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五百三十六話 そう呼びたくなる

「「「「「「「「「はぁ、はぁ、はぁ……」」」」」」」」」


「まっ、こんなところか。それなりに楽しかったぞ」


自分たちの猛攻に対し、それなりに楽しかったという言葉だけで済ませた。

その事実に悔しさを覚える者が殆ど。


「後な……俺だったから良かったけど、あんまり貴族出身の冒険者にちょっかいをかけるのは止めとけよ。いや、お前らが今よりももっと強くなって立場が上がれば話は別かもしれないが、プライドが高い連中は本当にプライドが高いんだ。最悪、殺されるぞ」


何人かのルーキーは背筋が震えた。


目の前の人物は自分たちを殺すつもりなど一切ない。

それは解るが、貴族出身であるアラッドの口から「下手すれば殺されてもおかしくないぞ」と伝えれたのだ。


平民出身の彼らが震えるのも無理はない。


「はぁ、はぁ……そんなの、気にして……られねぇな。そんな事気にしてちゃ、強くなれねぇだろうが!!」


「……その闘志は称賛に値するが、お前が無理に動いた結果……お前の両親や友人が手をかけられても良いのか?」


「ッ」


「両親、家族がいなくても冒険者を続けてれば知人、仲間は出来るだろ。屑な連中は本当に屑だ。だからこそ、その闘争心は消す必要がないと思うが、もう少し考えて……動け」


「…………」


「それに、俺は何も屑な権力者に絡まれても、やり返すなって言ってる訳じゃない。考えて動けって言っただろ」


「???」


最初のバカは本当にややバカ寄りであるため、アラッドの助言があまり理解出来ていなかった。


「お疲れ様、アラッド」


「悪いな、スティーム。待たせた」


「あっという間だったよ。それにしても……あれだよね。貴族出身のアラッドがそれを言っちゃっても良いの? って感じだね」


スティームの言葉に観戦していた同業者たちも首を縦に振る。


「あぁ~~~……まっ、確かに良くはないかもな。でも、世の中屑は居るんだ。屑は今までの行いが自分に降りかからないと理解出来ないんだよ。だったら、きっちり潰さないと駄目だろ」


「はっはっは!! アラッドらしい回答だね」


同じ貴族であろうと、社交界の場でダル絡からみしてきた馬鹿をパンツ一丁にした男は言う事が違う。



「…………やっべぇな」


二人が訓練場から出た後、最初のバカ……ボルガンはポツリと呟いた。


「そうね……ぶっちゃけ、もう少しやれると思ってた」


「俺もだ。噂通りの実力だったとしても、俺たちが全力で戦えば傷ぐらいを負わせられると思ってたが……触れることすら敵わなかったな」


「はぁ~~~~。ちょっと強過ぎないって思うにゃ。なんか訳解からないタイミングで転ぶし」


「多分あれが噂の糸よね」


「あの人……アラッドさんの切り札かにゃ? それなら、ウチらはその切り札を使わせたぐらいには強い……とははらないにゃ」


語尾が「にゃ」の猫人族はアラッドが自分たちを相手に糸を使ったことに対し、馬鹿正直に受け止めることはなかった。


「遊ばれてた……ってことか」


「そういう事になるだろうな。実際に、俺たち十人がBランクモンスターに挑んだとしても、おそらく倒すことは不可能だ」


何人かのルーキーはその言葉に反論したかったが、自分たちの現在の力量的に、Cランクが数体であればまだしも……Bランクはさすがに無理だと本能が理解していた。


「つまり、本当にあの人にとって私たちは遊び相手だったってことね」


「…………兄貴って、呼んでも良いかな」


「「「「「はっ?」」」」」


最初のバカ、オルガンの言葉に何人かのルーキーが素っ頓狂な声を上げる。

しかし、他何名……彼らの会話を聞いていたベテラン達は、ボルガンの気持ちが解らなくもなかった。


自分たちを纏めて相手にしても圧勝。

それでいて嫌な、上から目線な態度で話すことはなく、こちらの対応を気遣う様なアドバイスまでしてくれた。


その強者との格にボルガンは惚れた。



「やっぱりアラッドは優しいね」


「どこかだ?」


「普通はあぁいった絡み方をしてきた相手にアドバイスなんてしないよ」


「あぁ、それか……言われなくても解ってるとは思うが、負けた相手からの忠告なら聞くだろ。あいつがこの先どんな冒険者人生を歩むかは知らないが、それなりに見どころがある奴だったからな」


「それは僕も同意だね。外見は野生児みたいな印象だけど、大剣の扱いは……技術は二級品ぐらいかな? 更に磨けば一級品になるのは間違いないね」


自分もうかうかしていられない。

スティームがそう思う程、アラッドに挑んだルーキーたちの実力、潜在能力は高かった。


「あっ、そういえばまだスティームに紹介してない人がいたな」


「?」


訓練場から出た後、二人は適当な討伐依頼を受けた。

当然、冒険者としてその依頼を達成しなければならないのだが、アラッドをそれを無視してとある場所へスティームを連れて行った。


「…………アラッド、こんな場所に人がいるのかい?」


「ん? あぁ、そうだよ。正確には人じゃないけどな」


「え?」


数分後……スティームの前には確かに人ではない強大な力を持つ生物がいた。

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