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四百一話 そこまでオッケー

マジットがギアを上げれば、直ぐにアラッドもギアを上げる。


二人とも攻撃だけではなく回避も達者なため、互いに攻めと回避を繰り返す時間が続く。


「……凄い」


その光景に、一人の女性冒険者が、ポロっと本音を零した。


互いに鋭い拳打、蹴撃、貫手、手刀に裏拳などを繰り出しているにも関わらず、全てを回避し、無傷なまま。

二人の動きは一切止まらず……観る者によっては、流麗な舞闘。


本音を零した女性冒険者も例に漏れずマジットの信者だが、目の前の光景を見せられては……アラッドに対する暴言など吐けるわけがなく、その美しく無駄がない動きに対し、本音を抑えられなかった。


(ここまで緊張感を、感じるのはいつ……って、意外と最近、そういう場面に、遭遇はしてる、か!!)


闇属性の戦斧を持つミノタウロスや、ユニコーンの成体と対面した時。

意外にも冒険者になってから短期間のうちに、常人では漏らしてもおかしくない緊張感を体験している。


しかし、そういった衝撃と同等の緊張感を与えるマジットの強さがおかしいとも言える。

因みに……アラッドの体感では、刺青を増やして体を肥大化させたオークシャーマンよりも、マジットの方が恐ろしいと感じる存在だった。


お互いに身体能力は魔力による強化と、身体強化のみの強化スキルの使用だけにギリギリ抑えている。

両者とも他の強化スキルを有しており、属性魔力を纏うことで、更に身体能力を強化出来る。


だが、そこまでギアを上げてしまうと、周囲に被害が出てしまう。

訓練場には他の冒険者たち……主にマジットの信者が多く、彼らも二人の模擬戦を離れた場所から観ているが、二人のギアが上がり過ぎれば、そこまで被害が及んでしまう。


なにより……二人が今以上の戦闘力を増加させれば、模擬戦の範囲では済まない。

それはアラッドとマジットも、言葉を交わさずとも解っていた。


(本当に、どんな攻撃にも対処するん、だな!!)


今以上に身体能力を上げずとも、模擬戦内容は十分苛烈なものだった。


マジットが試しに目突きを行えば、アラッドは当然の様に反応し、カウンターの手刀を斬り上げる。

そこでアラッドは、そういったラインまで攻めて良いのだと理解し、顔面や急所などへの攻撃を解禁。


いくら元冒険者で、現在も変わらない強さを持っているとはいえ、女性であることに変わりはない。

始めはその点を考慮して攻撃を行っていたが、マジットの方から「そんなこと気にしなくても良い」という攻撃を送られた。


戦闘者として、その気持ちに応えないのは失礼だと判断。

おぼろげに二人の攻避内容を理解してしまった接近職の信者は、その内容に寒気を覚えた。


(なんだよ、これ……も、模擬戦じゃないのかよ)


攻避内容を理解してしまった男は、命のやり取りをしているのではと勘違い。


実際のところはマックスレベルの遊びを行っているに過ぎないが、彼らがそう思ってしまうのも無理はない。


二人の戦闘内容が理解出来ない者たちには、手足の動きが線にしか見えず、どういったやり取りが繰り広げられているのか全く解らない。


(……んだよ、なんなんだよあいつは!!)


悔しさのあまり、もう目の前の非情にも自分たちに付きつけてくる現実から、逃げ出したくなる。


だが、訓練場で二人のやり取りを見ている信者たちの中に、現状から目を逸らす者は誰一人としていなかった。


(そろそろ、一旦終わらせるか)


既に素手よる戦闘から五分が経過。

今回は互いに何かを懸けて戦っている訳ではなく、勝敗に関して大した意味がない。


そのため、アラッドは目線で次の行動をマジットに伝えた。

察しのいいマジットは直ぐに伝えられた内容を理解し、リズムを整える。


そして両者……最後は気合の乗った正拳をぶつけた。

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