がある。


それが、BランクであろうとAランクであろうとぶっ殺すことが出来るドラゴンスレイヤー。


そのどちらかだけであればまだ理解出来る存在ではあるが、その両方に近いことが出来る存在は……スティームの知識になかった。


「友人であり、殺せる力がある……いや、殺せるだけの力量があるからこそ、友人として認められたのか…………もしかしたら、アラッドを巡ってドラゴン同士の争いが起こるかもしれないね」


「おいおい、なんだそれ? ドラゴンが一人の人間を巡って戦うとか……あり得ないだろ」


「アラッド。君は自分が普通ではないという自覚はあるんだろ」


「うっ……それは、まぁ……あるが」


「僕の記憶には、ドラゴンと親しく出来るのに……倒すことも出来る人はいない」


「そりゃあ、あれだ。そもそもドラゴンが目の前にいれば、怯えるか挑むか。その選択肢しかないからじゃないか」


アラッドの返しに、それは確かにそうかもと思い、悩みこむスティーム。

しかし、直ぐにその理由について持論を返す。


「そうかもしれない。けど、そもそも属性持ちのAランクドラゴンと仲良くなろう、なんて余裕ぶっこいて接しようとしたら、あっさり殺されてしまうかもしれない。確かにAランクのドラゴンと交友関係を結べたら利益は大きいだろうけど、どう考えても死ぬリスクの方が大きいよ」


「……けど、あれだぞ。俺も初めは仲良くなるつもりで出会った訳じゃないんだぞ。本当に……偶々だ」


オーアルドラゴンの時は本当に偶々であり、木竜の時は……冷静さを持っていなければ、最悪のその場で大決戦になっていたかもしれない。


「ふ~~ん? まぁ、どちらでも良いんだけどさ」


「俺にとっては良くないのだが」


「そう? アラッドなら、何だかんだで何とかしそうじゃん。あっ、そういえば……今回の一件でさ、アラッドは正真正銘ドラゴンスレイヤーになれたんじゃないのかな」


「………………どうだろうな。クロの力あってこその結果だったからな」


確かに!!! と一瞬思ったものの、アラッドは少し考え込んでから否定した。


「あの戦いを観ていた水蓮のメンバーはそう思わないかもしれないが、話を……噂を耳にした人たちは、Aランクモンスターであるクロの力が大きいと思うだろう」


「つまり、クロとセットでドラゴンスレイヤーと呼ぶようになると?」


「さぁ……ギルドは認めるかもしれないが、冒険者たちは別だろうな」


「ふむ。その気持ちは多少解る。解かるけど……もう、アラッドの力を疑うのって、無理があるよね」


十歳でトロールを単独で倒した。

この逸話から始まり、学園同士が主催するのトーナメントで一年生ながら、女王と謳われた三年生を倒して優勝。


そして冒険者として活動を始めてから、推定Bランクのオークシャーマンの討伐。

ユニコーンとの遭遇など、逸話は戦闘だけに留まらない。


ミノタウロスをソロで討伐したかと思えば、今度は召喚されたAランクのドラゴンゾンビを討伐。

闘技場での十連勝に雷獣と連戦して討伐。

木竜の暴走? を防いだ立役者であり、今度は偶然に偶然が重なった結果生まれた轟炎竜を従魔と共に討伐。


経歴も含めて、既に歴戦の戦士となっていた。

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[気になる点] クロの時もそうだったけど魔物の進化には瀕死になる必要があるのか?
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