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三百八十八話 要約すると、そういうこと

「俺の勝ちで良いよな」


「……えぇ」


二人はあっさりと自分たちの敗北を認めた。


まだ本気を出していない! などという戯言を吐くことなく、自分たちは二人で倒そうとしたにも拘らず負けたという事実を受け入れた。


確かに、二人の学生は現在高等部の二年生だが、実力はマジリストンの中ではトップクラス。

二人がアラッドを倒す……という意志を超え、殺しに掛かれば結果は違っていたと語る者がいるかもしれない。


しかし、そうなればアラッドにも同じ事が言える。

全力で剣技と体技、魔法を使用しておらず、切り札である狂化も使用していない。

そういった点を考えれば、結局は現在の結果通り、二人合わせてもアラッドの方が強いということになる。


「っ! なんで、お前はそこまで強いんだ」


最初にアラッドへ挑み、完封された男の冒険者が思わず尋ねた。


自分を負かした人物に尋ねる内容としては、他者に馬鹿にされても仕方ない。

そんな事は男も承知している。


解ってはいるが、訊かずにはいられなかった。

その思いは男だけではなく、他の冒険者たちや学生二人も同じ。


(……なんか、冒険者になってから良く聞かれるな)


ここで彼らに、自身の強さの理由を話す必要はない。


アラッドからすれば、彼らは拒否権がない戦闘を挑んできたも同然。

一応リンチではないかもしれないが、状況としてはアラッドが不利であることに変わりはない。


(まぁ、軽く教えるぐらいなら良いか)


リンチに近い形であったことには変わりない……しかし、アラッドにとっては、一人に勝つだけで金貨が二枚。

合計で二十枚以上が手に入る、旨味しかないイベントであったことに変わりはない。


「お前たちから貰った金貨分ぐらいは教えるよ」


合計で金貨二十枚以上……となれば、それなりの内容を教えてもらえると思い、不覚にも心臓が高まる冒険者と学生。


「努力の量と、考える頭を身に付けているか否か、だ。んじゃ」


それだけ言うと、アラッドはクロに合図を送り、速攻でその場から姿を消した。


「ちょ、ちょ待て……って、なんだよそれ!!!!!」


強さの秘訣は努力の量と、考える頭を持っているか否か。

そんな単純な事を言われても、納得出来るわけがない冒険者と学生たち。


しかし、アラッドからすれば自分と彼ら彼女たちの違いは、要約すればその二つ。


今まで積み重ねてきた努力の量。

そして強くなる為に考え続けてきた頭。


アラッドの過去を振り返れば、幼い頃からその部分がずば抜けていたと言っても過言ではない。


とはいえ、アラッドの過去を知らない彼ら彼女たちが納得出来るわけがない。

納得は出来ないが……それでも、一応強さの理由を教えてくれたことに変わりはない。


加えて、自分たちは少々姑息なやり方で勝負を挑んだという自覚はあるため、適当な理由を答えたとしか思えない件について文句など言えるわけがなかった。


そのため、教えられた二つに関して持ち帰り、今回のリンチ(仮)に参加した者たちで深く話し合った。


「あいつらが本当に強くなりたいって意志を持ってるなら、あれで十分だよな」


「ワゥ?」


「はは、クロからすればあいつらとの戦いは観る価値もなかったか」


アラッドの言葉通り、クロは先程までアラッドが戦っていた同業者、学生たちに対して一ミリも興味がなかった。


主人に対する態度がウザいという思いはあったが、実力に関しては全く興味を持てない者ばかり。

若干イライラが募ったため、この日は主人に頼み、モンスターと戦闘する回数を増やしてもらった。


そして翌日の仕事終わり、マジットから先日の一件について尋ねられたが、アラッドは適当に濁した。

確かにリンチ(仮)ではあったが、アラッドからすれば楽して稼げた臨時収入。


ギルなどよりも一応常識があった点を考えると、アラッド的には腹が立ち、苛立ちが募る要素は一ミリもなかった。

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