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五百二十七話 それは自覚してる

「やはりアラッド様でしたか」


「どうも……あの、門兵の仕事は良いんですか」


「はい!! 他の者に頼んできたので大丈夫です!!」


本当に大丈夫なのか解らないが、それ以上その事についてツッコまずに話を進める。


「ところで、隣の方は?」


「こいつはスティーム。今、俺と一緒にパーティーを組んでるんだ」


「ほほ~~~、アラッド様のパーティーメンバーでしたか」


パーシブル家に仕える騎士、兵士や魔法使いたちは皆アラッドの強さだけではなく、クロの強さも把握している為、当分アラッドが他の冒険者と固定でパーティーを組むことはないと考えていた。


そのアラッドがパーティーを組んでいる相手となれば、当然気になる。


しかし今は仕事を優先し、アラッドとスティームを最優先で街の仲へ通した。


「おい、誰だあの二人は?」


「お前知らないのか? 俺も片方が知らんが、もう一人はこの街を治める貴族の息子だ」


「貴族の息子って……あの恰好、俺たちと同じ冒険者じゃねぇか」


「おかしいと思うかもしれねぇが、どうやらあいつは子供の頃から冒険者を目指してたらしいんだよ。んで、今年面倒な事情? を片付けてようやく冒険者になったらしいぜ」


「はっ!? マジかよ……頭おかしいんじゃねぇか?」


「バカ!! 実際に冒険者の道を選んだとしても、侯爵家の息子ってことに変わりはねぇんだぞ!!」


常識通り街中に入るために列に並んでいる冒険者たちの会話は……しっかりとアラッドの耳に入っていた。


しかし、アラッドはちゃんと自分がそれなりに頭おかしいん選択をしていると理解してるため、特に怒りが湧くことはなかった。


「…………アラッドって、意外と領民たちと交流があるんだね」


アラッドは屋敷に到着するまで、多くの領民たちから声を掛けられた。


「交流があると言うか……モンスターを討伐に行くとき、普通にお忍びせず行ってたからな。声を掛けられたら普通に接してたから、そこからこんな感じだな」


一応自身が貴族という立場であることは自覚しているが、前世がド平民であったため、根本的な考え方が他の貴族と違う。


そういったこともあり、アラッドは平民たちに対して最初からフレンドリーに接していた。


「なんだか、アラッドらしいね」


「だろ。っと、着いたな……って、あんまり大袈裟にしなくても良いのに」


「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、アラッド様!!!!!」」」」」」」」」」


アラッドがパーティーメンバーを連れて戻ってきたという情報は直ぐに屋敷に届き、手が空いている兵士や騎士、使用人たちが二人を出迎えた。


「ただいま。こっちは友達でパーティーメンバーのスティーム。良くしてあげてくれ」


「「「「「「「「「「畏まりました!!!!」」」」」」」」」」


「んじゃ、中に入ろうぜ」


「う、うん……あっ、もしかしてあの建物が」


「あぁ、そうだよ。拾ってきた子供たちが生活してる」


「…………大き、過ぎじゃない?」


ちょっとした宿……よりも何倍も大きい孤児院。

この世界にギネス記録という存在があれば、間違いなく世界一大きい孤児院として登録されるほど大きい。


「色々と増築したからな。ぶっちゃけ、今でも大きくなってる」


「費用は……って、アラッドの場合心配する必要はない、か」


「基本的にはな」


大金を経理担当をしている人物に預けているため、金が入り用になっても困る事はない。

加えて、経理担当がアホな真似をしようものなら……他のメンバーにボロ雑巾にされることは目に見えている為、面倒事が起きる心配もない。


「アラッド~~~~~~~~~~っ!!!」


「っと、ただいま母さん」


息子が帰ってきたと知り、貴族の夫人としてあるまじき速度で廊下を走り、息子を抱きしめる。


「やぁ、アラッド。おかえり」


「ただいま、父さん。二人とも、こっちが今一緒にパーティーを組んで行動してるスティームだ」


「は、初めまして。スティーム・バリアスティーと申します。よろしくお願いします」


二人とも気さくな人物だと友から説明は受けている。

しかし、実際に対面してみると……やはり緊張は避けられない。


アリサの強さも聞いており、いざ対面してみると自分よりも強いと本能が受け入れる。


そして……目の前に、Aランクのドラゴンをほぼソロで倒した英雄、フールがいる。

同じ戦闘者であるスティームからすれば、どれだけフールが人畜無害な笑顔を浮かべていたとしても、緊張するなというのは無理な話だった。


「アラッド、ご飯まで時間があるから、良かったら話を聞かせてくれないか」


「別に良いけど……父さん、今日の仕事はもう終わったの?」


アラッドが仕事の進捗状況を尋ねた瞬間、フールの肩がポンポンと手を叩かれた。


「当主様、お願いですから……まだ残っている仕事を終わらせましょう」


「は、はい」


事務仕事の補佐を担当しているナダックの圧に屈し、大人しく執務室へ向かうフール。


補佐仕事に就いたころはひ弱なイメージがあったナダックだが、既に十数年が経ち……結婚したこともあってか、フールを有無言わせずに仕事場へ戻す圧を身に付けた。

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