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五百六十七話 それを守るために

「よろしくな! アラッド、スティーム!!!」


「「よろしくお願いします」」


数日後、二人は緑焔の上位メンバーと共に行動することになった。


二人だけが後十日程度で木竜が殺されたのか、それとも何処かに消されたのか答えが出ると考えている訳ではない。

緑焔のクランマスターであるハリスや、幹部のメンバーたちも同じ考えを持っており、万が一に備えて共に行動しないかという打診を受けた。


その打診を、二人は迷うことなく受けた。


これまでサンディラの樹海で遭遇したモンスターとの戦闘は全戦全勝中だが、それでも言葉に言い表せられない不安感は常に付きまとっていた。


「そういえば、この前はうちの下っ端どもが悪かったな!!」


「本当にね。全く……その子たちがハリスを尊敬するのは解るけど、あそこまで盲信するのは止めてほしいものだわ」


「あいつらはハリスに自身の命だけではなく、家族や故郷を救われてるからなぁ……とはいえ、二人とも済まなかったな。あいつらの行動はそういった理由があったところで許されるものではない」


幹部たちもアホエルフとハーフエルフたちが起こした件については把握しており、報告を聞いたときは盛大に溜息を零した。


幹部たちもクランマスターであり、自分たちのトップに敬意を持っているが、彼らの様に狂った敬意などは一欠片も持っていない。


例えルーキーであっても、極悪人などでなければハリスに近づくなとも言わない。


「いえ、もう気にしてませんから。世の中に……あぁいった人たちが一定数居るのは把握してますから。だって、貴族の中にだってクスリを服用してでも俺を潰そうとする人がいるんですよ」


アラッドの言葉を聞き、スティームはそれは言っていい事なのかと、ギョッとした表情を浮かべる。


「はっはっは!! そりゃやべぇな!!」


「でしょう。そんな事をしたって界隈にバレれば、一発で表に立つことは出来なくなるのに、たかが俺を潰す為だけにこの先の人生を捨てようととするんですよ。ある意味、やってることはあのエルフやハーフエルフたちと同じですよ」


「ふむ……その令息たちは、本気でアラッド君の事を倒したい何かがあったのではないか?」


「大した理由はないと思いますよ。俺が親や友人の仇とかなら解りますけど、たかが同級生……同年代の令息ってだけですよ。確かに大多数の同年代から好かれる存在ではないのは解ってますけど、俺を殺したからといって幸せになるとは限らないのに」


色々と思うことがあり、喋りだしたら止まらなくなる。

それを解っているため、一先ずそういった事に関して自分の意見を口にするのを止めた。


「……あれじゃねぇか? なんだかんだで、十五とか十六なんてまだまだガキだ。ぶっちゃけ、俺もその頃は今より強くなって美味い飯食ってランクを上げてとか、そんな事しか考えてなかったぜ」


「…………私も同じようなものね。他の人たちと比べて大人な考えが出来るようになったのは早かったと思うけど、それでもそれぐらいの歳は……とりあえず前だけ見て、あまりリスクを考えてなかった気がするわね」


「俺もそんな感じだな。貴族をバカにするわけじゃないが、アラッド君やスティーム君の様に賢い方が珍しいんじゃないか?」


同じ貴族ではないが、人生の先輩たちからの言葉を聞き、ほんの少し考え込む。


(……人生、前世は二十になる前に死んだとはいえ、一応二周目だからそういう考え方が出来るだけ、なのか?)


考え込んでも、やはりこれだ!! という答えは出てこない。


「アラッドはさ、良いバランスのプライドを持ってるからじゃないかな」


「それは、どういう事だ、スティーム?」


「アラッドは自分に敵意を持つ相手や、害を与えてくる相手じゃなければ普通に接するでしょ。でも、そうじゃない相手から仕掛けられた時……正当な理由で怒って動く。偶に私情で怒ったりイラつくこともあるけど、そういう件に関しては大体真正面から、もしくは言葉で済ませるじゃん」


「まぁ……そうだな」


「僕も貴族だから解るけど、やっぱり傲慢や横柄といった言葉だけで形成されたプライドを持ってる人は、暴力を振るわないと物事を解決できない人が多い」


自分たちはその他大勢よりも偉い……貴族という立場上、どうしても教育にそういった内容が組み込まれる。


前世では超一般市民であったアラッドには、大して理解出来ない感覚である。


「アラッドのプライドには……これまで積み重ねてきた鍛錬、実戦によってつくられた強さはあっても、そういう感情はあまりないでしょ」


「……自分で言うのもあれだが、プライドに自信は入ってるな」


「だよね。ちょっと話はズレちゃったけど、今回のエルフやハーフエルフたちも、世間一般的に見てあまりよろしくないプライドを持っていたんだ。プライドっていう……僕達みたいな人間にとっては大事な部分だからこそ、それを守るために道を外れるのを躊躇わないこともあるんじゃないかな」


「プライドを守るために、か………………っ!!!!」


スティームの言葉に納得したような、それでもまた愚痴に近い感想を述べたくなるような気持になるも、異変に気付いたアラッドと魔法使いの女性は同時に突風を発動。

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