表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
362/806

三百六十二話 視線の正体は

「ッ!!?? …………なんだ、今のは」


確実に……間違いなく、自分に視線が向けられた。

おそらく、敵意の類。


本当に一瞬だったため、正確には解らなかった。

ただ……敵意はあったが、殺意はないと感じたアラッド。


「クロも感じたか、今の視線」


「ワゥ」


「……いったい、誰の視線だったんだろうな」


向けられた視線だけで、いったいどんな人物、はたまたモンスターから向けられた視線なのかは分からない。


魔眼の鑑定を使って調べようとしても、姿が見えなければ意味はない。

アラッドが向けられた視線の先に目を向けた時には、既に主の姿はなかった。


(…………まさか、ユニコーンか? でも、基本的に戦闘を好まないって聞いてたんだが……解らないな)


確かに視線を向けられた。

しかし、既にその方向から姿は消えていた。

警戒心が高い誰か、というのだけは分るが、それ以上は分らない。


「とりあえず飯にしようか」


「ワゥ!」


一応頭の中に置いておきながらも、アラッドは予定通り昼食の準備を始めた。


途中で匂いに釣られた二体のオークが襲い掛かってきたが、難無く討伐。

食後の運動とばかり解体を行い、再び探索開始。


(あの視線の主はいったい誰だったのか……気になるな)


そもそも人なのか、モンスターなのか分からない。

モンスターであれば、アラッド的にはユニコーンの可能性が高いと考えている。


逆に人であれば……ユニコーンを狙う同業者、もしくは裏の人間。


(同業者なら、まだ良いんだが……裏の人間であれば、早めに見つけて潰しておきたいな)


同業者であれば、ユニコーンの素材価値を理解している。

理解していなければ、そもそも狙おうとすらしない。


裏の人間も、知識がある者であれば、その価値を理解している。

ただ……理解しているからといって、殺さないとは限らない。


(……ダメだ、考え過ぎるのは良くない。本当に頭の片隅に置いておく程度にしないと)


気持ちを切り替え、改めてユニコーン探しに専念。


森の中で隠れそうな場所なども見逃さずに探していくが……日が沈み始めるころ、まだ手掛かり一つ見つからない状態が続いていた。


「もうちょい探しても見つからなかったら、野営の準備を始めるか」


その表情に、焦りはない。


探索はまだまだ始まったばかり。

標的が標的なため、焦ったところで見つかる相手ではない。


その事実を理解しながらもう少しだけ探索し……結果、本日もユニコーンが見つかることなく終わった。


「それじゃ、今日も頼む」


「ワゥ!」


夕食と入浴を済ませ、明日に備えてアラッドは就寝。

クロも楽な体勢を取る。


体は休めているが、意識はある。

何かあれば……自分や主人を狙う者が現れれば、即座に反応出来る状態。


誰かに倣った訳ではなく、自然と休みながらも警戒する術を習得していた。


「…………」


とはいえ、何も起こらない。

アラッドの就寝時以降、クロは制限を外していた。


ブラックウルフに近い姿から、本来のデルドウルフの姿に変えていた。


これにより、バカなモンスターでも本能的にクロの強さを感じ取り、むやみやたらに仕掛けてくることはない。

故に、クロは今夜も自分たちに手を出す連中はいない……そう思っていた。


その気の緩みが油断に……繋がりはしなかった。


「ッ!?」


しかし、音が聞こえるまで、二つの強大な存在がぶつかり合っていることに気付かなかった。


その音だけで、ぶつかり合っているモンスターが並の存在ではないと解かる。

もしかしたら、主人が探しているモンスター……かもしれない。


であれば、今からアラッドを起こして現場に向かうのが最善、と判断してもおかしくない。

だが、ここでクロは周囲への警戒心は強めるが、主人であるアラッドは起こさなかった。


夜という状況や、強大な力を持つ存在が一体ではなく二体。

それらの状況を鑑みて、クロは翌朝に主人へ伝えようと決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ