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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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五百八十五話 見つかることのない火種

「では、またな」


「「ありがとうございました!!」」


じっくり悩みに悩み、二人は木竜の宝物庫から一人一つずつお宝を対価として頂いた。


「……………」


「……なぁ、スティーム。なんかあっただろ」


「えっ!?」


無言で、ほんの少し下を向いて歩き続けるスティームに、アラッドは何かあったんだろうと確信を

持ちながら声を掛けた。


「いや、別に何もないよ」


「バカ言うな。あんだけ一つの武器を凝視してたら、何かあったとしか思えないだろ」


「うっ…………」


まだそこまで付き合いは長いとは言えないが、それでも多少の付き合いがあれば、バスターソードを凝視素するスティームの表情から、何かあったと察することは容易い。


「もしかして、親族が使ってたバスターソードだったりするのか?」


「違うよ。親族ではないよ……親族ではないんだけど……」


言って良いのか迷う。

アラッドが信用出来る人物なのは解かっているが、それでも事が事なだけに簡単に教えてしまって良いのか悩む。


「……答え辛いことなら、無理して答えなく良いぞ」


「え?」


「そりゃ悩み事があったら気軽に相談してほしいとは思うが、人間なんだから誰にも言えない事の一つや二つぐらいあるだろ」


「…………アラッドも、そういう事があるの?」


「ふふ、まぁな」


自身が普通の人間ではなく、転生者……その魂も、この世界の人物ではない。

これに関しては、まだ誰にも……家族にも話したことがない。


そしてこれからも、誰にも話すことはない秘密である。


「……実はね」


その秘密を知りたかったら話した訳ではない。

断じてそんな邪な考えはなく……気付いたら、何故とあるバスターソードを凝視していたのか、その理由を話し始めた。


「グリフィス・ハルドナー…………他国の俺でも、名前は聞いたことがあるな」


「その人が使ってた、大剣があったんだ」


「なるほどな……確かに、それは面倒なことに発展してもおかしくないな」


アラッドも決して馬鹿ではないため、そのバスターソードをハルドナー公爵家に持って行き、どこで手に入れたのか……死闘を繰り広げた木竜の感想などを伝えれば……間違いなく、スティームはハルドナー公爵家から感謝される。


それは確定しているが……それと同時に、ハルドナー公爵家が木竜に対して激しい怒りを抱くことが確定する。


そうなれば、アルバース王国とホットル王国がプチ敵対関係になってもおかしくない。


頭が回る者、冷静に考え続けられる者であれば、アルバース王国がその件に関与していないことなど解る。

しかし…………そこそこバカな者と、悪知恵が働く者はこれを機に……何かを起こそうとする。

その行動で何人の犠牲者が出るとも知らず……バカな行動を起こしてしまう。


「だから、僕はあれを見なかったことにする。そうすれば……全て丸く収まる。貴族としては、ダメだと思うけどね」


「…………大局を見据えられての判断なら、寧ろ貴族として正しいんじゃないのか? 仮にうちとそっちが戦争になんてなったら……悪いけど、俺は手加減できない。スティームも同じだろうから、結局は大勢の人たちが死ぬ。戦争で死ぬほど……虚しい死はないだろ」


冒険者であるからまだセーフ? かもしれないが、騎士などには絶対に滑らせてはいけない言葉である。


そんな事をうっかり目の前で零してしまった時には、そこでの戦争待ったなし。


バチバチの争いが起き……結果としてアラッドが叩き潰してしまうだろう。


「国の為って言うかもしれないけど、その件が要因で起きるなら……真実を知った民からすれば、ふざけんなって意見はどうしても出てくると思う」


「うん……そうだね。僕も同じ意見だよ。正直……まだあのバスターソードを公爵家に渡したいって思いはある。でも……世の中、知らない方が良い事もあるよね」


「……そうだな。そういう事も、確かにある」


二人はいつもより気分が沈んだままジバルに戻り、ギルドに木竜へ了承の件を伝えたと報告。


「かしこまりました…………えっと、その、何かお困りの事でもありましたか?」


「? いや、特にないですけど」


「そうでしたか。失礼しました」


受付嬢に心配されるほど、二人の表情は……やや沈んでいた。


「……二人共、何かあった?」


そして当然、ハリスの様な人生経験、交渉経験が豊富な人物には速攻でバレてしまう。


ちなみに、ハリスは色々と背負わせてしまった二人に夕食でもご馳走しようと思い、声を掛けた。


「まぁ、ちょっと。そこまで大したことじゃないっすけどね」


そう…………ただ、火種が見つかっただけである。

その火種は、二人が誰かに教えなければ、知られる様なことはない……ハルドナー公爵家の者たちが知ろうと思っても、知れ事はできず……そんなところにあるとも思い付かない。


「そうか……っし! 飯でも食べよう。当然、私の奢りだよ」


「「ご馳走になります」」


正直なところ、二人とも今日は夕食をがっつり食べる気分ではなかったが……ハリスが奢ってくれるとなれば、どんな美味しい料理を奢ってくれるのかと期待してしまう。

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