五十三話 寧ろ上がる
昼食を食べ終えてから二時間後、Dランクのモンスターに遭遇することはあっても、Cランクのモンスターに遭遇することはなかった。
「なぁ、今度からもう少し奥に入っても良いと思わないか?」
「そ、そうですねぇ……少し考えた方が良いかもしれませんね」
今日はEやFランクよりも、Dランクのモンスターと遭遇することが多かった。
そしてアラッドとクロは全ての戦いにおいて当然の様に勝利し、アラッドに関してはメインのロングソード以外の武器を使って戦っても怪我を負うことなく勝利している。
(普段から鍛錬を怠らない人というのは知っていたが、槍や短剣に手斧までサラッと実戦で使えるレベルにまで達している……本当に将来が末恐ろしい方だ)
アラッドとしてはまだまだ身体能力に任せて戦ってる様に感じているので、技術は未熟。
そう思っているが、兵士二人からすれば十分に戦えていた。
「ワゥッ!!!!」
「ん? また新しいモンスターを見つけたのか?」
「ワゥ」
「……そうか。三人とも、少し警戒しながら移動する」
クロの声と表情から匂いを嗅ぎ取ったモンスターがただのモンスターではない事を察し、警戒態勢に入る。
護衛たちもアラッドから警戒するように伝えられ、表情が引き締まる。
なるべく足音を立てないように移動する。
そしてクロが匂いを嗅ぎ取ったモンスターのところに辿り着くと……そこには鉄の鱗を持つ四足歩行に獣……ではなく、ドラゴンの一種がのっそりと歩いていた。
まだ眼前のモンスターはアラッドたちに気付いていない。
「なぁ、あれは多分メタルリザード、だよな」
「……そうですね。あの鋼鉄の体を見る限り、メタルリザードで間違いないかと」
リザードは竜種の一種だが、翼がない。
そして体は本当のドラゴンとは比べ物にならず、同ランクのワイバーンよりも小さい。
だが、それでも竜種。
Cランクに位置するモンスターが決して弱い筈がない。
(本当にメタルリザードだ……ランクはC。レベルは二十五。俺より八も上か……当然身体強化のスキルは持ってる。防御強化にやっぱりブレスのスキルも習得している……強敵だな)
モノクルを使って調べ、強敵だと分かってもアラッドの戦意が落ちることはなかった。
寧ろ上がり始め、その熱はクロにも伝わった。
「よし、仕留める。三人とも、俺が本当に危なくなったら援護してくれ」
「「「了解!!!」」」
自分たちでは絶対に止められない。
そう思った三人は万が一の為、援護に徹することにした。
三人がかりならメタルリザードにも勝てる自信はある。
そしてアラッドの後ろ姿を見る限り、手加減して戦うようには思えない。
(本気のアラッド様なら……おそらく勝つだろう)
しかし百パーセント勝てるとは断言出来ないので、いつでも飛び出せるように身体強化のスキルを使用して全身に魔力を纏う。
メイジはいつでも攻撃魔法を放てるようにスタンバイ。
「どうも、こんにちは……よろしくお願いします」
なんとも間の抜けた声をしながら現れた人間。しかも小さい。
だが、隣には子供とはいえブラックウルフがいた。
メタルリザードは突然の敵に警戒するが……その警戒度が足りなかった。
アラッドが剣を抜いた瞬間、膨大な殺気と戦意が溢れ出し、メタルリザードを襲った。
「ッ!!!!」
ほぼ勘で避けたに等しい。
とっさに身体強化のスキルを使い、後方に跳んだ。
防御強化のスキルも使用したが、それでも火の魔力を纏ったアラッドの一刀が鉄の鱗を薄く斬り裂いた。
「やっぱりそう簡単には殺らせてくれないか」
目の前の人間の認識を即座に改めた。
全力で潰すに相応しい相手であると思い、最強の一撃であるブレスを叩きこむ。
「ワゥ!!!」
しかしそれをクロが許すわけがない。
アラッドと同じく身体強化を使い、脚力強化もおまけに使う。
見事に気配を消しての一撃。
だが、自慢の鱗で体を捻ってガードされ、爪撃は鱗を引き裂きはしたが体の内には届かなかった。
「まだまだこっからだ!!!!」
クロに気を取られればすぐさまアラッドが斬り掛かる。
火の魔力纏う斬撃は確実に自分の体を傷付けると分かっているが、逃げてばかりでは勝てない。
鋼鉄の爪に魔力を纏い、上体を起こして迎撃。
「ぬっ!? 押し込めないか」
弾かれはしなかったものの、押し込むことはかなわなかった。




